They are so pervert!
『もちろん、やりたい。やらせてくれ』
まずは、スー族の戦士クレイジー・ホースに、イスカとワパシャがもちかけてみた。
すると、周囲に集まっていたほかの戦士たちもわれもわれもと集まってくる。
「で、なにゆえわれらが呼びだされねばならぬ?」
「致し方ありますまい、義兄上」
ティーピーの間をあゆみながら、厳蕃は不機嫌さを隠そうともせず義理の弟にいった。
義弟は、やわらかい口調と表情を心がけつつ、義兄をなだめにかかる。
その二人の足許を、白き巨狼と幼子がちょこちょこと走りまわっていた。
『トシ、野球、がんばってね』
『大精霊も活躍を期待しています』
スー族の女子たちが、二人の姿を認めると、それぞれの作業の掌をとめて黄色い声援を送ってくる。
二人は、にこにこと笑いながらそれに応えた。
それに気がついたのは、義理の兄弟同時だった。
遠間の位置で、かれらの息子、あるいは甥が立って二人をじっとみつめている。視線が合うと、かれらの息子、あるいは甥は、小さな口唇を開け、力いっぱい息を吸い込んだ。真っ白なシャツを通しても、小さな胸の小さな肺がまるで風船のごとくふくらんでいるのがわかった。
それをみた二人は、同時に駆けだした。「やめろっ!」「やめぬかっ!」と声高に叫びつつ。
だが、ときすでに遅し、だった。
「父上と伯父上の助兵衛ーーーーーーっ!!」
さらには、『父上と伯父上の助兵衛っ!」
日の本の言の葉につづき、わざわざ英語でもいいなおす几帳面さ。
その甲高い声音は、スー族のティーピーの間を駆け回り、あるいは空を飛翔しまくった。
周囲にいるスー族の驚きの表情。そして・・・。
坊の母親の妹だ。さすがは濃い血のつながりだ。
性悪の姉の妹だ。さすがは濃い血のつながりだ。
二人がそれぞれに心中での呟きが終わらぬうちに、突如あらわれた信江に平手打ちを喰らっていた。
その夫などは、回避するどころかあらわれたことすらみえなかった。
「なにごとです?息子に、甥に、なんということをいわせるのです?なんということを思わせるのです?教育上よくありませぬっ」
くっきりはっきりついた信江の掌の跡。その夫も兄も、頬をさすりつつ鼻血がでやしなかったか気が気でない。
この上、白いシャツに血痕でもつけようものなら、確実に淘汰されるだろう。
神様が人類を淘汰するよりも迅速に、簡単に・・・。
『ふふんっ、女子に声をかけられたくらいで鼻の下を伸ばすからだ。誇るのは、どれだけの数をやって・・・』
白き巨狼のうれしそうな思念。一同の遠間の位置でお座りし、ふさふさもふもふの尻尾が地面を右に左に掃いている。
だが、その思念は中途でおわった。
信江の一睨み、そして・・・。
『ごろごろごろ』
真っ青な空に轟く雷鳴。ぴかっと雷が青い空を奔る。
『ひえええええっ!!』
白き巨狼は、情けない悲鳴とともにちかくにあったティーピーへと駆けこんだ。
それは、ちょうど訪れるはずのティーピーであった。