表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

294/526

早撃ち対居合い抜き

 肩を並べていなかったので、ジェイムズ兄弟の弟ジェシーは、餓鬼キッドの抱擁から免れることができた。が、兄のフランクとヤンガー兄弟の長兄コールのそれぞれの頸に腕を回した餓鬼キッドが、その両者の間にぶら下がっている。

 ジェシーは唾を呑み込んだ。土煙を吸い込んだのか、口中はやけにじゃりじゃりしている。

 街でみかけた。そのとき、この餓鬼キッドは、歩道に大の字になって泣き叫んでいた。歩けないから抱いてくれと、父親にだだをこねていた。

 それが、いままさに大のおとこ二人の頸に腕をまわし、ぶら下がっている。その餓鬼キッドが、あの餓鬼キッドと同じだというのか?それともこれは、悪魔憑きドマニック・ポセッションなのか?

 そう考えていると、眼前の餓鬼キッドがジェシーをみた。まさしく悪魔に憑かれた人間ひとのように、不気味な笑みが可愛らしい相貌に浮かんだ。

いいえイエスわたしはアイ・アム・悪魔そのものア・サタンです・サー

 考えていることがわかっている。悪魔サタン、そう、これはもう悪魔サタンに違いない。

 ジェシーも兄のフランクも、バプテスト派の牧師の子として生まれ育ったので、神に対する敬虔さと悪魔に対する怖れは人並み以上にあった。

 そのとき、ぶらぶらしていた餓鬼キッドの両脚が、振り子のように二度三度と強盗ギャングたちの間で揺れた。かと思うと、その両脚がジェシーの頸に絡みついた。ジェシーの口中から息が一気に漏れでていった。両脚は、すさまじい力でもってジェシーの頸をぐいぐい締め上げてゆく。

『あなた方を狩るのはわたしの役目ではない。その掌にある拳銃ガンで、わたしの兄たちマイ・ビッグ・ブラザーズと戦いなさい』

 餓鬼キッドの囁きは、強盗ギャング三人に精神こころを揺さぶった。闘争心を煽ったのだ。囁きが終わったと同時に開放された。餓鬼キッドの姿が掻き消えたのだ。三人は、間髪入れずに掌にある拳銃ガンの引き金を引いていた。フランクだけは一丁遣いだが、残る二人は二丁遣いである。

「パンパンパン」はじかれた音。三人は、眼前にいる小柄なおとこに撃っていた。

 しばしの沈黙。普通なら、この沈黙の間には倒れるはずが、おとこはわずかに腰を落とした姿勢のまま平然としている。そして、このおとこの相貌にも、不敵以上のぞっとするような笑みが浮かんだ。

 強盗ギャング三人は、つぎを撃つ為に体勢を整えようとした。その瞬間、小柄なおとこは腰を落とした姿勢から後方へと宙返りしてのけた。しかも、すさまじい跳躍力で、高く高く、まるで鳥のように舞った。

 はっとしたときには、三人のすぐ眼前に、細身の剣を抜き放った餓鬼たちキッズが迫っていた。どの餓鬼たちキッズも、それぞれ相対する自分たちのを射るようにみている。

 強盗ギャング三人は、なぜか同じことを考えた。そして、鳩尾の辺りに鈍い痛みが走り、そのまま気を失った。


 黒いは、まるですべてを吸い込んでしまいそうだ。三人ともそう強く感じてしまったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ