表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

422/526

過去の判定と過去の少女

『おれたちは監督マネイジャーでいいが・・・。まさかこのまえのように殺す勢いで文句クレームをつけてきやしないだろうな・・・』

『おれたちですら、あのときは殺されるかと、殺気とやらがびんびん伝わってきていたぞ』

 スタンリーとフランクだ。

 二人は、前回の野球ベースボールのホームベース上の判定を巡って、危うく殺されそうになった、とすっかり怖気づいているのである。


『案ずるな。われわれはいつも冷静だ。義弟にはよくいいきかせるゆえ・・・』

『いや、まってください、義兄上あにうえ義兄上あにうえだって興奮されていたでしょう?あれは、あきらかにうちの島田のほうがブロックしていた。アウトだったのです』

『いいや、うちの平助の身の軽さは相当なものだ。完全に触れるのタッチをかわしていた』

 ジムが仲間に加わったばかりの頃におこなった試合の判定を巡り、またしても喧々囂々といい争いをはじめる首領トップ二人ツー

 スタンリーとフランクは、飛び火することを怖れ、じりじりと後退をはじめた。


 その二人の肩に、背後より掌がおかれたものだから、スタンリーもフランクも飛び上がらんばかりに驚いた。

「ノブエさん?」

 スタンリーもフランクも、日の本ジパングの言の葉で肩に掌をおいた者の名を呼んだ。


おやめなさいストップ・イット!』

 信江は一喝した。

 気配もなにもさせず、突如あらわれ一喝された信江の夫と兄もまた、その場で飛び上がらんばかりに驚いたのはいうまでもない。


『たかだか野球ベースボール試合プレイでしょう?かようなことで目くじら立てるなど、みっともないったらありませぬ。恥ずかしいとお思いになりませぬのか?』

 信江はしらない。この数十年の後より以降永遠に、亜米利加このくに日の本ここくも、おおくのおとこたちが信江のいうところの目くじらを立てまくる、ということを・・・。


『兎に角、されるのでしたらわたしとわたしの弟子も参加いたします』

 その宣言に、土方と厳蕃だけでなく、スタンリーとフランクも仰天した。

 信江だけでなく、ケイトも参加する、と?

『あら?わたしの弟子には、すでにわたしと厳周とで指南ずみでございます。さすがはわたしの弟子、でございます。仕上がりは、剣術や槍術、体術とさしてかわらぬできでございます』

 おとこどもは、一様に呻いた。

 

 よもや、ケイトは可憐な少女ではなくなってしまった。出会ったころ、ついてゆきたいと泣いていたか弱い娘ではない。

 そう、まさしく信江二号だ。

 それは、自分たちにとっては脅威以外のなにものでもない。

 

 土方は、義理の叔父である自身が棒でぶったたかれ、投げ飛ばされ蹴りつけられ、殴られ刀で斬りつけられているところを、はっきりと想像できた。

 その隣では、厳蕃があのときとは違う意味で同道させたことを後悔していた。

義父様おとうさま、なんですの、その言葉遣いは?」「義父様おとうさま、女にだらしのうございます」・・・。

 口うるさい身内が増えた・・・。


 はっと気がついたときには遅すぎた。

 土方も厳蕃も、神速で間を詰められた信江によって、脚の甲をしたたかに踏みつけられてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ