表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

279/526

発見!

 早朝から朱雀は空を飛翔しまくった。コリドンからアデア方面に向けて。新撰組の翼ある隊士は、じつによく働いてくれた。

「いた、いました」

 そして、ついに朱雀は「ジェイムズ・ヤンガー強盗ギャング団」を捉えた。探索を開始して、わずか半時(一時間)程度で、だ。

 強盗ギャング団は、まだコリドンの近くに潜んでいた。正確には、町から南西にある農場に、である。

 朱雀が上空からみたかぎりでは、いますぐに発とうというわけでもなさそうだ。だが、此度はわずかな収穫であった。そういつまででも遊んでいるわけにもいかぬだろう。近いうちに出発する可能性はかなり高い。

 一方で、隠れ家として使用している農場は、ちゃんと人間ひとや牛や馬のいるれっきとした農場である。

『かれらは通常、移動の際に農場に寝泊りすることが多いのです。町や村の宿屋は危険リスクがありますし、民家などでもそれは同じです。道中にある農場だと情報に疎く、なによりお人よしの者が多い。金か金目のものをやれば、なんの疑いもなく旅の者として泊めてくれます』

 探偵ディテクティブの説明は、土方らにとっては大いにうなづけるものであった。実際、つい先日、金とは関係なく、マットの農場でそれを経験したばかりなのだ。

『そして、かれらは口がうまい。無法者アウトロー、賞金首ということがわかっていても匿う者がいます。これはなにも農場の者だけではありません。先の戦争で夫を亡くした未亡人、子を亡くした親、あるいはその反対、といった人々の寂しさにつけ込むこともあります。もっとも、かれらはなにもそれに甘んじるだけではありません。奪ったものを分け与えるきっぷのよさもあります。だからこそ、人々はかれらを義賊として受け入れるのです。それは、田舎にいくほど顕著です・・・』

 ジェームズはそこで言を止めた。

『が、これからはそうもいかない・・・。でしょう?』

 山崎がいった。自身のもつ強盗ギャング団の知識、そして、敏腕探偵シュルード・ディテクティブの心中をよんだのだ。

『襲う側も襲われる側も増長エスカレートしてゆく。被害もその分大きくなるだろうし、襲う側の欲望もさらに増すだろう。くわえて、先の戦いから年月が経てば人々の不満や心身の傷もすこしは癒え、軽減する。義賊などというごまかしも通用しなくなる』

 厳蕃の言に探偵ディテクティブたちは大きく頷いた。

『そのとおりです。義賊などというのは、しょせん悪党どもの独りよがり。盗むことも傷つけたり殺したりすることも、すべては人間ひととしての禁忌タブー。悪事は悪事、神は「罪を憎んで人を憎まず」と教え給うが、その罪そのものが、神の申す罪とは類が異なるのです』

 ジェームズはそういって笑った。

 が、かれはそのとき、日の本ジパングおとこたちが息を呑んだことに気がついていないかった。

 その教えは、遠き国からやってきたおとこたちにとっても看過できぬことだ。とくに、大人たちの多くが、その禁忌タブーを犯しているのだから。


「朱雀っ!」幼子の声がするまで、日の本ジパングおとこたちは作業の掌を止め、それぞれの「罪」について考えてしまっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ