What is that?
「おいっみろよ、兄貴、コール、あれはなんだと思う?」
ジェイムズ兄弟の弟ジェシーが、居間の窓に近寄って叫んだ。
そこにいる全員が注目した。ジェイムズ兄弟、ヤンガー兄弟、それにクレル・ミラー、さらにはアーガソン兄弟やマチュー兄弟、それぞれの兄貴の方が居間で腐っていたときだった。
へまをした若者たちは、十二分に制裁を受け、居間の隅でかたまって座り込んでいる。
全員が同時に窓から外をみることはできない。幾人かが近寄ってみると、農場の入り口に近いところに馬車が止まっており、その荷台に数名の漢たちが乗ってなにやら騒いでいる。
「ありゃ、おれたちの馬車じゃねぇのか?」
ジェイムズ兄弟の兄貴フランクがいった。馬にみ覚えがあった。
「ああ、たしかに・・・」ヤンガー兄弟の長兄コールもまた、それを認めた瞬間、馬車上の漢たちが同時にこちらを振り返ったのだ。
「あ、あれは・・・」
ジェイムズとヤンガー兄弟は、揃って瞳を凝らした。
馬車の上に立っているのは四人の漢だった。いずれもさほど背は高くなく、どちらかといえば痩せ気味だ。テンガロンハットにシャツ、ズボン。そして、全員が右か左、どちらかの腰に細長い、剣のようなものをぶら下げている。
なにより、み覚えがあった。が、すぐには思いだせそうにない。
そのうちの一人が、口許に両の掌をあて、こちらに向かってなにかを叫んでいた。
クレル・ミラーが窓を力いっぱい開けた。あまりにも力をこめたものだから、外に開いた瞬間に蝶番が耳障りな音を立てた。
『間抜け、こんなはした金いらねぇよ!」
四人のうちの一番小柄な漢がそう叫ぶと、残りの三人の笑い声がつづいた。
「くそっ」「ぶち殺してやる」
気の短い幾人かが、拳銃嚢から拳銃を抜きながら駆けだした。
「おい、だれか裏からミックらを呼んでこい」
コールもまた、居間の隅にかたまっている若者らに怒鳴ってから走り去ってしまった。
三人の若者は、いわれるままに裏口のある台所へと向かった。台所に駆け込んだ途端、三人は様子がおかしいことに気がついた。
二人の漢が卓につき、カップから薄い珈琲を呑んでいた。一人は、新聞紙を広げている。
三人は文字が読めない。学校に通ったこともない。兄貴たちにくっついて悪さをしてきたからだ。
農場の人間が新聞紙を読むなんて、そんなこと知らなかった・・・。と、なぜか三人ともずれたことを考えてしまった。
いや、待てよ・・・。そもそも、こんなに若い漢がいたか?爺さんと、それよりかは若いおっさんじゃなかったか?
三人とも混乱した。
「三人とも座りなさい」新聞紙をよんでいる漢が、三人に視線を向けることなくいった。いつの間にか、三人の後ろにもう一人の巨躯の漢がいて、若者三人の背後から肩をがっしりとよせあわせた。そのすさまじい力に、一塊にされた三人の肩の骨が軋んだほどだ。
「さてみんな、ホットココアでも呑みましょうかね」
新聞紙をゆっくり卓の上に置くと、山崎は友好的な笑みとともに誘った。
島田は、若者たちを丁重に椅子に座らせ、調理台に近寄ると、ホットチョコレートを作りはじめた。