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110 装備の非表示

 ヒヨリと二人で集合時間に十分遅れで行くと、そこにはすでに全員揃っていた。


「遅いよお兄ちゃん!」


 ハルカは俺の顔を見るなりそう言った。


 といってもそれはポーズでそうしているのであって、別に本気で怒っているわけではなさそうだ。


「悪い、少し買い物が長引いちゃってさ」

「まあさすがにその辺はまだ慣れてないだろうし、今日のところは大目に見てあげようかな」


 ハルカはそう言いながらも、今後は気を付けて、それでも遅れるときはメッセージで連絡するようにと俺に注意する。


「それでチトセは何を買ったの?」

「ああ、さっき言われたから良さそうなアクセサリー装備を買ったんだ」

「あ、風のネックレスですね」

「随分とマニアックな装備ですけど……そうですね、チトセさんのプレイスタイルなら最適かも知れません」


 キリカの質問に答えると、マコトが目ざとく俺の装備に気付き、シャルさんが冷静に分析する。


 というかやっぱりこれってマニアックな装備なのか。まあ素早さしか上がらない尖った性能を見たときからそんな気はしていたけど。


「お兄ちゃん、それ自分で選んだの?」

「いや、ヒヨリに手伝ってもらった」

「やっぱりそうだよね」

「初心者のチトセさんにはお節介かなとも思ったっすけど、実力を考えると素早さビルドを薦めたくなっちゃって……やっぱり不味かったっすかね?」

「いや全然! というか私たちもお兄ちゃんに素早さビルドを薦めてみたいって話はしてたし。お兄ちゃんも別に不満はないんだよね?」

「ああ。というかヒヨリに火力重視とかサブタンクとか色々教えてもらった中で、一番面白そうだから自分で素早さビルドを選んだんだよ」

「あはは、至れり尽くせりだね」


 実際ハルカの言う通りで、トッププレイヤーのヒヨリに分かりやすく装備について教わる機会なんて普通はそうないはずだ。


 その上でヒヨリは決して俺にこれが強いからと押し付けるようなことはしなかった。それぞれの長所を教えながら、最終的には俺が選ぶようにしてくれたのだ。


 これぞまさに至れり尽くせりと言えるだろう。


「でもチトセって、やっぱりアクセサリーがあまり似合わないわねー」

「ちょっとキリカちゃん!」

「ははは。というかキリカもやっぱりそう思うか? 実は俺もちょっと思ってたんだよな」


 思ったことをそのまま口に出したキリカをマコトがたしなめていたけど、俺は特に気にしなかった。


 キリカもそれくらい俺に対して打ち解けたということでもあるだろうし、むしろ思ったことをそのまま伝えてくれる関係の方が俺としては心地がいい。


 しかしアクセサリーが似合わないのは仕方がないのだけど、ゲーム的には装備しないわけにもいかないのが難しいところだ。


「チトセさん、もしかして装備の非表示って知らないっすか?」

「え、非表示とか出来るのか?」

「装備画面の右のアイコンが今光ってると思うっすけど、消したい部位の光をポチっと消せば装備効果はそのまま見た目だけ消せるっす。あ、武器は無理っすけどね」

「なるほど」


 俺はヒヨリの言った操作を試して、アクセサリーの表示を消す。確かにステータスはそのまま、見た目だけが変化しているようだ。


 そもそも俺は昔から体に何かをつけたりするのが苦手だったりする。


 だからゲーム中といえどネックレスやイヤリングといったアクセサリーをつけるのはあまり落ち着かなかったので、これは助かる機能だった。


「ちなみに装備の見た目を別の装備に変えたりも出来たりするよ。まあ特定のクエストをクリアしたり特別なアイテムが必要だったりで、色々条件はあるけどね」


 LLOみたいなゲームは装備が自分の見た目と繋がっているので、そんな風にオシャレに関しての機能は色々と充実しているらしい。


 そういったゲームの攻略とは直接関係しない部分でも、コーディネートを試行錯誤したりなどの様々な楽しみ方があるようだ。


 俺はそういうことにあまりこだわりはないのだけど、ハルカたちは女の子なのでやっぱりそういう機能は嬉しいのかも知れない。


 そんな話をしていたタイミングで、ふとハルカがヒヨリのクランタグに気付いたらしく、意外そうな声で尋ねた。


「あれ、というかヒヨリって、クラン入ってくれたの?」

「ええ、実はさっきチトセさんに情熱的に口説き落とされたっす」

「チトセ、見かけによらずやるわね!」

「チトセさんにそんなことが出来たなんて、意外です!」


 キリカとマコトが心底感心したような声色でそんなことを言った。二人は俺を一体どんな人間だと思っていたのだろうか。


「ヒヨリさんが加入したとなると、一気にクランの戦力アップになりますね」


 一方でシャルさんはあくまでも冷静だった。さすがシャルさん。


「でも本当、びっくりだよね」

「というか、そんなに驚くことなのか?」

「だってあのヒヨリだよ?」


 どのヒヨリだよ。


 まあヒヨリと一緒にパーティーを組んだら、それだけで戦いやすくなるくらいの影響力があるのは事実だった。知識と経験が豊富で、視野が広く指示も正確なのだから。


 そういう意味ではハルカたちのテンションが上がっているのも無理はないのかも知れない。


「そんなわけでこれからは皆さんと一緒のクランで活動することになったんで、よろしくお願いするっす」


 ヒヨリが改めてみんなにそう言って挨拶すると、ハルカたちは温かくヒヨリを迎え入れてくれた。


 まあ何も起きないとは思っていたけど、これでとりあえずは一安心といったところだ。


 あとはこの《PoV》というクランが、みんなにとって居心地のいい場所になれるかどうかだけど、それはもう少し長い目で見るべき話だろう。


 とりあえずはそんな感じで話が一段落したところで、俺たちは未開拓エリアツアーの最後となる西のエリアボスを目指して出発することにした。


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