沼地の村にて 教官は赴く
「そういえば、ジキロさんのお母さん
「腰が治ったら、久しぶりに王都へ行きたい」
なんて言っていました。この調査が終わった直後にでも、馬車でお母さんを王都まで連れて行ってはど
うでしょうか?
馬車なら俺でも手配できますから。」
「・・・そうだな、女王陛下の薬が、ちゃんと効いてくれたらいいんだが・・・」
・・・だが俺には分かる。お袋は今頃、塗り薬の効果を実感している頃合いだ。
女王陛下お手製の薬は、兵士達の間でも良質で評判だ。王都で奇妙な薬を売り捌いているインチキ医師とは比べものにならないくらいの腕前。
お袋と女王陛下は、ちょっとした友人同士。陛下の指導者だったからこそ、嫁いで来た女王陛下の指導も、短い間ではあったけど受け持っていた。
お袋も当時の話を、よく俺にしていた。
・・・だが、俺が正式な兵士となってしまうと、なかなか家に帰れなくなり、そんな話を聞くのもぱったり無くなってしまった。
王都に住んでいる男の子の大半は、城を守る兵士に憧れる。俺も物心ついた頃から、既に王都が故郷みたいなものだった。
だから、母が元々こんな片田舎出身だったんなんて、知った時には完全に疑心暗鬼だった。
ただ、老後のお袋にとっては、良い環境なのかもしれない。此処は王都の比べると静かだし、のんびりとした時間が謳歌できる。
いつも様々な事柄が動き、変わっていく王都にいると、何故か無意識に疲れてしまう事もある。流行に少しでも乗り遅れると、それだけで他の兵士との話が成立しない。もはや王都は、『情報の密集地』なのだ。
そんな場所に住んでいると、気が休まる時間は当然少なくなってしまう。ただでさえ仕事が忙しいのに、流行に乗る暇なんてない。
俺はそこまで流行は気にしないのだが、職業柄、情報はいち早く仕入れておいた方が、得をする事もある。
ただ、そんな慌ただしい王都の中で、のどかな隠居生活は送れない。だからこそ、職の現役を引退した王都の住民は、王都から離れる。
そして、故郷に帰るか、余生を満喫できる地を探すか、どちらかを選ぶ人間が多い。
中には引退しても王都に留まり続ける人間もいるが、そうゆう人は比較的少ない。
お袋もその例に漏れず、余生は生まれ故郷であるこの田舎に身を落ち着かせた。
だが俺にちょくちょく手紙を届けてくれるから、そこまで心配はしていなかった。
・・・だが、お袋の腰が悪くなってしまった事を知らせる手紙を読んだ時は、驚きのあまり、つい女王陛下に話してしまった。
すると女王陛下は、一旦その場を後にして、すぐ戻って来たと思ったら、あの短時間で塗り薬を製作してしまった。
女王様は、「最近は、腕の立つ『助手』が側にいてくれるのよ」と、笑いながら話していたのを覚えている。
王都から離れた村でも
既にコンの存在は 広く知れ渡っていた




