決死の戦術合戦
このタイミングで、後方からフランツとアジルの奇襲部隊が到着した。
「兄貴、たぶんあれが敵の本隊っすね!」
アジルが剣を肩に担ぎながら叫ぶ。フランツは目を細めて頷いた。
「うしっ、おまえら!こっからが本番だ、気合い入れていけよ!」
フランツの激に、奇襲部隊の兵たちが雄叫びを上げて呼応する。ロスティス、ステファンとの戦いを経て、かなりの損害を出しつつも、精鋭が本陣を包囲するように迫り、ナザル軍は東西から挟み撃ちの形勢に追い込まれた。
エルザはそれを察知し、追加の指示を出す。
「フランツさん、アジルさんが、後方から一気に中央を突くつもりです! 敵の梯形を内側から崩すんです。全軍、連携して押し込んで!」
フランツの衝撃波が兵の列を崩し、アジルの斬撃波が抉る。ナザル軍の兵士たちは二方向からの猛攻に耐えきれず、悲鳴を上げながら倒れていく。フランツとアジルは化け物並みの強さを発揮し、オーラを爆発させて剣を振るうたび、数名の兵が木っ端微塵に吹き飛ばされる。盾壁が崩壊し、槍兵の列が乱れ、ナザル軍は急速に削られ始めた。死体が積み重なり、血の川が地面を染める中、士気が一気に低下する。
「・・・・・・っ!両翼から抑え込みつつ耐えるんです!」
ナザルの声が響くが、化け物の如きふたりの攻撃は容赦ない。
その時、遠くから馬蹄の地響きが響き渡った。聖騎将ロスティスが、騎馬隊を率いてフランツ・アジル軍の背後から一気に襲い掛かったのだ。糧食庫の消火を終え、ようやく合流したロスティスは、状況を即座に把握し、騎兵の機動力を活かした逆襲を仕掛けた。
「突撃するぞ!敵の後背を叩き潰せ!」
数千の戦馬が加速し、槍の穂先を揃えてファニキアの奇襲部隊にぶつかる。馬の体当たりでファニキア兵が吹き飛び、槍が胴を貫く。フランツとアジルは不意を突かれ、背後からの攻撃に一瞬動きを止める。
「蹴散らせっ!」
ロスティス騎馬隊は、ファニキアの奇襲部隊を背後から斬り裂いた。背後を突かれたフランツ・アジル隊は、挟撃していたはずが、今度は自身がナザルとロスティスに挟撃される格好になってしまう。馬上から槍で散々に突かれその数をゴリゴリと削られていった。
「ちぃっ!おまえら、ここは任せた。俺は後ろを立て直す!」
「了解っ!」
「ここはお任せをっ!」
兵たちに任せ後方へと走り・・・・・・。やがて、フランツは馬上で槍を構える騎士に迫る。
「そのオーラの圧・・・・・・この騎士団の将ってところだな」
「貴様は・・・・・・異教徒の頭目か」
「頭目って・・・・・・。なんで、そっちは将で俺は山賊扱いなんだよ?」
「人間扱いしてやってるだけ、光栄に思え!」
「そうかい。んじゃ、騎士団は山賊に負けたって言いふらしてやるよ」
フランツは低く笑い、剣を抜いて迎え撃つ。ふたりの武器が激突し、火花が散る。ロスティスの槍が風を切り、フランツの剣がそれを弾く。馬の突進を活かした連撃に、フランツは紙一重で躱しながら反撃。衝撃波がロスティスの馬を揺るがせ、兜に傷を刻む。ロスティスは歯を食いしばり、槍を振り回すが、フランツの獣のような動きに苦戦する。短いながら激しい戦いは、周囲の兵を巻き込み、膠着状態を生んだ。
アジルも騎兵の波に巻き込まれ、歩兵を再編成する余裕を失う。ここに、誓いの騎士団本隊に空白の時が生まれた。それを見逃さなかった男がいる。
「今です!円陣に組み替えます!外周を盾で固め、内側から槍と矢で応戦せよ!」
ナザルはロスティスの逆襲を好機と捉え、即座に陣形を変える。兵士たちは疲弊しながらも、ナザルの指示に従った。円形の防御陣が形成され、ファニキアの攻撃を分散させる。矢の雨がファニキア兵を削り、槍の反撃で前進を阻む。パトスが単独で突っ込み、兵を斬り飛ばすが、ナザルは予備の盾兵を投入して抑え込む。あるいはナザル自身が剣で迎撃し、時間を稼ぐ。エルザの連携攻撃は凄まじく、ナザル軍の数は急速に減っていくが、ナザルの戦術対応力も並外れていた。
敵の波状攻撃を予測し、配置を微妙にずらして勢いを逸らす。パトスの速攻を矢の集中射撃で牽制し、ギュンターの力技を盾の多層壁で受け止める。
夜の闇が深まり、かがり火の炎が揺らめく中、戦いは膠着状態に陥った。ファニキアの猛攻は波状に続き、エルザの指示が次々と戦場の形を変える。
「今度は左右から挟撃!弓兵は援護を続けて!」
だが、ナザルは毎回カウンターを打ち「左右の挟撃を槍の逆突きで迎え撃て!」と対応。血と汗が混じり、金属の臭いが充満するなか、ナザル軍は朝の光が差し込むまでなんとか耐え切った。エルザの戦略は教皇軍を大きく削り、ナザルを追い詰めはしたものの、ナザルの冷静な判断と即応力がそれを凌駕し、全滅を免れることに成功する。まさに、血で血を洗う激戦となった。
空が白み始め、ファニキア軍の勢いがわずかに鈍る頃、ナザルはようやく息を吐く。軍は大きく削られたが、エルザの猛攻を凌ぎ切ったのは、ナザルの戦術の賜物だった。攻撃継続の限界点を超えたファニキアには、これ以上の継続は不可能だった。夜通し戦い続けた兵士は、精も根も尽き果て、遂に限界を超えてしまう。戦場は両軍の死体の海となり、炎の煙が立ち上るなか、ナザルの退却は成功裡に進み始めた。
※ここまでのあとがき。
長い長い物語も戦いもいよいよ終盤です。読んでる方も精魂が尽き果てそうな展開ですが・・・・・・笑。
ここまで、本来考えていた全体像とは違う展開になってしまいましたが、これはこれで結果的に良かったと作者としては思っております。
今更ですが、ようやく戦場描写や流れが掴めるようになってきたように感じています。戦場の底の方からさらう形の展開を描きたいとずっと思っておりました。終盤も終盤に来て、少し覚醒出来た感じがします笑
あと、もう少しだけお付き合いください。
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