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バッファローさん

すっげーインクレディブル」「でけーヒュージ」「壮観だなプレシャス!」

 一行はその集団を丘の上からみていた。

 バッファローの一群だ。地平線に忽然と現れたかとおもうとすごい勢いで一行に向かってきたのだ。

「また挨拶か?っていうかあれはさすがにやばくね?」

 那智の按上で藤堂は鐙を踏ん張り掌をかざしてその集団がこちらに向かってくるのをのんびりいった。

『ヘイスケのいうとおりだ。そこの丘の上にいこう』

 ワパシャが提案した。この頃になるとだれもがわかっていた。

 あらゆる動物が挨拶にくるのだ。動物と会話のできる小さな幼子キッドと最強の戦士である厳蕃、そして白き狼に。

「案ずるな、わたしと子犬ちゃんパピィがついている」

 富士の按上で眉間に皺を寄せた土方にその義兄が金峰の按上より声を掛けた。

 土方は義兄に頷き、それから自身のすぐ前にちょこんと座っている息子に視線を落とした。

 可愛いわが子は例のごとく期待とわくわく感に満ちたで父親をみ上げている。きらきらと光るその双眸は、さしもの土方の心を癒しとろけさせるに十二分の効果があった。

「伯父上と父さんミチのいうことをよくきくように。それと、あまり無茶はするな?遠目にみてもあれは凄そうだ」

 この後の展開はわかっている。これまでの行動パターンから容易に推察できる。

「父上、ありがとう」わが子の笑顔が眩しすぎる。この日も亜米利加ここの大地を容赦なく照らすお天道様よりよほど眩しい。

「いってこい」掛け声が終わるまでにすでにわが子は厳蕃の金峰の按上に移っていた。

 荷馬車から白き巨狼がゆったりとした歩調で近寄ってきた。

 土方たちは二人と一頭をそこに残し、小高い丘の上へと移動した。


『バッファローはわれわれスー族にとっては兄弟であり生命いのちの糧です。ゆえにわれわれはかれらを「偉大な存在タタンカ」と呼び敬っています。われわれは狩猟民族でした。獲物のない冬季は定住しましたが、狩猟をしながら移動するのです。が、それも昔のこと。欧州よそからやってきた異国人たちによって、われわれは多くの獲物と土地を奪われました。生活どころか生きる術まで奪われかえられました。激減した動物を狩れなくなったわれわれは、定住して農耕せざるを得なくなったのです。それはわれわれにとって不本意である以上に厳しいことでした』

 丘の上でバッファローの集団が近づいてくるのを眺めながらワパシャが説明してくれた。つづいてイスカが説明をかわった。

『バッファローも激減しました。白人たちは食べる為でもなく、生きる為でもなく、面白半分やどうでもいい理由わけで虐殺したのです。あれだけの集団はここ数年でみたことがない。これも『大精霊ワカンタンカたちのお蔭なのでしょう』

 イスカが指差した。大型水牛バッファローの群れがすぐ近くにまで迫っている。

 その壮大な光景は圧巻としか表現のしようもなく、日の本ジパングからやってきた異国人たちは按上で感動を覚えずにはいられないのだった。

 これもまた故国ではけっしてみること叶わぬ光景だ。



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