オートバイ失格
排気ガス、燃費。
乗りやすさ、安全性。
耐・錆び、頑丈・頑健・耐久性。
道具としての『当たり前』の不可を問う。
下らない。
オートバイ、バイク、に、そんなモノが必要なのか?。
アクセルひとヒネリ一発、ホイールスピンorフロント大UP、ライダー側へと仰け反り引っくり返り。
大惨事。
2ストの排気白煙、大白煙、オイル混じりの道幅いっぱいモウモウ煙幕or路面へと綺麗に薄く?広がるボードビリアン。
自己存在の証。
ひと冬のガレージ冬眠、雨と梅雨の湿気、新車なのに即に薄っすら浮いている赤錆。
くっくっくっ、メーカー死ね。
ああ、バイク乗り。
悪いヤツは居ないが、ロクなヤツも居ない。
馬鹿ばっかり。
普段は普通だが、いったんバイクに跨ると、頭のネジが二~三本跳んでいる。
だから。
バイクも馬鹿でイイ。
賢いバイクなんていらない。
安全なバイクなんていらない。
環境を考えました、なんてバイクは最低だ。
バイクってのは、ソノ程度のソンな代物でいい。
馬鹿で、馬鹿で、馬鹿を徹底した、どぅだあぁ、てな、馬鹿馬鹿しいのでイイ。
馬鹿な代物に、馬鹿が乗って、馬鹿な走りをする。
それがバイクとバイク乗り。
だからこそ、刹那に、命が絶叫、魂がチャージ、黄泉還る。
タコメーターの針がレッドゾーンでブルブル震える。
エンジンがガソリンタンクの股の下でバラけそうに喚く。
エキゾート、排気音、耳障りな絶叫を奏でる。
フルスロットルだ。
バイクに伏せてフルスロットルだ。
センターラインの白線を、雨の中、滑りながら限界加速する。
エンジンが爆発したなら面白い、爆発しそうな夜が心地イイ。
左右を車が駆け抜け続けて、なかなかだ。
ヘルメットの中で笑う。
何が可笑しいのか自分でも分からないけれど、くつくつと物凄く笑ってしまう。
ああ、馬鹿だ。
俺は馬鹿だ。
馬鹿な俺に乗られて、お前は馬鹿なコトをさせられている。
付き合ってくれ、今夜。
今、走れるだけ走るから、目一杯に走るから。
フルスロットル。
お前が居てくれるから出来る。
腐れた全部をブっ跳ばせ。
安らぎがなぜか在る。
右に左にバンクを繰り返し、何も考えずに動くライディング。
眩しいヘッドライト、滲む風景、止まっているような時間、永遠の時間。
お前だけが可能に与えてくれる世界。
最高で最低の行為。
ナイフエッジ・ダンシング。
堪らない。
クソ食らえ。
全部、クソ食らえ。
クソ塗れベッタリ世界を吹き飛ばす。
お前達には分からないだろう。
バイクに乗らないヤツらには分からないだろう。
バイク乗りだけが――。
この世界を知っている。
クソ食らえ。
左手で中指をオッ起てる。
化石の如く俺が居る。
今の時代ぢゃ骨董品。
乗ってるバイクも絶品車。
だ・か・ら、フルスロットル。
爆発して、砕けて、飛び散る、バラんバラんに全部。
笑っちまう。
ああ、光りは何処に在る。
暗くて何も見えない。
手探りで探しても何も見つけられなかった。
たった一個の命、一度切りの命、命。
ポツンと一個だけ。
オートバイ、バイク、そして俺。
走る。
それだけだ。
それだけでOK。
それが全て。
外に何もいらない。
完璧、完全な世界。
走る。