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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
北極星の竜召喚士
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感染する狂気

 どれだけレベルが高かろうが、首を刎ねられ生きているわけもない。怪しい女が死ぬと、ネクロレギオンや竜牙兵の軍団はその動きを止め、消滅した。

 どうやら俺の判断は正しかったようである。仲間は疲労困憊だったり回復アイテムをかなり消費してしまっていたが、怪我人はいても死者はゼロ。ついでに捕虜も無駄に死なせずに済んだ。


 もっと早くに捕虜を殺していれば消耗を押さえられたのだが、それは結果論であり、今更である。

 終わった事は割り切り、今日のすべてを乗り切ってから反省会でも開いて話す事だろう。





 俺たちがこんな襲撃を受け、街の門が攻撃されていたことを考えれば、街中にも何らかの襲撃があると見ていいだろう。

 誰が襲ってきたのかとかどこが本命なのかは知らないが、これだけの事をやってのけた相手である。これだけで終わると見るのは早計だ。


「ミレニア、頼んでいいか?」

「分かってるわよ。……あとで何か奢りなさいよ」

「ああ、せいぜい高い物を頼めばいいさ」


 そしてこういった情報収集にはミレニアが一番頼りになる。ミレニアは戦闘以外の用途で妖精を育てているため、情報収集などでも活躍の場があるのだ。

 他にもゴラオンなど獣使い系の連中も動員して周辺の情報収集に努める。



「領主の館が襲われてるわ。ジョンが、やられたみたいね。しかもけっこう経っているみたい」


 こういった場合、襲われたくない場所から確認するのが定石である。隠れ家的な場所ならともかく、隠しようのない領主の館は最優先で見に行くことになるのだが。

 案の定と言うかやはりと言うか、ここが襲われていたようだ。

 しかもグランフィストでも最強の一人であるジョンがやられるなど、かなり不味い事態になっているようだ。


「教会は? そっちが無事なら立て直しがきく」

「教会は……無事みたい。まだ警戒中ね」


 俺は領主が殺された事を視野に入れつつ、優先順位の変更を行う。

 領主を守りきれなかったのは業腹だが、蘇生手段が残っているならまだ大丈夫だ。領主など重要人物は定期的に蘇生用の体の一部を教会に預けている。

 それさえ無事なら領主が殺されていてもグランフィストの負けじゃない。


「まずは教会を守りきろう。こちらから人を出して死守しないと」

「分かったわ。みんなには伝えておくから」

「任せた。教会関係者って事でララも連れていくといい」

「ええ。そうさせてもらうわ」


 教会もプライドがあるから俺たちが手を貸すと言っても聞き入れない可能性があるので、関係者のララを連れて行くように指示。

 イーリスなども付いて行くだろうが、そもそもララはつなぎ役として動くわけだし、戦力は必要だからな。イーリスパーティが中心になって教会を守ってくれればいいか。





 そうやって無理に人を出しつつ、俺たちがやるべきことは戦力の立て直しである。

 消耗が大きすぎてガタガタになった連中の回復を行い、MPが尽きた魔法職の連中を抜いた形でパーティの再編をして、またすぐに動けるようにしているのである。

 ララ達を酷使しているが、全力戦闘の後は1時間以上の休憩を挟むべきなのだ。座って水を飲み呼吸を整え、ガタが来てないか装備の確認をさせてから動かないといけない。変に無理をさせれば無理の分だけひずみが生じるのである。


 俺はまだ余裕があったので仲間たちの間を歩きながら様子を見ていたが、そこで見知った顔が近づいてきたのに気が付いた。


 バランである。

 冒険者を引退し、そのまま衛兵の方に籍を移したバランがこちらに来たのだ。



「おう、レッド。ちょっとツラ貸せや」

「駄目です。ここでの仕事があるので」


 バランは俺の顔を見ると付いてくるように言ったが、仲間がここに居て敵がいつまた攻めてくるかも分からない状態で単独行動などできはしないから断った。

 断られたバランは一瞬驚いた顔をしたが、状況を思いだし俺の答えに理解を示した。


 が、それでも退いてはくれない様だ。

 バランは弓を引き、俺に矢を向けた。


「聞きたいことがある。正直に答えろ」


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