悲劇が止まらぬ現実世界にて とある新人刑事(3)
「マジか・・・ヤバいな・・・
初めて『魔法陣』なんて見た・・・」
「だいぶ仏さんが傷んでいたから確認はできなかったが、恐らくは自分で描いたんだ・・・」
俺と先輩は、思わず顔を見合わせた。
俺はまだ、刑事になってそれほど歴はないものの、俺よりも遥かに多くの歴を積んでいる先輩ですら、黙り込んでしまう。
『こうゆう事件』なら、警察の仕事としてそれほど珍しくはないのかもしれない。
が、その現場自体に恐怖を感じるなんて、気持ち悪いくらい不思議だ。
ちょっと前、心霊スポットで肝試しをしようとした若者達が道に迷い、俺達警察が出動した騒ぎがあったが、心霊スポットをあちこち探し回るより、こちらの方が倍以上に恐ろしい。
あっちは『幽霊的』な怖さだったが、今回の場合は『人間的』な怖さだ。
いずれにしても、当の本人が喋れない現状で、何故この魔法陣を描いたのかは、誰も知る事はできない。
・・・いや、知らない方がいいのかもしれない。
「・・・とりあえず、遺書を読んでみよう。その中に何かヒントがあるかもしれない。」
そう言いながら、先輩は厳重に封がされている封筒を、数分かけてようやく開封する。
その封筒の中には、乱暴に切られたノートのページが数枚束ねられていた。俺は横から、その遺書の内容を確認する。
ページはだいぶ乱雑だけど、中に書かれている文字は綺麗だった。
「この手紙を読んでくれている人が、もし僕の知り合いだった場合、もしくは父さんだった場合、遺書を
『警察』に届けてほしい。
この遺書に綴るのは、知り合いに対してでもなく、父さんに対してでもない。これは、
『告発』だ。
こうでもしないと、『彼女の死』はずっと有耶無耶になったまま、『奴ら』の思うままに消されてしま
う。
そんな事、絶対に許さない。もう僕は何日も何日も考え、どうすればこの『事実』を周囲に認知させる
事ができるのか、散々考えた。
SNSで告発する手もあったのだが、『デマ』だと思われたくなかった。
だって『事実』なのだ、決してフィクションでもなければ、作り話でもない。他人が茶々を入れるよう
な話ではないのだから。
何故なら僕が、彼女を殺めてしまった。僕自身が、彼女を殺めてしまった。
・・・でも、今はそれが正解だったんじゃないか・・・と思えてくる。
あの劣悪な環境で生きながらえる地獄が終わるだけでも、彼女は十分救われたと思う。」
その遺書に書かれていたのは
『悲痛』と『孤独』に満ちた
とある青年の 『悲鳴』であった




