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112 ファングハイエナ

 古戦場エリアの敵は単体の強さもかなりのものだけど、それ以上にパーティーとしての戦い方を求められるようだった。


 まずその辺を徘徊しているファングハイエナというモンスターは四体以上のリンクを形成していて、その上で前衛を無視して一番防御力の低いプレイヤーを狙う習性がある。


「ファングハイエナは無理に全部を止めようとしなくていいから、慌てず確実に数を減らしてね」

「わかった」


 俺たちはハルカの指示通りに戦う。


 ちなみに俺たちのパーティではマコトが狙われている。なので俺たちはマコトを守るために、スタン効果のあるアビリティからの連携で確実に一体ずつ倒していく。


 そうすると何体かはマコトの方まで行ってしまうことになるが、幸いファングハイエナは攻撃力自体はかなり低めなようで、マコトでも数発は耐えられるらしい。


 そのため何体ものファングハイエナから同時に攻撃を受けて、一気に倒されてしまわないようにさえ気を付けていれば、特に問題は起きないようだ。


「【レッグショット】!」


 ヒヨリが相手の移動速度を下げるデバフ効果を持つ攻撃アビリティで、最後尾のファングハイエナを足止めする。


 他のアビリティに比べてあまりダメージに直結しないため、マコトの【アイスファング】の魔法と同様に使い勝手が難しいアビリティのようだけど、こういった戦闘ではマコトへの敵の到着時間を遅らせる効果があって非常に有用だった。


 そうして一体を足止めしながら、ヒヨリは即座にキリカがスタンさせた別のファングハイエナに狙いを変えて、ヒヨリが今出せる最大ダメージの連携を叩き込んでいた。さすがの状況判断だ。


「【石突き】! からの……【パワースラスト】!」


 俺はスタン効果を持つ【石突き】を正面からファングハイエナに当て、すぐに相手の死角に回りこんでデモンズスピアの【奇襲】を発動させた【パワースラスト】という、今の俺が出来る最強の連携で一体を倒す。


 風のネックレスによる素早さの上昇の影響もあってか、さっきまでと比べると動きが滑らかになった感じがする。


 これは速度が上がったというよりは、動きと動きの繋ぎの部分に無駄がなくなった感覚だった。


 その後俺はすぐに反転し、後ろのマコトに襲い掛かっているファングハイエナを追いかけながら【アタックチャージ】を発動して自分の攻撃力をアップさせる。


「はっ! 【二段突き】!」


 ファングハイエナは俺に背面を向けていたので、俺はそのまま通常攻撃から【二段突き】の連携を叩き込む。基本の連携ながら【奇襲】と【アタックチャージ】の効果もあって、大きなダメージを与えることに成功した。


 それでも攻撃力が足りなくてぎりぎり倒すことは出来なかったが、そこに追撃を放ったヒヨリがトドメを刺す。


「ヒヨリ、ナイス!」

「どーもっす!」


 俺たちはそんな風に一体ずつ確実にファングハイエナを倒していき、最後の一体をヒヨリが撃ち抜いたことで戦闘が終わる。


「さすがにファングハイエナだけじゃ全く危なげないわね」

「まあヒーラーさえしっかりしていれば、全部素通しでもしない限りそうそう事故は起きないからねー」

「私はハルカさんとの連携の確認も出来て、少し楽しかったです」

「私は逃げてばかりで全然楽しくないよー」

「まあマコトさんの見せ場はすぐ来るっすよ」


 マコトの嘆きにみんなで笑いながら、ヒヨリはそうフォローを入れていた。


 そのまま古戦場エリアを進んでいくと、今度はスケルトンソルジャーが二体にスケルトンコマンダーが一体、そしてゴーストとウィスプが一体ずつという五体リンクと遭遇する。


 スケルトンソルジャーは以前ヒヨリと行った『打ち捨てられた墓所』というダンジョンで見たことがある、剣と盾を装備したタンク役のモンスターだ。といってもあそこで見たときよりもレベルはかなり高い。


 スケルトンコマンダーというのは初めて見るが、見た目はスケルトンソルジャーより一回り大きく、装備している剣や盾も一段豪華になっている感じのモンスターだった。


 ゴーストは宙に浮いた黒い靄がボロ布をまとったようなモンスター、ウィスプはそのまま宙に浮く人魂だ。


 ゴーストとウィスプは遠距離からの魔法攻撃を行うモンスターらしく、回避のしづらさと攻撃力の高さから放っておくと危険な敵だという。


 おそらくこれがマコトの言っていた物理攻撃が効きづらいモンスターなのだろう。


「キリカはソルジャーを引き付けて、その隙にお兄ちゃんはコマンダーに全力で。マコトとヒヨリもコマンダー狙いでよろしく」

「ん、危険なゴーストとウィスプは無視でいいのか?」

「コマンダーは名前の通り指揮官なので、周囲のアンデッド系モンスターにバフを撒いているんです」

「攻撃力だけでなく防御力も上がってるから後衛の瞬殺は無理だし、そうしてだらだら長時間戦っちゃうと今の私じゃ耐えきれないわね」

「なるほど、そういうことなのか」


 スケルトンコマンダーはそこにいるだけで周囲のモンスターを強化する特殊な敵らしい。ただ逆にいうと、コマンダーさえ倒してしまえば周囲の敵は一気に弱体化するということでもある。


 だからこそ全員でコマンダーの一点突破を狙うのがハルカたちの考えた方針だった。


「ちなみにコマンダー自身も結構強いから、近づくお兄ちゃんは特に油断しないでね」

「ああ、気を付ける」


 ハルカたちはソルジャー二体にゴーストとウィスプの攻撃を受けるキリカをヒールするので精一杯になるらしく、俺がうかつに大ダメージを受けてしまうと最悪倒されてしまう可能性もあるようだ。


 とはいえ俺は気を抜くつもりも手を抜くつもりもない。


 そうして俺は槍を構えて立つと、前だけを見据えて集中することにした。


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