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物見栗鼠

 小さな林があった。どうやらその奥には小川もあるようだ。

 盗賊の隠れ家アジトは林のなかにあるのだ。

 三人は林の途中で富士と剣からおりた。二頭にそこで待っていてもらうことにしたからである。繋ぐようなことはしない。万が一にも他に仲間がいるかもしれないし、三人の任務が失敗して隠れ家アジトから盗賊たちが逃れるかもしれない。ゆえに幼子が二頭にいってきかせた。自身ら以外の人間ひとをみかけたり朱雀が急を知らせにきたら、一目散に町へ戻るようにと。

 富士も剣も馬面を上下に振ってそれを了承した。


 気配を消し、林のなかを慎重に進んだ。道などない。そのかわり無数の馬の蹄と轍の跡があった。

 途中、木の枝の上に灰色栗鼠たちが現れた。幼子に挨拶しにきたのだ。幼子はそのなかの二匹にお願いして賊たちの隠れ家アジトの様子を探ってもらうことにした。

「だめだよ朱雀、食べちゃだめ」幼子に叱られ、朱雀は土方の肩の上で「きいっ!」と小さく鳴いた。「ごめんなさい。だって栗鼠や兎は大好物でしょう?」幼子が土方の肩上の朱雀をみ上げていい訳しているのをきいて、その父親は苦笑しつつ尋ねた。

「朱雀はなんといっているのだ、坊?」「失礼な!われわれの任務の協力者サポーターを喰うほど飢えていないノット・ハングリーだし無作法バッド・マナーでもないって」

 斎藤がめずらしく笑いだした。そして土方も。

「息子が無作法バッド・マナーで申し訳ないな、朱雀」謝罪しながら指先で大鷹の小さな顎を掻いてやった。小さな小さな双眸を細めて気持ちよさそうだ。

「みえました。居残りが二人、そして町の悪い人。いい争っています」

「よし、いまのうちに近づこう」

「承知」

 三人は賊の隠れ家アジトへと急いだ。


 情報の報酬を全額すぐに支払え。戴くものだけ戴いて今後一切協力しない。町をでて大きな街にゆく、といわれ、留守番の二人はせせら笑った。いまさら抜けられるものか。街にいってなにをする。ちんけな情報屋などちっぽけな町で燻るのが分相応。報酬を受け取りたくばさらなるうまい情報ねたをもってこい。

 そして口論へと発展した。

 もうすこしで撃ち合いになるところであった。すでに互いの指先は腰の拳銃嚢ホルスターに装着している拳銃ガン銃把グリップに触れていた。

 緊迫した空気のなか、互いに睨み合い牽制しあっていた。

「コン、コンコン、コン」と玄関扉ドアがノックされた。それは仲間内で合図にしているノックだ。

 留守番はてっきり仲間が帰ってきたのだと思った。無論、訪問者も同様だ。ただ訪問者はこれで自身が窮地に陥ったことを自覚した。

『遅かったな・・・』留守番の一人が玄関扉ドアを開けた。

 そして、彼らはそこに立っているのが仲間とはまったく違うことを知った。


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