表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

425/526

親子対決 ベースボール編

「ストライクッ!」

 一球目、打者はみおくった。それが様子をみるためであることはいうまでもない。そして、二球目も同様だ。

 狡猾な打者らしく、自身を追い詰め、投手には圧力をかけ、その状況で一発かっ飛ばそうというつもりに違いない。


 三球目、投手もまた狡猾で、わざとはずした。そして、それをよんだ打者は、やはりみおくった。

「ボール!」さらにツーボール。

 これで、どちらも追い詰められ、圧力がかかった。

 つぎは、否が応でも勝負となる。


 選手も見物人も固唾を呑んでみ護る。

 スー族の人たちには、事前にイスカとワパシャがおおまかに説明したのだ。


 空に朱雀とさくらが現れ、すぐ頭上で幾度も円を描いた。

 上空からの見物、だ。


 おおきくふりかぶり、じつにきれいなフォームから繰りだされるボールは、まるで弾丸たまのごとくジムの構えるミットへと飛んでゆく。

 これもまたきれいなフォームでバットが振りかぶられた。バットの芯をとらえ、ボールはカンッという小気味よい音を響かせる。

 弾丸ライナーだ。ボールはすさまじい勢いで投手の頭上を、ついでセカンドのそれをもこえた。

「平助っ、ゆけいっ!」「魁先生っ!」

 土方と伊庭が叫んだのは同時だ。

 叫ばれるまでもなく、すでに藤堂は持ち場から駆けだしていた。

「総司っ!」藤堂が沖田を呼ぶまでもない。すでに沖田は腰を落とし、左右の掌を組んで待機している。

「それっ!ゆけっ、平助っ!」

 沖田の組んだ掌を跳躍ジャンプ台がわりに、藤堂は宙高く舞った。そうしながら、腕を、グローブをはめた掌を、精一杯伸ばした。

くそっシット!」

 藤堂のグローブは、もうすこしのところでボール捕球キャッチし損ねた。グローブの先端にあたったのだ。

 が、それは確実にさらに飛翔するはずだった球威をそいだ。同時に、軌道もかわる。

「任せろ」

 センターから斎藤が猛然と全力疾走ダッシュしていた。そして、ボールが落ちる位置を予測し、その位置へ脚から滑り込みスライディングする。グローブをはめた掌が伸びる。

「パスンッ!」

 ボールは、小さな音ともに斎藤のグローブのうちへと呑み込まれた。


くそっシットくそっシットくそっシット!」

 地団太踏みながら、DHN単語ワードを声高々に叫ぶ厳蕃。

 DHN単語それは、「信江に地獄に落とされる」という教育的によくないスラングのことだ。


 信江の眉間に、夫も凌駕するほどの皺が寄ったことはいうまでもない。


よくやったぞグッド・ジョブ、厳周」

さすがだエクセレント、厳周」

 土方と伊庭は、それぞれの位置ポジションで声をかけていた。

 マウンドからガッツ・ポーズを送る厳周。


 どんな形であれ、父親を負かしたのだ。うれしいにきまっている。


 その厳周に、ライトを護るケイトが駆け寄り抱きついた。


「あーあ、いまのはおれのファインプレイじゃないかと思うんだけど・・・?」

 いつものように頭の後ろで腕を組み、藤堂はくさった。

「ああ、そして、わたしのファインプレイでもある」

 とは、斎藤だ。

「もちろん、おれのアシストも含まれると思うけど?」

 さらには沖田も・・・。

 そして、三人は同時に抱擁ハグしている厳周とケイトをみたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ