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大変遅くなりましたm(_ _)m
睡眠不足にならないように、皆さん気をつけましょうね 汗
ようやくヒーロー側が気付いた。
今日、俺たちが『作戦行動』を起こしているのは『住宅街』。
ここのパトロールをやっているのは大規模レギオン『ヴィーナスシップ』と中規模レギオン『白鳥座星団』が受け持ちになっている。
だが、結果的に『りばりば』の『作戦行動』に気付いたのは小規模レギオン『ペリカン飛行団』の戦闘員だ。
狙われたのは公園で大道芸を披露しながら『ご免罪符』を配っていた一団だ。
『ペリカン飛行団』戦闘員が大道芸人たちに銃を突きつける。
「おい、そこの怪しいやつ、何をしている!
まさか怪人じゃあるまいな!」
怪人レギオンかどうかを確かめるために銃を突きつけるとは、かなりイカれたヒーローレギオンだ。
もし、一般人だったらどうするんだ。
だが、『ペリカン飛行団』のやつらは、そんなことお構いなしに銃を向けていた。
「子供たち、下がりなさい。
我々はコイツらと話がある」
言われて、子供たちが『ペリカン飛行団』の後ろに回った。
「よし、まずはその手にしているものを渡してもらおう!」
『ペリカン飛行団』が横柄な態度で言うと、声が響いた。
『ごーめんなーさ〜い♪ ご〜めんなーさーい♪』
「今だ、逃げて!」
『ペリカン飛行団』の後ろに回った子供たちが『ご免罪符』を『ペリカン飛行団』に使ったたころだった。
言われるままに大道芸人たちは逃げ出した。
まさか、子供たちに助けられるとは……。
だが、これで『ペリカン飛行団』に俺たちの悪事がバレた。
『ペリカン飛行団』は職務質問前にお互いにチャットでやりとりをしていたのである。
また、彼らは自分たちに起きた現象がスキル効果によるものだと、ログを確認して知った。
悪いことは更に続く。
『ペリカン飛行団』は小規模レギオンらしく、ヒーローが未だにいないパトロール専門で稼いでいるレギオンだった。
この情報は、すぐに『ヴィーナスシップ』と『白鳥座星団』へともたらされた。
その場では大道芸人たちと子供たちが綺麗に逃げおおせたが、子供を集めるあやしげな大人たちとして『住宅街』で一斉捜索が開始された。
『住宅街』のあちらこちらで似たような逃走劇が繰り広げられ、『白鳥座星団』の戦闘員は、『ご免罪符』を貼ろうとした子供を殴った。
「公務執行妨害だぞ、ガキ!」
その場にいた『りばりば』戦闘員はキレて、正体をあらわし、『白鳥座星団』の戦闘員に掴みかかった。
これでウチが関与していることがバレた。
『白鳥座星団』の戦闘員は『りばりば』戦闘員を射殺した。
「見てみろ! コイツら悪の組織の戦闘員だぞ!
コイツらを庇うと、お前たちもタダじゃ済まないぞ!」
その上で子供たちに投げかけた言葉は、冗談だとしてもトラウマレベルのものだった。
『りばりば』基地、『大部屋』にリスポーンした戦闘員が事の次第を『セイレーンプリンター』へとチャットで知らせた。
まだ寺の境内を借りて行われている人形劇テントはバレていなかった。
今回の作戦の司令官オオミは『セイレーンプリンター』に逃げて、日を改めるように指示を出した。
今、逃げてしまえば、作戦形態を少し変えて、もう一度感情エネルギー集めができるという判断だった。
だが、『セイレーンプリンター』はそれを拒否した。
「子供を殴るなんて許せないンター!
白鳥座星団には報いを受けさせるべきンター!」
『りばりば』は自由を標榜する怪人レギオンだ。
オオミは「分かった」と言った。
リスポーンした戦闘員がオオミに詰め寄る。
「なあ、俺に復活石を売れるだけ売ってくれ!
今までのボランティアポイントも全部吐く。
子供を殴る白鳥座星団に思い知らせてやりたいんだ!」
これもオオミは了承した。
「糸、幾つ出せる?」
「復活石は……ボランティアポイントも換算して、出せて五個ですね。ただ、それでもかなり高価になりますよ?」
素早く計算を済ませた糸が説明した。
リスポーンした戦闘員が金額にもじもじし始めた。
「魔石は各自の持ち寄り、ボランティアポイントはつけられません。それでもいいですか?」
糸は更に条件を出した。
リスポーンした戦闘員の義憤に駆られる姿は全員が理解していたし、オオミも糸も、組織として大盤振る舞いする訳にもいかない。
それがギリギリの条件だった。
「ゐーんぐっ!〈復活石の金は俺が出す! 後は自腹の魔石で何人参加できるかだ!〉」
俺は手を挙げた。
「グレンさんが復活石代は持つと言っています。後は参加者ですね。
魔石は自腹で多く出せる人から参加を受付ます!」
糸が声を張り上げた。
正味、旨味の少ない臨時作戦だ。
義憤に駆られたやつだけが集まればいいと俺は思った。
「七個出す!」「俺は八個だ!」「十個だ、勝ちに行こうぜ!」「十二個出す!」
あちらこちらからセリ市状態で声があがる。
復活石に登録できる人数と魔石には限りがあったはずだ。
それに魔石は基本、いつでも自腹なので、五人が各五個の魔石を登録して、復活石一個として扱うのが基本だ。
魔石の数はある意味、各人の怒りの大きさでもある。
糸が大画面を見守る戦闘員たちから一人、一人をチョイスしていく。
さらに糸はリスポーンした戦闘員と俺を呼ぶ。
「あなたたちは確定で参加できます。参加されますか?」
俺たちは頷いた。
魔石は一人七個までと決められた。
糸は魔石に余裕があるやつを優先的に参加させようという心算だったらしい。
たしかに、そうでもしないと、いざ抽選に受かったものの魔石がありませんとなると、悲しいからな。
こうして、義憤に駆られた精鋭二十五名が集められた。
「グレンさん、この復活石、運んでいただけますか?」
「ゐーっ!」
俺は答えた。
参加が決まったところで、素早く『核︰ウィング』はロッカーに入れて来た。
大画面では『セイレーンプリンター』とボランティア参加の戦闘員たちが『白鳥座星団』の戦闘員を探して動き出していた。
戦闘開始に合わせて、俺はそこに急行するのが役目だ。
俺たちは固唾を呑んで、戦闘開始を待つのだった。




