第九章 不穏が影を落とす
幸い コンの迅速な対応により
ボロボロ状態だった男性は救われたのだが・・・
男性は、奇跡的に一命を取り留めるらしく、私もバカラさんも、ホッと胸を撫で下ろした。だが、まだ安心するには早すぎる。
あの男性が任務に向かったのは、此処から南にある村、『キタヤマ』
そのキタヤマでは、最近奇妙な『唸り声』の情報が多発して、住民達は日々怯えていたんだとか。そこで、所縁のある教官が調査に向かった・・・というのが、一連の流れ。
ただ、さっきバカラさんが呟いていたけど、あの場所にモンスターがいた報告令は、一度もなかった。
バカラさんの話によると、モンスターが縄張りを見つける為、新天地を求める事はあっても、人間をあれだけ追い詰めるモンスターの報告令は、零に近い程少ないんだとか。
通常のモンスターなら、人間側が逃走すればそれ以上は追わない。
彼らも、自分達の生活を考える、『僅かな理性』がある。だから、無駄な戦闘を避けて、自分達の命を優先する。
諸々の事情で事情は変わったりするものの、基本的にモンスターが、人間を死の淵まで追いやる事はほぼやらない。
あるとすれば、人間がどう頑張っても太刀打ちできないような、それこそ『ドラゴン』クラスの大物なら、人間なんてあっさり逝かれる。
ただ、深傷を負っていたのは、バカラさんよりも兵士歴があり、訓練兵を育てる『教官』の役目を担っている人物。
そんな人物が、あっさりモンスターにやられるのか・・・と考えると、ますますおかしい。
まさか無抵抗のままやられっぱなしだったとは考えにくいし、傷の深さは明らかに尋常ではない。
『切り傷』や『打撲』なら、『タチの悪い人間』の仕業とも考えられるけど、あの男性が負っていた傷は、そんな生優しいものではない。
まるで大火傷を負った様な大きな傷が、全身のあちこちに見られた。ただ、火傷ではなさそうだ。
どちらかというと・・・『溶けている』に近かった。これには医療班の人達も、悪寒を感じていた様子。
ただ、命は助かるみたいだったから、それだけでも救いだ。
「・・・私トゥーソに、お別れの言葉もないまま帰っちゃったな・・・」
私も一応身体検査を受けたけど、全く異常は見られなかった。
助けた直前は全然分からなかったけど、男性の負った正体不明の傷を改めて考えると、真っ先に駆け寄った自分にも何か影響が出ても不思議ではない。
ただ、熱もないし、体の何処かが痛いわけでもない。これには私を診察した医師も、一周回って感心していた。




