第5話 スポンサーが沈黙した日
午前八時十五分。都内のテレビ局のスタジオには、朝の柔らかな光をイメージした照明が満ちていた。
全国ネットの情報番組『モーニング・ブリーズ』の生放送中である。パステルカラーのワンピースを着たサブキャスターの松本愛永は、すらりと背筋を伸ばし、カメラに向かって穏やかな微笑みを浮かべていた。大きな瞳が笑みに合わせて柔らかく細まり、その親しみやすい表情は、朝のスタジオの明るい雰囲気によく馴染んでいた。
「――はい。SNSでの発信が身近になった時代だからこそ、受け取る私たちも一度立ち止まって考える優しさを持ちたいですね。以上、特集コーナーでした」
明るく聞き取りやすいソプラノの声がスタジオに響き、番組はCMへと入った。
フロアディレクターの「CM入りました、残り二分です」という声が飛ぶと、愛永は周囲のスタッフに「ありがとうございます」と丁寧に目礼し、手元の原稿を揃える。
それから三十分後。生放送を終えて個人の楽屋へ戻った愛永は、内側からドアの鍵を閉めるなり、鏡の前でふぅっと深い息を吐き出した。
先ほどまでの柔和な笑顔は消え、ウェーブのかかったダークブラウンの髪を片手で無造作にかき上げる。メイク落としのシートを手に取るその目つきは、冷ややかで鋭い。
「まったく、朝から『優しさを持ちたいですね』だなんて、自分の声で胃がもたれそうだわ。あんな薄っぺらい綺麗事で世の中の悪意が止まるなら、誰も苦労しないっていうのに」
誰に聞かせるでもなく毒づきながら、彼女はテーブルの上で振動した私用のスマートフォンに目を落とした。
暗号化通信アプリの通知。送り主は『N』だった。
愛永はシートで頬を拭きながら、通話ボタンをタップし、スピーカーモードに切り替えた。
「お疲れさま、佐藤さん。人がやっと笑顔の仮面を剥がしたタイミングで鳴らすなんて、スタジオの監視カメラでも覗いてるわけ?」
『生放送の終了時刻に合わせただけです。お疲れのところ恐れ入ります、松本さん』
「ほんと、かわいくない返事ね」
スピーカーから流れる佐藤の静かで礼儀正しい声に、愛永は椅子に深く腰掛け、足を組んだ。
『昨夜共有したMIIKAの件について、メディア側の視点から意見を伺いたく連絡しました』
「見たわよ、概要資料のドラフト。あのMIIKAって娘、昨夜の配信で『スポンサーから全面的に支持されている』なんて大見得を切ったんですって? すごいわよねえ、ある意味で才能だわ。広報や法務が一番嫌がる地雷を、自分からタップダンス踊りながら踏み抜きにいってるじゃない」
『ええ。現在、彩が各スポンサー企業の法務部門へ、事実確認の照会書面を送付しています。千尋が整理した取材記録の公開可能範囲と、今朝取得した元スタッフの証言概要を合わせ、本日中に初期資料を提出する予定です』
「で、出す前に私に赤ペンを入れさせようってわけね。一つ言っておくわ、佐藤さん」
愛永は手元のタブレットを開き、佐藤から送られていたファイルを画面に表示させた。艶のある唇が、わずかに皮肉っぽく歪む。
「あなたの作ったこの資料、時系列の矛盾については文句なしよ。カフェの決済時刻、本人が取材で語ったネイルサロンの滞在時間、そして動画の公開時刻。これは言い逃れようのない客観的な事実ね。ただ、三ページ目。これ、あなたが書いたの?」
『動画公開前の午後八時三分に行われた、古参ファンの投稿との関連性についてですか』
「そう、そこ。MIIKA本人がファンを扇動して攻撃を指示した、っていう書き手の主張がわずかに透けて見えるのよ。あなたらしくもないわね、少し急ぎすぎじゃない?」
電話の向こうで、佐藤がわずかに沈黙する。愛永は画面を指先で軽く弾きながら続けた。
「いい? 企業の法務や広報はね、どれだけ状況証拠が揃っていても『送り主の憶測』が混じった怪文書なんかでは動かないの。むしろ、どこかの誰かによる私怨の攻撃に加担するリスクを警戒して、殻に閉じこもるわよ」
『つまり、関連性の指摘そのものがノイズになると』
「ええ。提示するのは、確認済みの事実だけでいいの。本人が取材で『公開前に親しいファンへ愚痴をこぼした』と発言した記録と、その直後に特定のアカウントが動いたタイムスタンプ。この二つをただ並べて置くだけでいいわ。結論まで親切に書いてあげる必要はないのよ。空白を残しておけば、企業の人間が勝手に『これは危険だ』と自分たちの頭で結びつけるから」
『承知しました。該当箇所の記述を削り、タイムスタンプの並列のみに修正します』
「素直でよろしい。で、今夜にはそのMIIKAの反論動画とやらが出るんでしょう? せいぜい苦いコーヒーでも淹れて見守ることね。私はポップコーンにするけど」
『アドバイスに感謝します。では、また連絡します』
愛永は通話を切ると、鏡の中の自分の素顔を見つめ、小さく鼻を鳴らした。
★★★★★★★★★★★
同日、午前十一時。
赤坂の『リカバリー・ライン』のオフィスでは、佐藤が愛永の指摘を反映した資料の最終調整を行っていた。
デスクの向かいでは、チタンフレームの眼鏡をかけた彩が、自身のノートPCで企業各社との通信履歴を確認している。
「ソレイユ・コスメティクスの法務部から、受領確認の返信が来たわよ」
彩が画面から目を離さずに、端的な口調で告げた。
「今朝送った『MIIKA氏によるスポンサー全面支持発言の事実関係に関する照会書』について、現在社内関係部署へ確認中、ですって。文面は丁寧だけれど、返信が来るまでにかかった時間が普段の倍ね。千尋が西新宿のホテルで聞き出した通りなら、今ごろ広報と事業部、それに役員たちの間で責任の押し付け合いが始まっているはずよ」
「ええ。そちらへ追加提出する初期資料も、今修正を終えました」
佐藤がファイルを保存したところで、ソファでヘッドホンをしていた千尋が、長いダークブラウンの髪を揺らして顔を上げた。
「こっちも終わったわよ。私が担当した取材音声の切り出しと、提出用のトランスクリプト。彼女の愛らしい言い訳を一字一句漏らさず文字にするのは、なかなか忍耐のいる作業だったわ」
「ご苦労さまです。今朝オンラインで聞き取りを行った元美容師の芹沢さんの件は、どうでしたか」
「証言記録は、身元特定につながる固有名詞を伏せた概要版と、守秘義務締結後に開示する詳細版の二種類に整理してあるわ」
千尋はヘッドホンを外してテーブルに置き、少しだけ声のトーンを落とした。
「ご本人は、今は美容業界を離れて都内の事務職として静かに暮らしているそうよ。最初は当時の記憶を掘り返すことに怯えていたけれど、名前や現在の勤務先を外部へ出さない条件を説明したら、当時の接客の事実関係と、合意書案を突きつけられて拒否した経緯を正確に証言してくれたわ。まだ少し、声は震えていたけれどね」
「そうですか。丁寧な聞き取りに感謝します、千尋」
「お礼は結果で返してちょうだい。あとは先方からの返答待ちでしょう?」
「ええ。守秘条件で合意できたところから、詳細資料を送るわ」
彩が頷いたその時だった。
この日は高校の創立記念日に伴う休校日で、朝からオフィスの隅のデスクに監視用端末を並べて調査に加わっていた襟華が、画面から顔を上げた。
「ちょっとスーツ! MIIKAのサブチャンネルが更新されたよ!」
「サブチャンネル? 反論動画は今夜の予告だったはずね」
千尋が眉をひそめる。
「それがさ、予定より早い今の時間に合わせて上げてきたんだよ! ほら、そっちに出すよ!」
襟華がタブレットを操作すると、オフィスの大型モニターへ映像がミラーリングされた。佐藤、千尋、彩の視線が画面へと集まる。
再生された動画のタイトルは『【緊急】現在起きている悪質な営業妨害と誹謗中傷について』というものだった。
画面の中のMIIKAは、あえて血色を落としたようなナチュラルメイクに白いニットという姿で映っていた。
『みなさん、こんにちは。MIIKAです。本当は今日の夜に公開する予定だったんですが、あまりにも酷い状況が続いているので、急遽カメラを回しています』
MIIKAは眉を下げ、胸元に手を当てた。
『私が先日、ある美容サロンで受けた酷い接客について正直にお話ししたことで、今、私や私の所属事務所、そして大切なお取引先の企業様にまで、事実無根の怪文書や嫌がらせの連絡が送りつけられています』
彼女はカメラを見つめ、声を震わせながら続けた。
『私を応援してくださっているスポンサーの企業様からも、「悪質な中傷には屈しないでほしい」と温かいお言葉をいただいています。でも、これ以上私の周りの大切な人たちに迷惑をかけるわけにはいかないので、現在、法的措置を含めた厳しい対応を準備しています。みんなも、どうか変なデマに惑わされないで、私を信じてついてきてくださいね』
「白のニットに涙目のナチュラルメイク。古典的すぎて、逆に感心しちゃうわね」
千尋が呆れたように呟く横で、襟華は素早くコメント欄とSNSのタイムラインをスクロールした。
「感心してる場合じゃないってば! ちょっとこれ見てよ。古参のリーダー格のアカウントが、動画が終わった瞬間に動いた。『MIIKAちゃんを守るために、みんなでスポンサー企業の問い合わせ窓口に応援メールを送ろう』『デマに負けないでって声を届けよう』って呼びかけてる!」
モニターの横に並んだタイムライン上で、呼びかけに呼応したファンたちの投稿が秒単位で増えていく。さらには『ソレイユ・コスメティクスにメール送りました!』『MIIKAちゃんを支持してくれてありがとうって伝えてきた!』という報告までが次々と上がり始めていた。
「うわ、スポンサーにメール送ったって報告、もうこんなに出てる。ねえ、これまずくない? 応援の数が多すぎて、企業が『じゃあやっぱりMIIKAを守ろう』ってなったりしないの?」
襟華が焦ったように振り返る。千尋は画面を覗き込み、小さく肩をすくめた。
「逆よ、襟華ちゃん。あなたが会社の受付嬢だったとして、朝から晩まで何千人もの見知らぬ集団に『いつも暴走族を応援してくれてありがとう!』って玄関先で叫ばれたら、どう思う?」
「え? 普通に迷惑じゃん。警察呼ぶよ」
「そういうこと。一社や二社へのクレームなら現場で処理できても、顧客窓口のサーバーがファンの大量メールで埋まれば、社内の上層部も無視できなくなるわ」
「しかも、具体的な社名を挙げて拡散されているものね」
彩が冷ややかな声で引き継いだ。
「ここまで騒ぎが大きくなれば、法務部としても『社内調査中』のまま引き延ばすわけにはいかない。放置すれば、世間に対して『当社は一般サロンへの攻撃を支持しています』と認めることになるもの。今日中に何らかの公式対応を迫られるはずよ」
佐藤は手元の端末を操作し、画面の送信ボタンを押した。
「田中君、その呼びかけと送信報告の投稿もすべて保存してください。今、初期調査資料を各企業の法務窓口およびMIIKAの所属事務所へ送付しました」
「え、もう送ったの? 仕事早っ」
「準備は済んでいましたから。サロン側の宮原様にも、すでに連絡を入れてあります。どのような挑発があっても一切の追加反応を行わず、すべての通信記録を保全して沈黙を守るように、と。ここからは、企業側が独立して事実を確認する時間です」
★★★★★★★★★★★
午後二時過ぎ。オフィスに置かれた彩の業務用スマートフォンが着信を告げた。
彩は画面の表示を確認すると、周囲に目配せをしてから通話ボタンを押した。
「はい、弁護士の吉田です。――ええ、ソレイユ・コスメティクス法務部の佐伯様ですね。お世話になっております」
佐藤、千尋、襟華の視線が静かに彩へと集まる。
「はい、今朝お送りした初期資料をご確認いただいたとのこと、承知いたしました。ええ、おっしゃる通りです。現在御社の問い合わせ窓口に届いているという多数のメッセージについても、こちらで発信元の動向を把握しております。ええ、大変ご心労のことと存じます」
電話口の向こうから、焦燥を押し殺した法務担当者の早口な声がわずかに漏れてくる。
「はい。先ほどメールでお送りした『秘密保持および目的外使用禁止に関する覚書』に法務部長様名義でご同意いただけるのであれば、直ちに一年半前の合意書案の記録と、元スタッフの証言詳細を開示いたします。ええ、閲覧権限は御社の法務部およびコンプライアンス委員会の専任担当者のみに限定していただきます。はい、今、PDFの電子署名を確認いたしました。これより暗号化ファイルとパスワードを別送いたします。ええ、失礼いたします」
通話を終えた彩は、端末をデスクに置き、ノートPCのキーを素早く叩きながら小さく息を吐いた。
「ずいぶん切羽詰まった声だったわね」
千尋が声をかけると、彩は画面を見つめたまま苦笑した。
「ええ。ソレイユの法務部と守秘義務のロックが完了したわ。今、窓口がファンの応援メールと一般層からの問い合わせでパンクしかけていて、臨時でコンプライアンス委員会が招集されたそうよ。担当の佐伯さん、私が条件を言い終わる前に電子署名を返してきたわ。他のスポンサー二社からも、同じ条件で詳細資料を至急確認したいと連絡が入っている」
彩は暗号化された詳細資料のパッケージを、合意が成立した三社の法務担当者宛てに順次送信した。
★★★★★★★★★★★
それから二時間後の午後四時。
都内の所属事務所の一室で、MIIKAはスマートフォンの画面を睨みつけながら、苛立たしげにヒールで床を鳴らしていた。
「ちょっと、どういうことよ! なんで私があの動画を消さなきゃいけないの!? ファンのみんながせっかくスポンサーに応援メッセージを送ってくれてるのに!」
デスクの向かいに立つチーフマネージャーの男性は、青ざめた顔で通話を終えたばかりの社内電話を置き、震える手で書類の束をMIIKAの前に差し出した。
「いい加減にしてくれ、MIIKA! その応援メールのせいで、ソレイユ・コスメティクスの宣伝部長と法務部からうちに直接、緊急の査問要請が入ったんだぞ!」
「はあ? 査問ってなに? だって、ソレイユの偉い人は私の味方だって言ってたじゃない!」
「そんなものはパーティー会場での非公式な社交辞令だ! 先方の法務部から、お前への正式な説明要求書が届いている!」
マネージャーがデスクに叩きつけるように置いた書面には、スポンサー企業の社印とともに、冷徹な質問項目が並んでいた。
『動画内における「スポンサーからの支持発言」は弊社の公式見解ではなく、いかなる経緯で発信されたものか』
『告発動画の撮影時刻と実際の行動記録の不一致について、事実関係をどう説明するのか』
『一年半前の美容サロンに対する不当な取引要求および今回の騒動との関連性について、本日中に本人からの正確な説明を求める』――。
「な、なにこれ。なんでスポンサーがこんな細かいことまで知ってるのよ! ネイルの時間とか、一年半前の話とか!」
「やっぱり事実なのか!? お前、私には『サロン側に因縁をつけられただけだ』と説明したよな!?」
「う、うるさいわね! 少しくらい話を盛ったって、向こうは私の百万人以上のフォロワーが目当てなんだから、私を切れるわけないじゃない! 新商品のキャンペーンだって、もう来週から始まるのよ!?」
「切れるわけがないだと? だったらこれを見ろ!」
マネージャーがタブレットの画面をMIIKAの目の前に突きつけた。
★★★★★★★★★★★
同じ時刻、赤坂の『リカバリー・ライン』のオフィスでも、襟華が自分のタブレット画面を凝視したまま声を上げていた。
「あっ! ちょっとこれ見て! ソレイユ・コスメティクスの公式アカウントが、プレスリリースを出したよ!」
大型モニターに映し出されたのは、企業の公式ウェブサイトに掲載された簡潔な文書だった。
『【お知らせ】来週より公開を予定しておりました新スキンケアラインの秋季プロモーションにつきまして、諸般の事情により公開を当面の間、延期させていただきます』
そこにMIIKAの名前は直接記されていなかった。だが、画面を見た千尋が、グラスのミネラルウォーターを置いて口元を緩めた。
「新スキンケアラインの秋季プロモーション。昨夜、西新宿のラウンジで社外取締役のおじさまが自慢げに話していた『MIIKAを目玉にした秋の大型キャンペーン』と、一字一句ぴたりと一致するわね」
さらに数分後、MIIKAの所属事務所の公式サイトにも『所属タレントに関する一部報道およびSNS上の騒動について、現在、関係各所への事実確認と調査を行っております』という無機質な告知が掲載された。
「うそ。あんなに『応援してもらってる』ってドヤ顔してたのに、スポンサーが本当に沈黙しちゃった」
襟華が呆然と呟く。
「沈黙しただけじゃないわ。来週から始めるはずだった秋の大型キャンペーンを、わざわざ延期したのよ。少なくとも、MIIKAが言っていた『全面支持』とは正反対の動きね」
千尋が皮肉げに目を細めた。
「コメント欄を見てごらんなさい。さっきまで『スポンサー様ありがとう!』って盛り上がっていたファンたちが、公式の延期発表を見てパニックになってるわ。MIIKAがあれほど自信満々に語った『全面支持』が、本当なのかどうか疑われ始めているんだから」
画面の中のSNSでは、これまでMIIKAの言葉を無条件に信じていたファンたちの間にも、「あれ、スポンサーがついてたんじゃないの?」「なんで応援メール送った直後に延期?」「事務所が調査中って、MIIKAちゃんの言ってたことと違くない?」という困惑と動揺が急速に広がり始めていた。
すると、先ほどまで公開されていたMIIKAの緊急反論動画が、突如として『この動画は非公開に設定されています』という黒い画面に切り替わった。
「あ、動画消えた! 事務所に下げさせられたんだ! やったじゃんスーツ、これであの女も終わりだよ!」
襟華が身を乗り出して声を弾ませる。
「いいえ、まだ第一段階です」
佐藤は静かに立ち上がり、スーツのジャケットのボタンを留めた。その黒い瞳には、勝利の昂ぶりも油断も一切浮かんでいない。
「まだって……だって、一番デカいキャンペーンが飛んだんだよ?」
「キャンペーンの公開延期は、あくまで企業側の当面のリスク回避措置に過ぎません。ほとぼりが冷めれば再開される余地が残っています。彼女がこれまで行ってきた反復的な加害と不当要求の責任を確定させ、小田様とサロンの日常を取り戻すには、もう一押し必要です」
佐藤がデスクの上の黒いスマートフォンを手に取ったその時、襟華の監視用タブレットが鋭いアラート音を鳴らした。
「えっ、うそでしょ!? ちょっと待って、まだ終わってなかった!」
「どうしたの、襟華ちゃん」
「スーツ、MIIKAの個人アカウントが今、緊急生配信を始めた! 事務所のストップを振り切って、自分の部屋から勝手にカメラ回してるっぽいよ!」
モニターの画面に、照明も整っていない自室で、蒼白な顔でカメラを睨みつけるMIIKAの生配信映像が映し出された。
『みんな、聞いて! さっきの動画が消されたのは私の意思じゃないの! 私、絶対にハメられてる!』




