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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
北極星の竜召喚士
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閑話:真のラスボスは未だおらず

 相川にとって四度目になる死からの復活。

 うち二回は冒険者時代の失策だ。仲間に死体を回収してもらいグランフィストで復活させてもらったのが一回、仲間が≪リザレクション≫を覚えそれで復活させてもらったのが一回。

 そして三回目は衛兵に殺された後である。四回目も、その延長線上に近い。



「もう少し慎重な男じゃと思ったんだがのぅ」

「狂わせた反動でしょ。何をいまさら」


 生き返ったばかりの相川は動けない。

 そんな相川を見て、とある男女は愚痴を漏らす。


「そもそも数が足りないのよ。

 この男、領主を襲うなら都合のいい手札と思って使っているけど。こんなふうに暴走されては能力の有無なんて関係ないじゃない。本当、笑えないわ。

 他の駒のアテは無いのかしら?」


 女の方は相川を使って領主を襲う算段を付けていた。

 その過程で必要な金銭を得るためにダンジョンに相川を送り込んだのだが、まさか殺されるとは思っておらず、その理由がダンジョンで他の冒険者とかち合っての暴走とあれば、いらだたしくなるのも仕方が無いといえた。


「残念ながら、無理そうじゃ。

 ジョンとか言うのが使えそうではあるが、それでの周囲のガードが固すぎる。隙が足りん。

 本人の抱える闇も少ないし、儂じゃあ無理じゃな」


 男の方、老人は女の言葉に「無理」とあっさり諦めを見せる。

 自身がこの世界の最後の障害であると認識してはいるが、与えられた戦力が少なすぎる。世界を滅ぼすどころか都市一つを相手にする事すら難しいとなると、お手上げと言いたくなる。

 彼には悪役にありがちな破滅願望は無かった。



「でも、そろそろ“期限”が来るのでしょう?」

「おう。“リセットボタン”は秒読みじゃな」


 この老人は元日本人ではない。

 この世界の(GM)に作られた存在である。

 ほんの少しだけ周囲よりも優位に立てる、その程度のデザインをされている。それだけの存在だ。


 本来であれば日本人たちに様々な手出しをするはずが、与えられた力と同志が足りなさ過ぎてほんのちょっとの影響を及ぼす事しかできない。

 例えば、考えを少し歪めて独立運動を起こさせたり、絶望する者の傷に塩を塗り人形に変えたり。人を傷つける事を厭わない者に加虐の快楽を教えたりもした。

 この老人にはその程度の事しかできない。


 この世界の真実を、終わりの時を知る身であったとしても、出来る事が限られている。

 それこそが神の意志であるが故に。



「色々と足りんが最期に一花咲かせる。それで終わりかの?」


 老人はグランフィストの方に顔を向け、つぶやいた。

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