クリア後の後処理
報酬とその後の雑談が終わり、俺たちはダンジョンからの撤収を行った。
「それで結局、報酬は何になったんだ?」
「欲しかったのはほとんどアウト。≪魔力掌握≫スキルが限界でした」
俺が報酬として要求したのは、≪魔力掌握≫というスキル。
効果は≪魔力増大≫≪消費MP軽減≫≪魔力回復≫≪魔法制御≫≪魔法抵抗≫≪魔力感知≫といった、魔力関連の総合スキル。しかも上位バージョンである。あと、ついでにこのスキルを使いこなすだけの頭も貰っている。
これにより俺は魔法関連のエキスパートになり、最終的にはスキルなしで魔法が使えるようになる、はずだ。
本当は一個前の≪神気掌握≫というスキルを提案したのだが、こっちは却下されている。魔力ではなく生命力版の総合スキルなのだが、こっちは強すぎると言われてしまったのだ。
このスキルのおかげでMP最大値も倍近く、大幅に伸びた――≪神気掌握≫の更に一個手前は≪無限MP≫という提案をしていた――ので、召喚時間も大幅に伸びた。
出力的にはあまり変わらないけど、単純な底上げだけでもかなりの強化がされている。
こっちに残った日本人連中がどれだけの物かは知らないけど、今の俺はこの世界でも最強の一人だと思うよ。
戻った俺たちを待っていたのは、領主への報告である。
相川が生き返っていたこと、ダンジョンを攻略できたこと。それはどちらも非常に大きな収穫だ。
ダンジョン攻略に関してはボス素材の代わりにボスの装備品を入手していて、そちらが騎士団で使いたいと思えるほど高性能の『魔術師』系ジョブ装備であった。
全身を守れる魔法抵抗能力の高いローブに≪魔力強化≫≪消費MP軽減≫といったスキル効果のある杖のセットは、100か200は揃えたいと思わせるほどの高品質な品であった。修理などが出来ない事を考えると、どれだけあってもいい物であった。
俺はともかく、俺たちも桜花の為に一セット欲しいとは思った。
あとはボス戦で出てきたホブリンから剥ぎ取った装備類も、ボスまでのフィールドに出現するホブリンよりずっと品質が高い物を装備していた。
金属製装備以外のほとんどは焼け焦げて使い物にならなくなっていたが、無事だった物もそれなりにある。騎士団の規模を考えると、最低でもあと100回ボスを倒しても売り先に困る事は無いだろうし、繰り返し挑戦するのも悪くない。
装備など物資を揃えるのは大変だけど、回数をこなせばきっといい稼ぎになる。
俺たちの報告を聞いて、受付窓口であるジャニスは頭を抱えているようであった。
少なくとも相川復活には高レベルの誰かが控えているというのが間違いなく、かつての事件がまだ終わっていない事を突きつけられた形である。
俺のパワーアップについてはあえて隠す理由もないので、詳細は省いたが嘘は一切ない形で報告済み。こちらについては特に問題視されていないはず。
手に入った装備品関係については金銭的な問題があるので予算配分で頭を悩ませるんじゃないかな?
予算を考えればダンジョン攻略だけでも頭を抱えたくなるのだろうけど、相川の件がトドメになっているのは隠しようのない事実。
なにせ、生き返った事とまだ敵勢力がある事、これからその対処をしないといけない事にここまでの侵入を許した事と問題が山積みだ。頭を抱えるのもしょうがない。
そしてそれら全ては俺にとって対岸の火事であり、ジャニスたちの仕事だ。職分的には、俺は無関係なのである。
俺のみの安全を考えれば相川をどうにかしたいという思いはあるけど、積極的に相川をどうにかしようという気にはならない。
税金分だけ、ジャニスら領主サイドに頑張ってもらおう。
依頼があれば話は別だけどね。
そうしてジャニスに報告を終えた後、冒険者ギルドでは大きな問題が起きてしまった。
現段階で最強冒険者筆頭と名高いバランが、引退を決めたのである。
バラン32歳。
人間であることを考えると早いのか遅いのか。
ジョンに続き、特に影響力の高い冒険者がいなくなろうとしていた。




