340
白鳥のエンブレム。怪電波でも受信しそうな前衛芸術を思わせるアンテナ。無駄に鋭角的なフォルムの『白鳥座星団』と書かれた車に鉄槌が振り下ろされた。
走る車の前に飛び出した『セイレーンプリンター』が放った【竜骨砕き】だ。
『セイレーンプリンター』の腕の動きに合わせて、数トンはある量の水が上から落ちた。
『白鳥座星団』の車は、前半分が完全に潰れてしまっていた。
車から這い出した『白鳥座星団』戦闘員は、素早く横合いから囲んだ『りばりば』戦闘員たちの渾身のフルスイングに襲われた。
「「「イーッ!」」」
だが、残念ながら画面で見る限り、『白鳥座星団』戦闘員は、俺たちが憤りを感じた人物ではなかった。
「次、行きますンター……」
『セイレーンプリンター』を筆頭に、戦闘員たちは風の様にその場を去った。
そうして三台、四台と車を潰して後、ようやくそいつは顔を見せた。
「くそ! ふざけんなよ! 特注のこの車、幾らすると思ってんだ!」
「さあ、知る必要はないですンター!
それは大人に殴られた子供の心の傷と比べられるものなんですンター?」
「はあ? なに言ってんだ!?」
「そう、それくらい私も興味が無いことですンター!」
「「「イーッ!」」」
『りばりば』戦闘員たちが横合いから出てきて、『ショックバトン』をフルスイングしようとした時、一斉に『ビームチャクラム』が飛んで来た。
飛来する円月輪に次々と撃ち抜かれる『りばりば』戦闘員たち。
「そこまでよ! いきなり方針転換して、パトロールチームの車を襲い出すなんて、『りばりば』もダサくなったもんね!」
『ヴィーナスシップ』の横開きトラックの荷台に並ぶアイドル候補生のような戦闘員たちの中心、一人、私服姿の一際目立つ女性が立っている。
「邪悪を退け、神気を注ぐ、無限のフレッシュ、魅惑の甘み……変身!
ピーチフラワー!」
濃いピンクの花が咲く。
アイドル候補生たちが私服姿の一人を囲むように、桃の枝を振りながら舞う。
中心の光が収まった時、白桃の薄ピンク、桃の花の濃いピンク、黄桃の黄色を白いドレスにあしらった『ヴィーナスシップ』のヒーロー。
『ピーチフラワー』が立っていた。
「くそ、大手に手柄を取られてたまるか!
太陽の炎、今、この手の中に!
変身!
フレイムキグナス!」
『白鳥座星団』の子供に手をあげる最低男が、一枚のカードを手にすると、腕に金属製の手甲が現れる。
そこにカードを差し込み、そいつは変身した。
白鳥をイメージした、白い鎧にファイアーパターンの意匠が施された鎧の戦士『フレイムキグナス』だ。
「くっ……ヒーローが二人いるンター!」
大部屋では戦闘員たちが戦いへの熱で殺気立っていた。
「場所特定。グレンさん、急いでください!」
「ゐーっ!」
俺は応えて、ポータルから『住宅街』へと跳んだ。
それから、オオミが全員に声を掛ける。
「久しぶりの作戦行動だ。各員、奮闘を期待する!」
「「「イーッ!」」」
大画面で『セイレーンプリンター』が復活石をばらまいたのを皮切りに、今日の作戦行動に選ばれた戦闘員たちが、一斉にポータルへと飛び込むのだった。
「ゐーっ!〈【炎の翼】【氷の翼】!〉」
俺は建物の影で本性を現し、『りばりば』戦闘員姿になると、背中に二対の翼を生やした。
手には地図と復活石を入れた袋を持っている。
「ゐーっ!〈待ってろよ! すぐに行ってやるからな!〉」
背中の翼にMPを集中させ、俺は現場に急行するべく、スピードを上げるのだった。




