発見!
早朝から朱雀は空を飛翔しまくった。コリドンからアデア方面に向けて。新撰組の翼ある隊士は、じつによく働いてくれた。
「いた、いました」
そして、ついに朱雀は「ジェイムズ・ヤンガー強盗団」を捉えた。探索を開始して、わずか半時(一時間)程度で、だ。
強盗団は、まだコリドンの近くに潜んでいた。正確には、町から南西にある農場に、である。
朱雀が上空からみたかぎりでは、いますぐに発とうというわけでもなさそうだ。だが、此度はわずかな収穫であった。そういつまででも遊んでいるわけにもいかぬだろう。近いうちに出発する可能性はかなり高い。
一方で、隠れ家として使用している農場は、ちゃんと人間や牛や馬のいるれっきとした農場である。
『かれらは通常、移動の際に農場に寝泊りすることが多いのです。町や村の宿屋は危険がありますし、民家などでもそれは同じです。道中にある農場だと情報に疎く、なによりお人よしの者が多い。金か金目のものをやれば、なんの疑いもなく旅の者として泊めてくれます』
探偵の説明は、土方らにとっては大いにうなづけるものであった。実際、つい先日、金とは関係なく、マットの農場でそれを経験したばかりなのだ。
『そして、かれらは口がうまい。無法者、賞金首ということがわかっていても匿う者がいます。これはなにも農場の者だけではありません。先の戦争で夫を亡くした未亡人、子を亡くした親、あるいはその反対、といった人々の寂しさにつけ込むこともあります。もっとも、かれらはなにもそれに甘んじるだけではありません。奪ったものを分け与えるきっぷのよさもあります。だからこそ、人々はかれらを義賊として受け入れるのです。それは、田舎にいくほど顕著です・・・』
ジェームズはそこで言を止めた。
『が、これからはそうもいかない・・・。でしょう?』
山崎がいった。自身のもつ強盗団の知識、そして、敏腕探偵の心中をよんだのだ。
『襲う側も襲われる側も増長してゆく。被害もその分大きくなるだろうし、襲う側の欲望もさらに増すだろう。くわえて、先の戦いから年月が経てば人々の不満や心身の傷もすこしは癒え、軽減する。義賊などというごまかしも通用しなくなる』
厳蕃の言に探偵たちは大きく頷いた。
『そのとおりです。義賊などというのは、しょせん悪党どもの独りよがり。盗むことも傷つけたり殺したりすることも、すべては人間としての禁忌。悪事は悪事、神は「罪を憎んで人を憎まず」と教え給うが、その罪そのものが、神の申す罪とは類が異なるのです』
ジェームズはそういって笑った。
が、かれはそのとき、日の本の漢たちが息を呑んだことに気がついていないかった。
その教えは、遠き国からやってきた漢たちにとっても看過できぬことだ。とくに、大人たちの多くが、その禁忌を犯しているのだから。
「朱雀っ!」幼子の声がするまで、日の本の漢たちは作業の掌を止め、それぞれの「罪」について考えてしまっていた。




