第九章 不穏が影を落とす
コンっ コンっ
「・・・姉さん?」
「あぁ、ウルシ君。
・・・ごめんね、また心配かけちゃって・・・」
「・・・ううん、いいんだ。姉さんは、あの男性を助けたんだから。
別に何も悪い事はしてないよ。
・・・・・それより、ちょっと来てくれる?」
ウルシ君が、何故かオドオドしている。まるで、迷子になってしまった子供の様に、落ち着きなく激しく目線を動かしている。
・・・もしかして、男性の件とはまた違う事件が起きたのかもしれない。私は迷わず、ウルシ君に誘導されるまま、廊下の奥へと進んでいく。
だが、廊下から出た時点で、挙動不審になっているのがウルシ君だけではない事に気づいた。
何故かメイドや召使いが、妙に慌ただしく廊下を行き来している。
そして、廊下の奥へ進んでいくと同時に、誰かが『話し合い』・・・・・いや、『言い争い』う声が聞こえてくる。
そしてその声の主は、お義母さんとアン。そして微かにではあるけど、お義父さんとヴァルの声も聞こえてくる。
声の主が発覚した私は、すぐさま言い争いが繰り広げられているお義母さんの部屋へと駆け込む。
ウルシ君の様子がおかしかったのは、これが原因だった。だから私に助けを求めたんだ。
ガチャ
「お義母さん達!! どうしたの?!」
私が扉を開けて中を確認すると、一番興奮している様子だったのは、お義母さんだった。
アン・ヴァル・お義父さんは、何とかしてその興奮を抑えようとしていたみたい。
お義母さんの顔は、今までに見た事がないくらい、明らかに動揺している。
でも私の顔を見たお義母さんは、ほんの少しだけ落ち着いたのか、ため息をつきながら椅子に腰を落とした。
そしてウルシ君は、私の背中から顔をひょっこり覗かせる。そんなウルシ君を見たアン達も、ようやく冷静になってくれた。
「す・・・すまん・・・
ちょっと・・・」
アンがいつもとは違う、気まずい顔をしながら駆け寄って来たから、少しだけ後退りしてしまった。
アンの心境もまだ迷走中なのか、言葉に詰まっている様子。
多分、いつもは落ち着いているお義母さんが動揺を隠せない様子だったから、アンもそれにつられてしまったのかもしれない。
「何があったんですか?」
「・・・実はな・・・」
普段は穏やかな陛下と女王様が
言い争う程慌てているのには とある理由があった・・・




