44 正しかった選択
ーー彩夜ーー
「はっ、い、生きて······る?」
私は周りを見渡す。暗雲からは、大粒の雨が降り注いでいる。
王都に戻って来たのかな?
勇者とその仲間達はいなくて、ニーナさんはいる。
助かったんだ。
魔神の《消滅》から助かったんだ!蓮君が使ったあのスキルで。
あれ?蓮君はどこにいるんだろう?
何度周りを見ても、ニーナさんしかいない。
まさか、蓮君は帰ってこられなかったの?
そんな!レベルだって無茶苦茶な位高いのに、自分を差し置いて私達を助けるなんてありえない。
MPだってまだ余裕がある筈······
私はとある結論に至る。
《転送》の移動距離が遠すぎて、ふたりが限界だった。
蓮君は《転送》距離が分からなくて、先に私たち二人を《転送》させた。
これなら説明がつく。
でも、なんで帰ってこないんだろう?
この世界はMPなんてある程度時間が経てば回復するし、あの魔神に《転送》された世界でも回復するんじゃないのかな?
確証なんて無い。
なんせ私は、魔法を使えないんだから。
希望的観測でしか無い結論。
ニーナさんを起こそう。
ずっと気絶したままだからさっさと起こして、蓮君の帰還方法を考えなければいけないのだから。
だけど、もしもの話でしかない。
普通にMPが回復するならば、魔神との決着を着けてから帰ってくる。
魔神が《消滅》を使った時は、絶対にMPが回復したってこと。
蓮君の作戦は、魔神のMP切れを狙うって作戦なのだ。だから、ね。蓮君も帰ってこれるんでしょ?
泣きそうになってるげど頑張って堪えて、ニーナさんを起こす。
「ニーナさん、起きてください!ニーナさん!」
全く起きる気がしない。
鼻元に耳を近づける。
スー、スー······。
呼吸はしているね。
死んでいないなら、時間経過で起きるよね。あ、でも、雨降ってるから、テント建てなきゃ。低体温症で死んじゃう。
テキパキとテントを組み立て、ニーナさんが起きるのを待つ。
▷
何時間経っただろうか。
蓮君は一向に帰ってこないし、ニーナさんも起きる気配が無い。
とある言葉が脳裏をよぎる。
どんな過酷な選択だって結局は、正しかった選択にしていくしかない。
まさにその通りだ。
私は蓮君に頼り過ぎていた。
奴隷から助けられた時だって、蓮君が助けてくれた。
私って、一人じゃ何も出来ないね。
「んっ。んっ!」
ニーナさんが目覚めたかな?
「おはようございます。ニーナさん」
「おはよう。サヨ・モチヅキちゃん」
私は自分の考えたことを伝え、これからのことを聞く。
「シノノメ君は、何かしらの帰る方法をサヨ・モチヅキちゃん、君に託したんじゃないかな?」
「蓮君はそんな事、一度も口にしてませんよ?」
「シノノメ君は、一人で魔神と戦っているのよ?仮にサヨ・モチヅキちゃんの仮説通りなら、こっちから助ける方法があるんだよ」
確かにそうだよね。
昔とは違うんだ。きっと、この事も計算されているんだよ。
こっちから蓮君を連れ戻す方法も、私に託されているはずなんだ。
でも、いつそんなことをされたのだろう······。
蓮君が私のアイテムボックスに入れたもの、それは無属性魔法の書、エンチャント本、食料。
無属性魔法の書か、エンチャント本が怪しいかな?
蓮君が主に使っていた魔法の類は無属性魔法。無属性魔法の書が一番怪しいかな?
アイテムボックスから、無属性魔法の書を取り出して読み始める。
目次、魔法陣、詠唱、そして魔法名。
あった!蓮君を連れ戻す方法が。
「《逆······転送》?」
そう書かれている。
効果は、遠く離れている人を自分がいる所に転送させる。
《転送》が近くの人を遠くに行かせるなら、これの名前が《逆転送》と言うのも納得が良く。
「どうやってやるの?」
「えっと······対象がいる場所を言って、詠唱をする。但し、遠ければ遠い程MPを消費する」
「シノノメ君が居る場所って確か、神域だよね?」
返す言葉もない。
即ち、《逆転送》は不可能なのだ。
蓮君みたいにレベルが無茶苦茶な位高くないと、これは出来ないってことだ。
「《転送》はどうなの?神域に《転送》して、シノノメ君を《転送》してここに呼び戻す」
「《転送》も同様の様です。更に物を持つ場合は、MPも多く消費するみたいです。私が持つ、アイテムボックスの中身もその対象のようです」
行けたとしても、帰っては来れない。
苦渋の決断だよ。
雨は弱まりもせず強まりませず、降り注いでいる。
次かその次が最終回です。




