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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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狂気のエレーナ

「・・・ククク。上等だよ、糞どもが。私たちを裏切ったな?おい、ナタリア。ハイデの連中はどこにいる?」


「休息場所はあちらです」


 ナタリアは、陣の脇にある天幕を指差した。


「わかった・・・・・・」


 天幕の前には、物資を運んできたハイデの兵士たちが騒然とした様子で、燃え盛る糧食を眺めている。そこへ、エレーナは剣を抜き放ち単身乗り込んでいった。彼女の身体から、オーラが漏れ出ている。一瞬でわかる。圧倒的な存在感を放つ彼女のオーラは、呆然と炎を眺めるハイデの兵士たちの視線を、無理矢理彼女の方へと捻じ曲げた。もうこうなっては止められない。ナタリアは、ただ成り行きを見守るしかなかった。


「ああ、仕事を終えて、さぞご満悦だろうねえええ?」


 彼女の言ってる意味を察したハイデの兵士たちは、慌てて否定した。


「いえ、違います。決して我々のせいでは・・・」


「申し訳ございません。ですが、我々も何が起こってるのかさっぱり・・・・・・」


「エレーナさま、お気持ちは察しますが――」


 ビキッと空間が割れる音がした。


「コケにしくさりやがって・・・・・・。ごちゃごちゃ、うるせぇぇええんだよ!!」


 最後に話しかけていた兵士の身体が、頭から綺麗に左右に分かれた。見えない恐怖。隣にいた兵士は理解が出来なかった。今の今まで隣で立っていた同僚が、ふたつに割れた。


何をされた?

何があった?

この目の前にいる怒り狂う女将軍が、何かやった、の――!?

突然、兵士の視界が、ずれていき彼の意識は途絶えた。


「てめぇらが!!裏切ったんだろうがぁぁああああああ!!!」


 ハイデの兵士たちが聞いた最期の言葉は、エレーナのこの言葉だった。


 『瞬殺』この言葉以外に、当てはまるものがない。兵士たちの誰ひとりとして、エレーナの剣筋を見ることはなかった。そして、その場にいた十人の兵士たちは、皆ほぼ一斉に絶命した。血しぶきが彼女の顔を染め、狂気の笑みが広がる。


「全員殺せ! ハイデの軍人だろうが、住民だろうが、もう関係ない! 裏切り者は神の――いや、私の敵だ! 国ごと焼き払え!」


 その彼女の号令で騎士団は狂いだした。後方に控えていたハイデの兵士たちに向かって、ヴェロニカの聖槍隊が馬を駆り突撃。次々と槍の餌食とした。


「何が起きてる!?」


「騎士団が、騎士団が俺たちを襲ってるぞ!」


 兵士たちは、状況が理解できないままにバタバタと倒れていった。


 エレーナ率いる誓いの騎士団は、糧食庫の爆発からわずか数時間後、近隣の街セローニャへ雪崩れ込んだ。


 夏の夕暮れが街を赤く染め、遠くの山々が黒いシルエットに変わる頃だった。


 街の入り口に立つ木製の門は、騎士団の重装騎兵が槍を振り上げて一気に破壊。門番の衛兵は叫ぶ間もなく、ヴェロニカの聖槍隊に突き刺され、血を噴きながら地面に崩れ落ちた。


「根絶やしにしろ!」


 エレーナの声が、街全体に響き渡った。彼女は馬上で剣を手に構え、赤い髪が風に揺れる。緑の瞳は完全に狂気に染まり、口元が引きつった笑みを浮かべていた。オーラが身体から漏れ出し、周囲の空気を震わせる。騎士団の兵士たちは、その号令に狂喜した。ガーネット教の「戦いの祝福」を信じる彼らにとって、これは神の審判そのものである。街の中央広場へ突入した瞬間、住民たちは異変に気づいた。市場で夕食の買い物をしていた女性が、最初に悲鳴を上げた。


「騎士団が・・・・・・!なんで!?」


 だが、遅かった。ヴェロニカの聖槍隊が馬を駆り、広場を横断する。槍の穂先が夕陽を反射し、赤く輝く。一瞬で、市場の露店が倒れ、野菜や果物が散乱した。女性は子供を抱きかかえて逃げようとしたが、槍が背中を貫いた。子供の小さな手が、母親の服を掴んだまま、地面に落ちる。血が石畳に広がり、夕陽に照らされて黒く光った。


 逃げ惑う商人、老人が杖を落とし、這いずって逃げようとする。彼女の部下たちは、無慈悲に剣を振り下ろし、逃げる背中を斬りつけた。老人の白髪が血に染まり、杖が折れて転がる。街全体が炎に包まれ始めた。


 騎士団は松明を投げ込み、家屋を焼き払う。逃げ惑う住民の悲鳴が、夜空に響く。子供の泣き声、母親の絶叫、老人の呻き——すべてが混じり合い、狂気の交響曲のように広がった。エレーナは馬上で高らかに笑った。


「これが・・・・・・神の祝福だ!ハイデの裏切り者ども、全員神に捧げるわ!」


 炎が街を飲み込み、黒煙が空を覆う。セローニャの街は、一夜にして地獄と化した。住民の血が石畳を赤く染め、焼け落ちる家屋の爆ぜる音が響く中、エレーナの笑い声だけが、狂ったように続き——ハイデの運命は、この瞬間、決定的に変わった。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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