その後の話
あれからしばらくして。
俺のいないところで相川と謎の老人は普通に捕まり、その場で処刑された。
尋問などはされたようだが、俺が示唆した「精神干渉能力」の可能性が処刑までの時間短縮をされた理由らしい。
まぁ、油断して長々と尋問して、その間に精神を操られるよりはマシか。
あと、これは生き残った連中のうち、俺が信用できそうな人を中心に気にしておくように言っておいた。
領主が洗脳されているかもしれないと。
あっさりと敵が捕まってほっとしたところではあるけど、そこで隙をつかれるとか、よくあるネタだからね。
それにカンストレベルには≪転生≫スキルがある。
こいつらがここで死んだとしても、新たな生を得ていない保証はないのだ。
その転生後のために仕込みをしておくぐらいの悪巧みがあっても不思議じゃないのだ。
これで全部終わったと思いたいところだが、しばらくは領主の様子を窺い、何か仕込まれていないかを確認しておこうと思う。
それと並行してクラン『北極星』のダンジョン攻略も進める。
そしてその後の事だが、一度他のダンジョン攻略をできないか試してみようという気になった。
ダンジョンはそれぞれ特徴があり、その特徴に合わせたビルドが望まれる。
例えば俺の『竜王』では、召喚モンスターの育成や俺自身の選んだスキルによって大きく方向性が変わる。大多数を相手にする方が有利なビルドもあるし、戦闘以外で活躍する個体を扱う為のビルドもある。
要は、俺が他のダンジョンで活躍できるかどうかは未知数であるという事なのだが。ゴリ押しでも4層攻略は出来るだろうから悲観はしていない。
それを考えたのは、他のダンジョンを攻略したときのクリア報酬はどうなるのかと言うのを試していなかったからだ。
ダンジョンは複数あり、複数のダンジョンを攻略すれば複数の報酬が貰えるのか? それは神様に確認をしていない。
もしかしたら、ダンジョンごとに得られるかもしれないという希望がわずかだけど、ある。
その確認のために他の都市へ長期出張することを計画してみたい。
バランが行っていたことが本当かどうか、念のために確認する意味もある。
レベルカンストの俺たちなら一月ぐらいで終わると思うし。
その程度の事はやってみてもいいだろう。
なお、その事を話してみた後の仲間の反応は好意的なものだった。
「いいですね、マスター。新しい事への挑戦が残っているというのは」
「もしも報酬が得られるのでしたら、東方にも向かうのでしょうか? 残る最後のダンジョンの所在は知りませんが、その探索もされるので?」
「うーん。私達だけで済みますかねー、その話。一緒に行きたいって人が多そうなんですけどー」
「それよりギルド『北極星』はどうします? 今後、ダンジョンへ潜る事を“冒険”と呼ぶのは適切ではないって意見が強いのですが」
中には興味が無いといった者もいたが、そこはいいだろう。“冒険”は強制する事じゃない。
ただきっと、俺が何とかなると漠然と考えているだけだ。わざわざ巻き込む理由も少ない。
今のメインメンバーや古くからの仲間や嫁さんは一緒なので、気負う事も少ないさ。
何かが終わったという思いとともに、俺は今後の事に意識を向けていた。




