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僕とパンクな天使の平行世界巡り

文芸大学に通う青年、伊織 悠(いおり ゆう)は大学の図書館にある書物庫で一冊の本に触れてしまい、平行界(パラレルワールド)へとタイムスリップしてしまう。そこである天使と出会った。パンクな服を着こなす彼は言った。


『今から世界を壊すから退いててね』

「えっ」


 どうしてこうなったんだろう…。

 僕がいったい何をしたというのだろうか。


 人生においてスカイダイビングを体験する人はいるだろう。

 しかし、パラシュートという安全器具“無し”で大空を落下する強者はいないはずだ。


 だが、これはどういうことだろう。

 視界いっぱいに広がる青空に独特の浮遊感。


「何で僕、落ちてんのぉぉぉお!!!???」


 絶叫。


 もうすぐそこに地面が迫ってるというのに。

 こんな時、意外にも人間とは冷静なもので、僕は今までに至る経緯を思い出していた。




 ◇




 8月上旬。


 ジリジリと照りつける太陽の下、売店で買ったばかりのアイスを頬張りながら片手にスマホを弄る。


 先週、自作のライトノベルが完結した。

 一年ちょっとの連載期間だったがランキングに載る程ではなかったけれども。

 でも見ていてくれる人はいるようで、『面白い』と感想を述べてくれるのが結構嬉しいものだ。

 一つ一つの感想に返事を打ちながら暑い中、図書館へと向かう。


 それが僕の日課の一つだ。


 面白いもの(冷房代節約)を求めて大学の外れにあるこの図書館は貴重な歴史的資料の複製が読めるのだ。

 最近は西暦前後辺りの事を調べている。

 レポートとは関係ないが、わりかし小説のネタにもなる。その時代の主要な人物像とか特に。


 図書館に入ると、いつもより利用者が多い。

 この時期は冷房を求めて人が多い気がする。生活を切り詰めた学生達が多いのだろう。僕もそのうちの一人だけれど。


 返却も兼ねていたのでカウンターへと向かった。


「雪菜さん、こんにちは」


「こんにちは、伊織くん。返却?」


「はい。それと……」


 僕は手提げ鞄の中から返却する二冊の本と、教授正印がされた一枚の紙を雪菜さんに渡した。


「……ふむ、偽物ではなさそうね。付いてきて。あ、三吉さんカウンターお願いします」


「わかりました」


 金庫から鍵の束を取り出したさんの後に付いて行く。

 カウンターの中の奥、鍵のかかった扉を開け更に地下へと続く階段を下る。

 鉄の扉がそこにはあった。

 銀行の金庫室の扉のようなそれは。


「ただの大学の図書館に金庫室があるんですね」


「考古学科があるから、その研究資料なんだけどね」


 ネタが欲しいと言った時の教授の呆けた顔が思い浮かぶ。


ーガチャン! 


 重厚な扉が開いた。


「じゃあ、私は戻るから。く れ ぐ れ も貴重な資料を汚さないように!」


「あ、ありがとう、雪菜さん」


 背後に鬼武者が見えたのは気のせいではないと思いたい。

 彼女が階段を掛け上がり姿が見えなくなったところで部屋を見渡す。


「さて」


 僕は天井まで高くある本棚を見上げた。

 歴史的価値ある本の複製書だ。

 鞄から綿の手袋を取りだし着用した。


 西暦時代辺りに興味があったのでそれに関連した資料を探して行く。


「あった」


 目当ての本が、あっさり見つかったことに雪菜さん達の整頓に感謝しつつパラリと表紙を捲った。









 

 そうだ、そこからの記憶がない。


 相変わらすバタバタという凄い風の耳鳴りが聞こえているだけで、あとは自分が発している悲鳴も置き忘れてきている感じがした。


 目が大変なことになるので瞼は開けない。

 かといってこのまま落下して潰れたトマトのようにはなりたくはないのが本音だ。

 どうしよう。


 意識が飛びそうだ……


 

「――――――!!」



 思考が途切れる間際、誰かの声が聞こえた気がした。

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