表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

278/526

共闘

 朱雀は、銀行のすぐ近くまで飛翔し、そこに保安官たちがたむろしているのをみた。そのを通し、幼子もまた同時にそれを感じた。

 そこから、すでに強盗ギャング団が銀行を襲った可能性がでてきた。

 残念ながら、この日は時間切れタイムリミットだ。朱雀にも限界がある。

 そして、朱雀は仲間たちのもとへと戻った。


強盗ギャング団は、獲物を襲うといったん潜伏し、それから違う州に移動します』

 硬いパンに缶詰、それに煮出した珈琲コーヒーといういつもの夕食をとりながら、ジェームズは一行に説明した。

 ジェームズの連れは、ジェームズと同じくらいの若いおとこで、名をネッドといった。市俄古シカゴで、やはり警官をしていたことがあり、そこからの転職だという。

『潜伏というのは?獲物の近くで?あるいは距離を置いて?』

 土方が尋ねると、探偵ディテクティブは両の肩をすくめた。

『そのときによって違います。実入りの多いときは、移動するにも時間がかかる。周辺の田舎町、あるいは農場などで追っ手をやり過ごし、それからいったんばらばらになってつぎの場所で合流する』

『つぎにいきそうなところの予測はつくのかね?』

 篝火の近くに、小石を重石にし、一枚の大きな地図が広げられていた。無論、亜米利加このくにの地図だ。それをみながら厳蕃が問うた。

『今回、不発に終わっていることから、時間を置かずしてつぎの獲物を襲う可能性があります。ここから南下したアデアというところを、「ザ・ロック」の列車が走っています。かねてから、連中は列車強盗をやってやる、と吹聴しています。ここからさほど距離もありません。狙う可能性は高いかと』

 ジェームズのいう「ザ・ロック」とは、シカゴ・ロック・アイランド・アンド・パシフィック鉄道という、じつに長たらしいがわかりやすい鉄道名の、究極の略称だ。

 説明しながら、ジェームズの指先が地図上のコリドンからアデアをなぞった。

『うわぁ、すぐ近くだ』

 全員が食べ物を咀嚼しながら地図をのぞきこむなかで、なにゆえか市村が歓喜の声を上げた。

『そうですな。この地図の縮図率が・・・』

待ってくださいっプリーズ・ウエイトッ!』ジェームズがいいかけたところを、寝た子も起こすほどの大声で相馬がさえぎった。その思いつめた表情かおは、さしもの敏腕探偵ディテクティブたちをも驚かせた。

『ああ、そういう説明はいまはいいでしょう。ここにいるほとんどが、否、一人をのぞいて地図についちゃ理解している。それよりも、自然な流れで協力するようになっちまっているが、おれたちがあんたらに協力して、なにか得なことはあるのかな?』

 土方は、地図から相貌を上げ、探偵ディテクティブたちをしっかりとみて尋ねた。

 ちなみに、一人をのぞいての一人、というのが市村であることは疑いようもない。が、当人は気がついていないようだ。ただ一人、地図を試す眇めつ独占して眺めつづけている。

『報酬では?軍に払うべきだったものを・・・』

 それがどれだけかはわからない。だが、見返りは十二分にあることだけは確かなようだ。

 土方は、形のよい顎を指先でさすりながらしばし考えた。

『ピンカートンは政治的にもコネが?』

もちろんオフコース。実際、多くの政治家ポリティシャンの警護もしていますので。それだけでなく、軍事、経済などあらゆる方面に・・・』

『いずれ世話になることがあるだろう。おれたち、というよりかはかれらのことで・・・』

 土方の視線の先にあるのは、インディアンに黒人に不幸な生い立ちの白人の少女だ。

 探偵ディテクティブたちは察しがよかった。

『わが社は、できるだけのことはさせていただきます』

 ジェームズは、大きく頷きながら応じた。

 たかが口約束、だ。実際、頼るかどうか、頼ったとしてもこのときの口約束が護られるかどうか、はわからない。

 だが、探偵ディテクティブたちのいまの心中に嘘もはぐらかしもなかった。体裁、も。

 保険は一つでも多いほうがいい。

 そして、探偵ディテクティブたちとの共闘がなった。


『ねえ、主計兄?これだったらきっと、四半時(約三十分)でいけるよね?』

 地図から相貌をあげたときの市村の笑顔は、焚いた篝火のなかで眩しいくらいだ。

『おっと・・・』ふらついた相馬の体躯を、相棒の野村が抱きかかえてやった。

 その野村の表情かおには、気の毒すぎる相棒への憐憫の情がありありと浮かんでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ