表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

501/526

恋は盲目

『ようみえなんだが・・・。ストライクかのう、アウチマン?』

『ようみえなんだが・・・。ストライクだろうのう、アウカマン?』

 主神・・たちの判定。その当惑の声音で、ジムはやっとわれにかえった。


なんてこったホワット・ア・ヘル!』

 痛いアウチ痛いアウチと呟きながら、島田が掌中にあるボールをかかげてみせた。

 なんと、潰れてしまっている。


 そして、左の掌からミットがはずされた。おおきく分厚い掌が、真っ赤になっている。


 島田もジムも、それらを呆然とみつめる。


「ひえええ、なんだありゃ?もしかしてうちなるものの力?」

 藤堂の日の本ジパングの言の葉による叫びに、周囲の者たちは一様に両の肩をすくめる。


 スー族の戦士たちも、かれらの言の葉でなにやら叫んでいる。

 もっとも、その内容はおなじ類のものであろうが。


「おいっみたか厳周?あ、もしかしておまえら、このまえの修行で野球ベースボールまでやってたんじゃないだろうな?」

「そんなわけはありませぬ、八郎兄・・・」

「そうよね、厳周?ちゃんと真面目に剣術の修行に励んだのでしょう?」

 伊庭の問いに、厳周が気弱な笑みとともに応じるのにかぶせ、ケイトが叫ぶ。


「たしかに、速度スピードはすごいかもしれないけど、厳周のほうがずっとすごいわよ。ねぇ、厳周」

「いやケイト、そういうのを「あばたもえくぼ」っていうんだ」

 厳周の肩をもつケイトが、厳周のかいなに自身のそれを巻きつけながら断言した。それにすかさず市村が茶々を入れる。


「あばたもえくぼ?どういう意味なの、テツ兄さん?」

恋は盲目ラブ・イズ・ブラインドがちかいかな?」

 言の葉の師匠マスターである沖田が教えてやった。


「もうっ、やだー」

 相貌を真っ赤にそめ、恥ずかしがるケイト。あいているほうの掌で、沖田の肩をぱんぱん叩いている。


 沖田の眉間に、土方ばりの皺がよった。

 昔、まったくおなじ叩き方をするおとこがいた。それを思いだしたのである。


「いや、それは違うと思うぞ、総司」

 それをよんだ藤堂が突っ込む。


 沖田はすでにそのおとことの思いでメモリーズのなかにひたっている。


「似てるのは馬鹿力だけだ。局長のは、そうだなぁ、なんていうか愛情こもってるってのか?元気をくれるってのか?そんな感じだ、ただの馬鹿力じゃない」

「なんですって、平助兄さん?わたしのどこが馬鹿力っていうの?」

 よんだのは藤堂だけではない。ケイトも同様だ。


「可憐な女性レイディに失礼なこといわないで」

 ケイトは、神速の拳を突きだした。

 それは、避けることままならぬまま、藤堂の鳩尾に入った。

「ぐううう」

「平助兄っ」

「おい平助っ」

 その場にがくりと両の膝を折った藤堂を、市村と伊庭が慌てて介抱してやる。


「近藤さん、わたしたちは、元気で馬鹿やってますよ」

 沖田は一人、青い空をみ上げ呟いた。


 剣術の師匠というよりかは、育ての親たる近藤の笑顔が、青い空にみえたような気がした。


「馬鹿は、わたし以外ですけどね」

 沖田はさらに呟きながら、筋肉のついた両の肩をすくめたのだった。


 近藤も、きっとあの世で笑いながら野球観戦をしているであろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ