悪役やめました。
はたと気が付く。
「あれ……何で?」
今までの表立って出ることは叶わなかった私は両手で小ぶりのナイフを持っていた。
ちょっ……!!
いったい何をする気だったんだフレミン!!
生まれて十八年、乙女ゲームの悪役フレミン・ファーディナンドに憑依……というか本来の彼女とは別の感情として私は宿ってきた。
筋書き通りのラスト展開を前にしてまさかのフレミンが消失したらしい。どういうこった。
手にナイフが物語っている。婚約者をヒロインに奪われ、刺しに行こうというのか。
婚約者を刺して自分も死ぬ。恐ろしい、というか危なかった。
このまま本来の筋書きだと奇襲をかけようとしたら、婚約者の護衛がフレミンを殺してしまうのだ。今、私がこうして表に出ているのは奇跡といえようか。
既に、我が伯爵家は没落の危機。フレミンのせいである。親族共々動き出す頃合いか。この家にはもういられないだろうし、全くどうしてくれんのよ。
とまあ、悩んだって仕方の無い事だ。さっさと荷物を纏めて出ていこうじゃないの。
――この日、フレミン・ファーディナンドは国から消えた。
◇□◇□◇
――二年後。
世界樹が生み出す生命の元素の恩恵を受け、人々が幸せに暮らす世界。つまり乙女ゲームの舞台であるベルケン王国より、かなーり離れた場所にて。
そんな世界の片隅、世界樹の根元にある小国ログレスの冒険者ギルドで活動をしている一団があった。
名はユラギ。生ける伝説の冒険者が設立した一団である。
快晴の下、腰に愛用のレイピアを下げ気持ちよさそうに背伸びをする女がいた。
彼女の名前はフレイ。ログレスのギルドで活動しているユラギの1人である。
「フレイ~、洗濯物干しといたよ」
「ありがとう、ミリス。こっちもやっと一息つけるところよ」
ミリスと呼ばれた少女はこのギルドで洗濯を担っている。とはいえ、ギルドの人数はさほど多くないため昼過ぎには大体の作業は終わってしまうのが日常だ。
「私はこれから、何時もの所に行ってくるよ」
愛用のレイピアの鞘をひと撫でして、空高く聳え立つ世界樹を見上げた。
すると次の瞬間──突然、世界樹から強い──しかし柔らかい光が放たれた。
「!!」
「何あれ――!」
世界樹からの光に二人は驚く。今まであんな光強い輝きは見たことがなかった。
「今の光、世界樹が何かを出してた?」
「わからない…………」
何が出てきたのかまでは、二人とも確認ができなかった。ただ世界樹の天辺から空へと一柱の光が立ち上ぼり消えていった、ということだけ。
「何だったんだろう……?」
「ミリス、私行ってくるよ。世界樹に」
「気をつけてねー!」
フレイは世界樹へ足を向け進んだ。
世界樹についたフレイは、そこで隠しキャラと出会いギルドの仲間と様々な困難に立ち向かって行くという。




