第十八章 『仇』は取れても 『絶望』からは逃れられない
〈キュウビ〉から湧き上がる業火は、刀の先端に集中して、そのまま狙いを定めていた髑髏の中心に炎のビームを放った。
その拍子に、周囲の木々が動揺する様に激しく揺れ動く。手元の熱さと熱風で、目が開けられないくらいの光が周囲を染め上げた。
普段〈キュウビ〉を持っている時は一切手が震えない筈なのに、まるで暴れ狂う魚を手掴みしている時の様に、手が激しく震えている。
原因は、〈業火両断〉の威力だけではない、私の感情も籠っていた。
分かってる、この巨大な骸骨スライムを倒したところで、もうウルシ君が戻って来ないのは・・・
このやり場のない怒りと悲しみを、相手にぶつけたとしても、全く無意味である事も。
ただ、私の体と心が、ようやく同じ目的で動き始めた瞬間であった。それは単純に、『相手を倒す』という選択のみ。
威力が強かったからなのか、巨大なだけで力はそれほど無かったからなのか、髑髏にあっさり穴が空き、そのまま横倒しになった骸骨スライム。
炎のビームは、そのまま赤く染まる夕焼けに溶け込む様に、消えていった。
そしてようやく発せられていた光が治った頃、自分の両手を見て、思わずギョッとしてしまう。両手から、白い煙がモクモクと立ち込めている。しかも、驚いた拍子に〈キュウビ〉を手から離そうとすると、とてつもない激痛が両手を襲う。
慌てて自分の両手を確認してみると、真っ赤に腫れ上がっていた。
どうやら〈ノリト〉の威力が強すぎて、熱さが手にも伝わった結果、こうなってしまったんだろう。
ただ、今は痛みよりも、悲しみの方が勝っている。私はジリジリと痛みが走る手で、残されたウルシ君の両足を拾い上げる。
足にはまだ温もりがあり、その温もりこそ、さっきまでウルシ君が生きていた証拠でもあり、命を奪われた事実を物語っている様に思えた。
髑髏部分を見るが、そこにあるのはドロドロとしたスライムの塊。それが異臭を放ちながら、じわじわと地面へ沈んでいく。
ウルシ君の髪も、歯ですらも、見つける事ができない。あるのは両足のみ。




