表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

188/526

Let's lose their virginity

 湖畔の町には数件の宿屋があり、一番大きな宿屋は一行を充分収容しあまつさえおもてなしの精神こころも相当なものだった。

 とりあえずは二人一組で全員の部屋割りを終え、夕食を戴いた。

 旅にでてから体験したことのない豪勢な夕食に舌鼓をうちながら、全員が森で野営している四人に後ろめたさを感じずにはいられなかった。

 四人は缶詰と煮だしてどろどろのコーヒーの夕食を摂っているだろう。

『四人分を別途包んでもらえませんか?』

 土方は宿の主人にお持ち帰りテイクアウトを頼んでみた。どうやら宿泊客の多くが弁当ランチをもって出発するらしく、このときも笑って快諾してくれた。

 無論、ホットチョコレートの注文も承ってくれ、白き巨狼を満足させたことはいうまでもない。

「あとでもってゆこう」

 土方が妻と話している横で、若い方のヤング「三馬鹿」は三人そろって相貌を真っ赤にし、あきらかに狼狽していた。

 元祖「三馬鹿」に夕食後の自由時間フリー・タイムについて話をもちかけられていたのだ。

「案ずるな。この原田左之助がおまえら弟分の筆おろしの助けサポートをしっかりやってやる」

「そうそう、大船にのったつもりでいろって、なっ?」

「せっかく「鬼の副長」の許可がでたんだ。それにこの先、こんな機会チャンスに恵まれるとはかぎらねぇ。まっ、亜米利加アメリカ人だってところがひっかかるかもしれねぇが女子おなご女子おなご、立派に男児の本懐を遂げてみせろや」

 藤堂と永倉の激励に、まだ子どもの域にある三人はますます相貌を真っ赤にした。

「やめねぇか馬鹿どもっ!食卓テーブルでする会話か?それにレイディがいるだろうがっ!」

 土方の大音声が宿屋の食堂内に響いた。先ほどまでテンガロンハットと塵芥にまみれたシャツにズボン、乗馬靴ライディング・ブーツ姿のほかの宿泊客数名がいたが食事を終えいなくなっていた。

「だってよ、副長・・・。あんただって昔は盛んだったろう?」

「そうそう、日野にいた時分ころにはあっちの村の生娘、こっちの村の人妻、京にいた時分ころには島原の芸妓に祇園の太夫と・・・。おっと・・・」

「平助っ!」怒声と蹴りが同時だった。

 全員が驚いた。土方の蹴りなどそうそうみられるものではない。間一髪、藤堂はその強烈迅速の渾身の蹴りを椅子の背に掌を置いて後方回バック転で避けた。空をきった脚は藤堂が座していた椅子の背を見事に粉々にしてしまう。

すげぇアンビリーバブル」幾人かが同じ単語ワードを呟いた。

「あなたっ!」「いてぇっ!」

 一喝とともに土方の尻にその妻の強烈な平手打ちが入った。女剣士の掌の一撃は蹴りにひけをとらぬ。

 お尻ぺんぺん・・・。

 全員が肝に銘じた。その罰はなにも命に従わないときだけに与えられるとはかぎらない、ということを。

 

「でっ、どうするよ、主計、利三郎?」「おれは木彫りしているほうがいいですよ、新八兄。どうも喰われそうだ」と野村が答えると相棒の相馬も苦笑とともに丁重に辞退した。

「じゃっ、総司に一君は?」結局、土方から頭部にしこたま拳固を喰らった藤堂が尋ねると沖田と斎藤もまた遠慮すると答えた。

「おまえらは?生真面目に素振りするなんてことねぇよな、八郎、厳周?」原田は断られることをわかりつつも誘うと、意外にも二人ともついてゆくという。

 じつは二人には別に目的があったのだ。土方から若い方のヤング「三馬鹿」を救うようにいいつかっていたのである。

 元祖「三馬鹿」とフランクにスタンリー、山崎に島田(じつはこの二人も伊庭と厳周同様の使命を帯びているはずである)、伊庭と厳周、そして|若い方の「三馬鹿」は夕食後さっそく外出していった。

 自由時間フリー・タイム異国・・女性たちレイディスと愉しむ為に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ