第十七章 真後ろの『絶望』
交渉どころか 会話もまともになっていない
コンは 無意識に〈キュウビ〉を握り締めていた
もう彼が 『人の心』を持っていない事は 明確であったから
私は、その言葉を聞いて、喜べる筈もない。絶句するしかなかった。
だが、彼は前世でも見た事がない程、満面の笑みを浮かべながら、まるで子供が親に褒めてもらう為、必死になって自分の行いをアピールしている様に見えた。
もう私には、彼にかけてあげる言葉は何も見つからない。彼に対する感情が、空っぽになってしまった。
・・・違う、彼自身にもう、感情が無いのかもしれない。
「アイツ、僕を目の前にして、まだ謝罪の意思も見せず、ただ『死にたくない』なんてほざいてたから
さ、望み通り、『不死』にしてこの世界に捨てたんだよ。
・・・まぁ、結果的に『灰』になっちゃったんだけどねー。
アイツだけじゃない、『誰とも関わりたくない』なんて望んでた奴もいたな。
そうそう、『コイツ』だよ。」
そう言いながら、外奈は懐から、『白い長方形の板』を取り出した。彼の手に収まるくらい小さなその板には、黒い文字で名前が記されている。
私はその板に見覚えがあった、それは私の通っていた中学で、制服の胸元に縫い込まれていた『名札』
学年によって板の色が違い、一年生だった私は白だった。
左上にある校章も、遠目でしか確認できないけど、間違いなく私も身につけていた名札に間違いない。
ただ、その名札に記されていたのは、私の名前ではなく、『緑川 風』と記されている。
私はそれ程クラスメイトに思い入れがないから、全員の名前を覚えているのか怪しいけど、確かにそんな名前の生徒は、私のクラスにいた・・・と思う。
外奈は手にした名札を、『バキッ』と2つに破り、それを私に投げつける。
砕けた名札は私の真横を通過したけど、それを目で追う事すら、今の私にはできなかった。
一瞬でも、彼から目を離すのが恐ろしく感じているからだ。
何故なのかは分からない、ただ、相手が『何をしてくるのか分からない』という現状がこれ程まで恐怖に感じるなんて、思いもよらなかった。
ベキョ・・・




