神風旋律曲‐カミカゼロンド‐
轟音とともに大地が割れた。
雪玉を上から押し潰したように球体の星から光が溢れるそれは星の命と呼ばれていた。人間でいう魂そのものの血液。
空中へと、光が……星の命が濃い暗闇の中へと、微粒子となり放出される。
真っ二つに割れた星は徐々に外側から崩壊し、その形を失い重力に逆らわずに暗闇の中を漂う。
神に見放された星は、生命の住まない処となり、やがて銀河を漂う屑となるだろう。
◇◇◇
とても長い夢を見ていた気がする。
世界の始まりから終わりまで、一気に流れ行く光景を見たような。
まあいい、所詮夢だ。忘れよう。
それよりも……
風が騒がしい。
ああ、駄目だ。
目覚めなくちゃ。
遅刻だけは絶対に駄目だ。
重い上半身を、なんとか起き上がらせたはいい。
「え……」
目覚めるとそこは広大な大草原でした。
柊 珠夜、大学二年生。
(ああ、まだ夢の中か……)
再び寝転がり、睡眠を…………じゃなくて。
「ここ何処ぉぉぉ――――っ!?」
若き乙女の叫び声は、だだっ広い大草原に響いた。
誰もいない、誰にも届く事はなく、かっ消えた。
「………」
おかしい。確かに私は、自分の部屋のベットで寝たはずだ。
今の服装は有名な低価格高品質で有名なユニ〇ロの部屋着だ。そう完全なるラフスタイル。そして、何故かサンダル。
起きたら大草原とか何の冗談か。おい。
誘拐か?いや我が家のロックは完璧なセキュリティのはず。
「……私、夢見てんのかなぁ」
目の前に広がる、大草原…いや、よく見れば街がある。
そして、その中にそびえ立つ見たことない建物。
城だ。まさに絵に描いたような英国風の城。
どう考えても日本にあるわけがない。
「とりあえず歩くか」
一歩を踏み出そうとした、その時。何かが此方へ向かってくる。
馬だ。馬に乗った鎧で身を纏った男達が。その数、約二十騎ほどかな。両目視力2.0ですから。
ちょ、ちょっと。
身構えようとするも、あっという間に取り囲まれた。
ピンチ?
「ーーーー!!??」
何か怒鳴っているが何語なのかわからないため首を傾げるしかない。
この騎士風のおじさんが『貴様は何者だ、何処から来た』と言っているならば、『柊 珠代。十九歳』としか答えるしかない。私は私なのだ。
というより、どうやってここに来たかもわからないのに『日本から来ました』と、言ったところでなんになるか。
怪しまれるに決まっている。
さて、どうしよう。
騎士風の男達が、言い合っている最中。掻き分けるように此方へと、新たに現れた白馬に乗った青年がやって来た。
プラチナブロンドに深い碧色の瞳。まさしく、白馬の王子様がそこにいた。顔はイケメンに分類されるだろうか。だが、騙されないぞ。イケメンは自分の顔を武器にし、乙女達を蹴落として行くに違いない。
キッと睨む。
白馬の王子様は私に怒鳴ったおじさんを咎め黙らせた。
次第に喧騒も落ち着いたところで、白馬の王子様は杖のようなものを睨んでいる私に向け、何か唱えた。
「聞こえるか?」
「あ、はい」
彼は一体、何をしたのだろうか。急に言葉が、わかるようになるなんて……
「よし、王宮まで来てもらおう。君に拒否権はないよ」
「What!?」
気付いた時には既に遅く、私は二人の騎士に両側を固められ逃げ場を失う。
くっ…逃げ道を失ったか。
「抵抗しようとは思わないことだ」
「………」
冷たく言い放たれた言葉は何故か重たく、のし掛か
った。
◇◇◇
馬に乗せられて連れてこられたのは城の中。王の間、もとい謁見の間。
そして……
「ごめんなさい! ごめんなさい!! 本当にごめんなさいぃぃ!!」
私に必死に謝る草食系金髪翠眼の美青年。
頭を上下に激しく振り生一杯すぎる謝罪を繰り返す。
わかったから、やめて。ちょっと異様。怖い。
場所を変えて、事の詳細を明かされた。
それは、あまりにも身勝手な、私の意思を、まるっきり無視したものだった。
つまるところ勇者召喚。私と同じように、召喚された者達が城の一室に集められていた。




