「huge」 と「tall」の違いを述べなさい
「トシ、トシ、スー族の戦士たちもでるからって、まさかわたしがはずされるってことないわよね?ねぇ、きいてくれてるの、トシ?」
富士の体躯の手入れのため、近くの川へと向かう土方の後ろを、ケイトが叫びながら追いかけてゆく。そして、その後ろからは若い方の「三馬鹿」がついてまわっている。
「ケイト」
土方は、歩をとめるとくるりと振り返った。富士もまたそれにあわせ、頸だけをまわして亜米利加の少女にやさしい瞳を向けている。
「案ずるな。これは戦、ではない」
土方は、そういってから付け足した。「おそらく」、と。
「ゆえに、漢だけ、戦士だけという規則はない。ちゃんと出場してもらう。それでいいだろう?」
「ほんとに?」
ケイトは、土方の懐を脅かす位置まで迫った。
(な、なにー?)
土方は心底驚いた。
いつの間にか背が伸びている。それも尋常でない伸び方だ。
自身とほぼおなじくらいに?否、そんなはずはない・・・。そんなはずは・・・。
「ケイト、ケイト、副長を困らせるな」
若い方の「三馬鹿」が追いついてきた。
「困らせてないわよ。もうっ、すぐに邪魔するんだから」
ケイトは、まるで日の本で生まれ育ったかのように、日の本の言の葉をあやつる。
(うおーー!!)
そして、さらに驚いたことに、追いつき並んだ若い方の「三馬鹿」、三人ともに背を抜かされている。
土方は、あげそうになった悲鳴をかろうじて呑みこんだ。
(な、なんてこった・・・。馬鹿でかすぎじゃねぇか・・・。餓鬼どもよりでかくなっちまってる・・・)
それは、誠に衝撃的である。
(いってぇなにを喰えばあんなに馬鹿でかくなれるってんだ?厳周のやつ、抜かされちまってるにきまってる。気の毒すぎやしねぇか?)
そもそも人種がちがうということを、すっかり失念してしまっている。
ケイトがあまりにもしっくりしすぎていて、餓鬼どもとおなじにしかみえておらぬ。
しかも、いつもおなじものを喰っているということまでも・・・。
「トシッ!」
自身を呼ぶ大喝と、自身が宙を舞ったのがほぼ同時であった。
「副長っ!」
「大丈夫ですか、副長」
「うわー、いったそうー」
「まったくもうっ!失礼ったらありゃしない。でかいでかいって、女性にたいしていう言の葉じゃないわ。背が高いというのよ」
ぷりぷりしながら去ってゆくケイト。
「いだだだだ・・・」
地面にしたたかに打ちつけられ、腰をさすりながらその背をみ送るしかない土方。
「ケイトッ、副長になんてことするんだ」
「ケイト、いくら副長が弱くても失礼だぞ」
「切腹だー、切腹っ!」
土方を助け起こしながら、ケイトの背に怒鳴る若い方の「三馬鹿」。
土方はかろうじて立ちあがったが、すぐにふらついてしまった。
その背を支えたものが・・・。
「ぶるるる」
富士である。鼻面で土方の背を受け止めてやる。
「富士、あぁ富士よ。やはりおめぇだけだ。おめぇだけがおれの味方だ」
土方は、相棒の鼻面をひっしと抱き、呟いた。
「いだだだ・・・」
それから、腰の痛みに二枚目な相貌を歪めた。




