表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

405/526

火蓋はきられた!

 規則ルールはいたって単純シンプルだ。

 5マイル(約8Km)ほど先に、大きな枯れ木が立っている。そこを折り返しとし、戻ってくる。10マイル(約16Km)の距離を、二十頭が駆ける、というわけだ。


「そうだな、せっかくだ。神様方は神様方どうし競ってもらうことにして、人間ひとのなかではいいところにつきたいよね?、ね、一君?」

 藤堂は、いつものごとくおどけた調子で隣の剣の鞍上の斎藤に声をかけた。

 生真面目な斎藤は、剣の集中力が殺がれるのでは、と敬愛する土方ばりに眉間に皺を寄せた相貌を藤堂に向ける。

「当然だ。われわれの騎馬は速い。やるからには全力をもって相手を打ち砕く」

「物騒なことをいうね、一君。これが総司だったら、「さすがは「土方二刀」、なんて嫌味を繰りだしてくるところうだろうな」

「やかましいぞ、平助。おまえ、そうやって他の人馬の集中力を乱そうってんだろう?あいかわらず狡いやつだな」

 すこし離れた位置で、伊庭と厳周と並んで金剛を立てている永倉が吠えた。

「ええっ?そんなせこいことしないよ。那智ははやいからね。そして、騎手がいい・・・」

「そんなことよりも、すごいな。向こうの神様方、やる気満々だ・・・」

 藤堂にかぶせ、伊庭が比叡の鞍上でいった。その視線は、スー族の十頭のほうに向けられている。

 たしかに、向こうからなんとも形容のしがたい強いなにかを感じる。

「われわれは、われわれなりに健闘するだけだ。相棒に負担がかからない程度にな」

 斎藤がしめたところで、この競べ馬の主催者である原田が開始線スタート・ライン上で右のかいなを青空へと振り上げた。


 人馬の息遣いだけが、静寂満ちる大地にたゆたっている。

開始スタート!」

 原田の長いかいなが振り下ろされた。

 そして、ついに「スー族VSサムライ」の決戦の火蓋がきって落とされた。


 開始直後、一団から飛びだしたのは、無論、神様方である。サムライのほうではなく、スー族のほうの。

偉大なる呪術師グレート・シャーマン」の馬たちは、まるで空を駆ける天馬のごとく、軽やかに疾走してゆく。

 

 空に二つの黒点があらわれた。朱雀と桜だ。黒点は、あっという間に人馬の頭上に達し、そこで円を描いたが、人馬の向かう方角へと飛び去った。


義兄上あにうえ、壬生狼、息子を頼みます。先にいってください。走りをハブ・ア・グッド愉しんでください・ホース・ライディング!」

 富士の鞍上から土方が叫ぶと、金峰の鞍上の厳蕃は、自身の甥をちらりとみてから頷いた。

そちらこそユー・トゥー。厳周やみなが無茶をせぬよう頼むぞ」

「こちらのことはお案じ召さるな。息子よマイ・サン、いってこい。存分に駆けてくるのだ」

「はい、父上」

 鞍どころかラグさえもおかぬ四十の上で、土方の息子は父親に眩しいまでの笑顔をみせた。それから、四十に速度をあげるようお願いする。

 同時に、金峰と白き巨狼も速度をあげた、

 スー族の神様方を追うように、三人・・はあっという間に駆けてゆく。


「さぁ富士よ。走りを愉しもう」

 土方は、その三人・・の姿が遠ざかるのをみつつ、富士を仲間たちへ近づけていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ