341
そこは通学路にも指定されている少し道幅の広い十字路だ。
十字路にはコンビニやファミレスの駐車場があって、空間はそれなりに取れる。
入り組んだ『住宅街』の道なので、周囲に高い建物がなく、ヒーロー側戦闘員たちはNPCが戦闘領域から外され無人になった車両などを盾に戦闘員たちが散開していた。
『ヴィーナスシップ』はまとまって動く方が華があるはずだが、俺たち『りばりば』に散々やられた教訓があるからか、自分たちのトラックに留まる愚は犯さず、包囲陣形を保ちながら移動攻撃を行っている。
この道は物流上、重要な道路でもあるらしく、トラックなどが多い。
ある意味、ヒーロー側戦闘員が車で増援を派遣しにくい地形でもある。
今、我らが怪人『セイレーンプリンター』と敵ヒーロー『ピーチフラワー』、『フレイムキグナス』はファミレス駐車場を中心に戦っている。
上空から戦況を確認しながら飛ぶ。
「なっ!?」「肩パッドだ!」「撃ち落とせ!」
相変わらず、俺へのヘイトは天井知らずだ。
一瞬でも『セイレーンプリンター』へのヘイトが逸れるなら利用しない手はない。
俺は少し考えて、やはり上を取った方が有利ということで、ファミレス屋上に復活石をばらまく。
「イーッ!」「イーッ!」「イーッ!」
と有志の戦闘員たちが次々とポータルで跳んで来る。
俺は敵のヘイトを稼ぐように上空旋回して、時折【炎の鷹】と【氷の梟】で敵戦闘員に牽制を入れる。
「肩パッドめ!」「アイツを残すとろくなことにならないわ!」「ヒーローに近づけるな!」
俺、嫌われすぎじゃないか?
分かっていても、この対応はヘコむ。
特に『ヴィーナスシップ』のアイドル候補生たちの汚物を見るような目は、結婚すらしていないのに、「お父さんのパンツと一緒に洗濯しないで!」的ダメージを俺に与えてくる。
悔しいので、『ビームチャクラム』を【エレキトリック・ラビット】の落雷で撃ち落としてやる。
本来なら、投げて落ちてから自動的に手元に戻ってくる『ビームチャクラム』が、
回路を壊されて落ちていく。
これなら自動的に戻らないだろう。
俺は上空で高笑いをする。半ば悲しい自分を慰めるためのポーズだ。
どうせ嫌われているなら、これくらいやらないと割に合わない。
「ゐーゐっゐっゐっ!」
「きもいんだけど……」「くそ! 笑ってんじゃねえ!」「いやらしい……」
いや、別にいやらしくはないだろう。
そう思っていると、『ペリカン飛行団』のやつに撃ち抜かれて、俺は死んだ。
───死亡───
いつのまに来たんだ?
復活して周囲を見回す。
徒歩で増援が増え、俺たちは次第に囲まれていっていた。
そこまで俺たちに勝たれたくないか。
俺は大声で、敵襲を示すように叫びながら、あちらこちらへとスキルを放って、注意を促すのだった。




