表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バイク夜想  作者: ケイオス
21/21

オートバイ失格

 排気ガス、燃費。

 乗りやすさ、安全性。

 耐・錆び、頑丈・頑健・耐久性。

 道具としての『当たり前』の不可を問う。

 下らない。

 オートバイ、バイク、に、そんなモノが必要なのか?。


 アクセルひとヒネリ一発、ホイールスピンorフロント大UP、ライダー側へと仰け反り引っくり返り。

 大惨事。


 2ストの排気白煙、大白煙、オイル混じりの道幅いっぱいモウモウ煙幕or路面へと綺麗に薄く?広がるボードビリアン。

 自己存在の証。


 ひと冬のガレージ冬眠、雨と梅雨の湿気、新車なのに即に薄っすら浮いている赤錆。

 くっくっくっ、メーカー死ね。


 ああ、バイク乗り。

 悪いヤツは居ないが、ロクなヤツも居ない。

 馬鹿ばっかり。

 普段は普通だが、いったんバイクにまたがると、頭のネジが二~三本跳んでいる。

 だから。

 バイクも馬鹿でイイ。

 賢いバイクなんていらない。

 安全なバイクなんていらない。

 環境を考えました、なんてバイクは最低だ。

 バイクってのは、ソノ程度のソンな代物でいい。

 馬鹿で、馬鹿で、馬鹿を徹底した、どぅだあぁ、てな、馬鹿馬鹿しいのでイイ。

 馬鹿な代物に、馬鹿が乗って、馬鹿な走りをする。

 それがバイクとバイク乗り。

 だからこそ、刹那せつなに、命が絶叫、魂がチャージ、黄泉還よみがえる。




 タコメーターの針がレッドゾーンでブルブル震える。

 エンジンがガソリンタンクの股の下でバラけそうにわめく。

 エキゾート、排気音、耳障りな絶叫をかなでる。


 フルスロットルだ。

 バイクに伏せてフルスロットルだ。

 センターラインの白線を、雨の中、滑りながら限界加速する。

 エンジンが爆発したなら面白い、爆発しそうな夜が心地イイ。

 左右を車が駆け抜け続けて、なかなかだ。


 ヘルメットの中で笑う。

 何が可笑おかしいのか自分でも分からないけれど、くつくつと物凄く笑ってしまう。

 ああ、馬鹿だ。

 俺は馬鹿だ。

 馬鹿な俺に乗られて、お前は馬鹿なコトをさせられている。

 付き合ってくれ、今夜。

 今、走れるだけ走るから、目一杯に走るから。

 フルスロットル。

 お前が居てくれるから出来る。

 腐れた全部をブっ跳ばせ。


 安らぎがなぜか在る。

 右に左にバンクを繰り返し、何も考えずに動くライディング。

 眩しいヘッドライト、にじむ風景、止まっているような時間、永遠の時間。

 お前だけが可能に与えてくれる世界。

 最高で最低の行為。

 ナイフエッジ・ダンシング。

 たまらない。


 クソ食らえ。

 全部、クソ食らえ。

 クソまみれベッタリ世界を吹き飛ばす。

 お前達には分からないだろう。

 バイクに乗らないヤツらには分からないだろう。

 バイク乗りだけが――。

 この世界を知っている。

 クソ食らえ。

 左手で中指をオッ起てる。


 化石のごとく俺が居る。

 今の時代ぢゃ骨董品。

 乗ってるバイクも絶品車。

 だ・か・ら、フルスロットル。

 爆発して、砕けて、飛び散る、バラんバラんに全部。

 笑っちまう。


 ああ、光りは何処どこに在る。

 暗くて何も見えない。

 手探りで探しても何も見つけられなかった。

 たった一個の命、一度切りの命、命。

 ポツンと一個だけ。


 オートバイ、バイク、そして俺。

 走る。

 それだけだ。

 それだけでOK。

 それが全て。

 ほかに何もいらない。

 完璧、完全な世界。

 走る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ