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「近藤四天王」、ギャングを嘲笑す

「しんぱっつあん、みろよ、慌ててでてきた」

 馬車の上で、藤堂は爽やかな笑みとともに建物のほうを指差した。

 つい先ほど、建物のなかにいる者たちをからかったとは同じおとことは思えぬほど、その笑顔は爽やかすぎた。

「平助、おめぇはいやなやつだな、えっ?他人ひとからものを盗んでおいて、その他人ひとを間抜け呼ばわりするとは」

 永倉は、鼻を一つ鳴らした。

「ほんとだよね。ひどいやつだ、平助は」

 沖田は、額に掌をかざし、建物内から鈴なりになってでてくるおとこどもを、心底おかしそうに笑ってみている。

「たしかに、礼儀がなっていないぞ、平助?」

 そして、至極真面目な表情かおで斎藤が締めた。

「ええっ!なんだよ、みんな?ああいえっていったのは、総司、おまえだろ?それに、おれが一番声がいいからって、しんぱっつあんと一君が推したんじゃないか?ひでぇや・・・」

 藤堂は、馬車の上で三人に向き直り、小さな体躯全部を使って悲しみを表現した。

「いや平助、だれも声がいいとは申しておらぬ」

 即座に否定する斎藤。しかも、敬愛する土方のごとく眉間に皺を刻んでいる。

「声は、しんぱっつあんのほうがはるかに通るし、ききとりやすい。平助、おまえのはただ甲高いだけだ。相手に不快さを与えるのには好都合だ」

「一君・・・。よもやおれは、きみにいうべき言の葉をもてないよ」

「おいおい斎藤、おめぇ、平助に斬られたって文句いえねぇほどひでぇこといってる自覚あるか?」

 沖田と永倉は驚きをこえ、呆れた。悪い冗談ジョークではない、のだ。斎藤は、あくまでも思ったこと、それは自身、他人ひとの区別なく、それを嘘偽りなく直接ダイレクトに伝えているだけなのだ。

「一君、ひでぇよ・・・」藤堂は、斎藤と向き合い、半べそをかきそうな勢いで訴えた。

「おれは、おれは・・・。おれが盗んだんじゃないだろう?あいつらから盗んだのは坊、だ。おれじゃない。それを、それを・・・」

 拳を握り締め、訴える藤堂。

 そうとうずれている。永倉と沖田は、文字通りずっこけた。

「新八さん、おれは「近藤四天王」の筆頭をあなたに喜んで譲りますよ。譲って「近藤四天王ここ」を潔く引退してもいい」

「総司、せっかくの申し出だが、筆頭はおれには勿体ねぇ。おめぇこそが最適任者。抜けるのはおれだ。すまねぇが、おれは「近藤四天王ここ」では通用しそうにねぇ・・・」

 永倉と沖田は、互いの相貌をみ合わせ、大きな溜息をついたのだった。


「「お馬鹿四天王」っ!」

 ついに土方の、すべて動きを止める怒鳴り声が飛んできた。刹那、馬車を曳く二頭の馬の息遣いが途絶えた。

「真面目にやりやがれっ!」怒鳴り声第二弾には、すべてを制する幼子の指笛もついてきた。

 馬たちがまた息をしはじめた。


 しかし、「近藤四天王」は馬車上で凍りついていた。


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