↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃ゲーマーな妹と始めるVRMMO生活  作者: 鈴森一
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/155

111 古戦場

 フェリックの西は草原が広がっていた。


 様々な動物型のモンスターが目に入るが、どれもあまり好戦的ではないようで、こちらから近づかない限り戦闘は起きないみたいだ。


 今回の目的地はこの草原を西に抜けた先のエリアなので、無用な戦闘を起こさないようにしながら俺たちは移動していく。


「なんというか、遠足とかを思い出すな」

「まあそもそもVRってそういう用途でも使われてるからねー」


 隣を歩くハルカとそんな他愛もない話をする。周りを見ると他のみんなもそれぞれ何やら雑談をしていた。


 戦闘が起きないのであれば、こうしてのんびりとした時間が流れることもある。それにしたって、ほんのちょっと前までは雪山や怪しげな森にいたとは思えない雰囲気だった。


 そうしてしばらく遠足気分で広い草原の景色と空気を楽しんでいると、ハルカが俺に何か言いたそうな顔を向けた。


「ん、どうかしたのか?」

「いやまあ、ちょっとね。……お兄ちゃんって昔から野球に全力で突っ走ってたからさ、こうやってのんびりとした時間を一緒に過ごすことはあまりなかったなぁって」

「ああ、確かに」


 学校が休みの日も大抵は練習か試合かで、俺がハルカと一緒にどこかへ行ったという記憶はほとんどない。


 とはいえ特別仲が良かったわけでもないし、普通の兄妹ならそんなものだろうと俺は思っていたのだけど。


「私もまあそれが普通なんだろうなぁとは思ってたから、そのことがどうだってわけじゃないんだけどさ……こういうのも案外悪くないなぁ、ってね」

「そうだな」


 そんな話をしながら俺とハルカは最後尾を歩いていると、心地の良い風が吹き抜けていった。


 前の方では四人が何やら楽しそうにしている。どうやら珍しくシャルさんがいじられているようで、泣き真似をしたマコトに困らされていた。マコトをよく知る俺たちには嘘泣きだと分かるけど、真面目な性格のシャルさんには効果抜群のようだ。


 シャルさん、騙されたらダメだぞ。マコトはその大人しそうな見た目の何倍も強かな性格をしているんだから。


「そういえば、お兄ちゃんの周りって女の子ばかりになっちゃったよね。まあ半分は私のせいだけどさ」

「ハルカがそれを言っちゃうのか。俺はあえて考えないようにしてたのに」

「あはは。でもさ、世間の男性プレイヤーからしたら間違いなく羨ましい環境だよねー。……それで、お兄ちゃん的には誰が一番好み?」


 油断していたらハルカがド直球を投げ込んできた。俺がそういう話題に疎いことを知っているからこそ、あえて狙ってきたのだろう。


 しかしこの場合、たぶん誰と答えてもハルカにはからかわれるだろう。かと言って答えを濁せば、それはそれで照れているなどと言われてからかいのネタにされるのは明らかだった。


 どう転んでもハルカが有利になるタイプの質問。ただハルカからのこの手の問答は子供の頃から何度も経験しているので、さすがの俺にも対策くらいはある。


「みんなそれぞれ魅力的だとは思うけど、しいて言えば――」

「うん」

「ハルカかな」

「えっ!? ……ぷっ、あはははは! まさか、お兄ちゃんが、そう来るとは……ふふっ、これは一本取られちゃったね」

「そう思うなら、あまり俺をからかおうとするなよ」

「いやー、前の四人が楽しそうだったからつい、ね?」

「ね? じゃない」


 全く、高校生になっても子供っぽいところがあって困る。


 少しはマコトを見習って……ああダメだ、マコトも嘘泣きでからかったシャルさんに謝っているところだった。


 ……まあいいか。ゲームをやっているときくらいは、気を張らずにゆるく生活をしていても問題ないだろうし。


 そんなことをしているうちに俺たちは草原を抜ける。するとそれまでののどかな空気は一変した。


 俺たちの目の前に広がるのは草木が枯れ果てた荒野。


 地面にはクレーターのような穴がそこら中にある。よく分からない巨大な鉄くずなんかも散らばっていて、なんというか大きな戦闘の痕跡を思わせた。


「お、いい勘してるね、お兄ちゃん」

「ここはそのまま古戦場と呼ばれているエリアっす。おそらくここで大規模な戦闘が起きたのだろうという話っすけど、ゲーム内ではまだ調査中で詳しいことは何も分かってないっす」

「もう少し詳しいことが知りたかったら、フェリックにいる調査団のNPCに訊いてみるといいわ」


 ヒヨリとキリカがそんな風に説明してくれる。


 誰が何と戦ったのかは不明だが、とりあえず大きな戦闘が起きた場所くらいのことが分かっていれば問題はないようだ。


「ちなみにこの先に出てくる幽霊とか人魂みたいなモンスターは物理攻撃が効きづらいので、基本的にチトセさんは相手にせず私やハルカに任せてくださいね」

「あとここでは光属性を使えるハルカさんが攻撃の頻度を増やすことになるので、予想外のダメージを受けたりした場合は私に回復を要求するようにお願いします」

「ああ、わかった」


 マコトとシャルさんの注意を聞いて、俺はこの古戦場での戦い方の方針を理解した。


 古戦場の敵は全てLv.25以上と、Lv.17の俺からしたらかなりの格上なので、とにかく安全重視で確実に敵の数を減らしていくのがベストなようだ。


「よーし、それじゃあツアー最後のエリアだから、気合い入れていくよー」


 そうしてハルカが号令をかけたことで、俺たちの古戦場エリア探索が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。