沼地の村にて 教官は赴く(3)
「この沼は、モンスターの目撃情報は少ないものの、いつも湿気で満ちている、薄気味悪い場所なので、
村の住民も滅多に立ち入らないのです。
・・・だから尚更怖くて・・・」
俺達が今、目の前にしている沼と村まで、それほど距離はない。歩いて数分で着いてしまう。
村長の息子の言う通り、村を出てすぐ、じわじわと湿気が重くなっていくのを、肌と空気で感じた。
まるでこの場所だけ、ずっと長雨が降り注いでいるような、重苦しい空気。そして、空気だけではなく、地面まで重苦しく感じる。
最近、この辺りでは雨なんて降っていないそうだが、沼に近づくにつれ、地面の土が妙にネッチョリしている。
粘土なのか、泥なのかは分からないが、辺りに生い茂る木々ですら、湿気にうんざりしている様に、項垂れている木々ばかり。
そして、だんだん足元がおぼつかなくなり、一歩一歩慎重に地面を踏まないと、ぬかるみに足を取られそうになる。
足の弱った村長ではなく、村長の息子を沼までの案内役にしたのは、これが原因なのか。
確かに、老人がこの地帯で転んで倒れたら、助けに行く方も重労働になってしまう。
地面を見ると、俺達以外の足跡がほぼ無い状態だ。村の住民でも滅多に近寄らない場所である事は、周囲の鬱蒼とした光景が物語っている。
「・・・よしっ、やっと着いたな。」
「はぁ・・・はぁ・・・
そうですね・・・」
村長の息子は、もう体力の大半をすり減らしている様子。足元が悪いだけで体力を持っていかれるなんて、普通は考えられない。
ただ、日頃から体を鍛えている教官である俺も、もう疲れが見え始めている。完全に油断していた。
沼が目前まで迫ると、吐き気を感じる程の湿気が充満している。
沼からはよく分からない白い湯気が漂い、深緑色に染まった沼の水は、毒々しい雰囲気を放出していた。
顔を覗き込んで沼の底を見てみようとするが、濁っていて全く底が見えない。
沼の中に生き物が住んでいるのかも、深さがどれぐらいなのかも、全く検討がつかない。もしかしたら、底無しの可能性も・・・
・・・だが、こんな場所に動物はおろか、モンスターが生息しているとも考えにくい。だが証言はあるわけだから、嘘・・・というわけでもない。
・・・じゃあ、その『唸り声』の主は、一体何処に・・・??




