はじまり
拙い文章ですが、よろしくお願いします
「ここは、どこ?」
そう呟いている少女は、戸惑っているようだった。
少女は闇を連想させるような漆黒の髪をしていた。見たところ年は十五、六くらいだろうか。着ている服がアニメなどでよく見られるような、通常使用されているものとはかなり違った見た目の巫女装束であること。巫女装束には明らかに不釣り合いであろう銀色の十字架のネックレスを下げていること。日本刀を腰に差していることを除けばわりと普通(?)の少女だろう。
少女が今いる場所は、森の中だろうか。辺りはすでに暗く、空には赤い月が昇っていた。
「どうしましょうか……」
今度は、少し困ったような声で呟いた。少女の両手には、二人の赤ちゃんがいた。
「まあ、いつまでもここにとどまっているわけにもいかないですからね」
そう言った時、黒い影が一斉に飛び出してきた。それは大きな狼の群れであった。
これが普通の人間であったら、狼たちは何事もなく餌を手に入れることができたのであろう。しかし少女は、普通ではなかった。
「少しだけ我慢してね」
そう笑いかけながら、両手に抱いていた赤ちゃんたちを地面に降ろし、少女は無造作に刀を振った。それだけで狼たちは肉塊へと変わった。さらに何匹かの狼が倒れたとき、森の奥からひときわ大きな個体が歩いてきた。それまでの狼が二メートルほどだったが、その巨狼は五メートルほどあった。
「群れのボスかしら?」
少女が巨狼に向き合う。
「【雷槍】!」
少女の前方に三本の雷の槍が出現する。それは、容赦なく巨狼の身を抉った。そして巨狼は地に倒れ再び立ち上がることはなかった。
生き残った狼たちが逃げ出した後、少女は赤ちゃんたちを抱え、歩き出した。その様子を見ていたのは空に浮かんだ月のみであった。
「本当にどうすればいいの?」
もちろんその問いに答えるものは誰もいない。両手に抱えた赤ちゃんたちは、ただ無邪気にわらっていた。