表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

513/526

鉄槌をくだすのは神か人か

 全員に武器がゆきわたり、すべてのが土方をみ、すべての耳朶が土方の言をきこうとまっている。


義弟おとうとよ、われらがどちらかを相手しよう。おいおい、なにもわが甥を甘やかすわけではない。これは危急。確実なを弄すべきであろう?」

 脳裏で最善な手段を講じている土方に、厳蕃がちかづき耳朶に囁く。


 厳蕃は、自身と白き巨狼、そして、土方の息子とで相手をしようというのだ。


 辰巳は性悪でろくでなしの甥ではあるが、こと戦にかけては完璧パーフェクトである。


 辰巳に任せれば、まず間違いない。


義兄上あにうえ・・・」

『よぼよぼのじじいどもも呼びよせ、いっそ、本気をだしてもかまわぬであろう?連中は、人間ひととしてやってはならぬことをしでかした。ここいらで、お尻ペンペンしてやらねばならぬ。連中が信仰する若造キリストがそれをするまえに、さらなる偉大な神がやってやろうではないか』


「なにそれ?壬生狼、なかのものがあらわれるわけ?」

 玉置である。


 すっかり背が高くなり、相貌かお二枚目ハンサムだ。

 やさしく気もきく青年として、女性たちレイディースからかなりもてている。 


冗談ではないノー・キディング!わたしはやらぬぞ」

 それに反応したのは、厳蕃である。


 玉置、ではなく白き巨狼をみ下ろし、噛みつかんばかりに叫ぶ。


 これはもう、なん年もまえから議論されつづけていることだ。


 すなわち、人間ひとの力によるものではなく、うちなるものの力でいっきに決着かたをつけてしまえ、ということを。


淘汰セレクションというがの、結局、亜米利加ここの古くからの民は、ほぼ淘汰セレクションされつつある。みよ、現実を。あの虐殺を・・・。うちなるものが手を下さずとも、人間ひとはみずからでおこなっておる。誠に愚かなことストューピッドだ』

 白き巨狼は、頭部を右に左に振り、おおきく息を吐きだす。


 黙りこむ人間ひと・・・。


 正論である。


『やつらにださせればよい。おぬしがいやなのであったらな。朱雀と玄武に、させればよかろう。すべてのものを吹き飛ばし、すべてのものを奈落の底へとおとす。たったそれだけだ』


 たったそれだけ・・・。


 厳蕃は、思いおこす。


 昔、競い馬をしたときに、「偉大なる呪術師グレート・シャーマン」たちから受けた攻撃を。


 たしかに、あの竜巻に地割れであれば、いっきに決着かたはつくであろう。


「それで、トシシゲ師匠と坊は、どんなことができるの?」

 ケイトである。


 背が高く、スタイルも抜群。なにより美しい。さらには強すぎる。


 ここにいるおとこ以外は、魅了しすぎるくらいに魅了するであろう。


 が、ここにいるおとこたちは、怖がっている。

 信江同様、叱られまくりなのだから・・・。


「父と従弟じゃない」

 厳周がすかさず突っ込む。


「わかってるわよ。言の葉の尻をとらえないで」

 ケイトがやり返す。


 厳周は、貫禄十分。


 古の剣豪のごとき落着きと、それ以上の腕前をもち、叔父である土方をよくたすけている。


 その二人の様子を、周囲は苦笑とともにみ護っている。


『ふむ・・・』

 白き巨狼は、右に左にいったりきたりしする。


 そして、その歩をとめた。

 視線が、厳蕃を、それから少年へと向けられる。


『まぁなんだな、たいしたことではない。白虎は、この世のすべてを焼き尽くすだけであるし、青龍はこの世のすべてを洗い流すだけだ』


 しばしの沈黙。


「それって、どちらの力でも、なんにもなくなっちゃうってことだよね?」

 田村のひかえめな確認である。


 田村もまた、いい青年になっている。あいかわらず伊庭を尊敬し、いつもその尻を追いかけている。

 もともと器用である。なんでもそつなくこなし、頭の回転もはやいので、相馬のよき補佐役でもある。


「ふざけたことを・・・。地獄の劫火に、生命いのちの源たる水・・・。それを、だけ、などと申すな」

 厳蕃は、ふんっと鼻を鳴らす。


「でも、そうされてもおかしくないことを、人間ひとはしでかしてる」

 沖田のつぶやきに、周囲には頷く者もいる。


 沖田は、労咳であったことなどまったく思わせぬほど、体躯も精神力も強くなった。

 剣の腕前も同様で、いまでは永倉、斎藤とまったく遜色ない。


「だからと申して、人間ひとをすべて淘汰する、と?そのなかには、人間ひとによって虐殺された側も入るのだぞ」

 厳蕃は、やり場のない怒りをおさえるかのように、両の拳を振りおろす。


 無論、その人間ひとのなかには、ここにいる全員も含まれる。


「兎に角、人間ひとには人間ひとだっ」


 頑固さは人間ひとNO.1であろう。


 とりつくしまもない、とはこのことだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ