冥土の土産をメイドの土産と思っていたのは俺だけではないはず
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「チェリー君、ここまで、頑張ったご褒美に俺の能力を教えてあげる」
彼は、変なものを見るような顔をしている。
こちらの様子を伺っているようだ。
「俺の家系は代々肉屋だったり魚屋の家系でな。血抜きって知ってるか?
血が全身にまわって、死んだ時に死後硬直してしまうのを防ぐために締めることだ。
そのままにしていると鮮度や味が落ちたり、残った血が血斑ってのが出来て見た目も悪くなる。
俺の家系は能力のおかげで血抜きがとてもうまいんだよ。
ここまで、いえばわかるよな。俺の能力は血液を操ることだ。こんな風にな」
ブシュウウゥゥゥ
さっき切った、チェリー君の傷口から勢い強く血しぶきがとぶ。
勢いはいいが、最初だけであとは垂れるだけだ。
「まぁ、そのくらいの傷では今のが限界かな。
ちなみにこの能力は自分にも使えて、最初にチェリー君に撃たれたところも能力で出血を抑えているんだよ」
「もしかしてその見た目にその能力お前、賞金首の人切りの青兵か」
「お、子どもでも知ってるのか。もしかして俺ってすごい有名人か?」
「前に父親の書類でみたことがある。
殺した人間のほとんどが切り傷からの出血が原因で死んでいることからや
切った瞬間をみた人から切られた人が大量の血しぶきを噴いて倒れたと証言があったこと、
そして見た目が侍っぽいことからマスコミやネットで『人切り』って呼ばれるとみた。
」
へぇ、俺って世間ではそう呼ばれているのか。でも、今はそんなこと関係ない。
チェリー君、俺のこと賞金首って最初に言った…。
ここでピンチなら普通なら賞金首なんて言葉なんて最初に出て来ない。まず、畏怖する『人切り』の二つ名が出てくるはずだ。
まだ、チェリー君は俺に勝てると思っているようだ。
「待たせたな、これで戦える」
チェリー君は、チェリー君は持っていた投擲武器の紐で腕を縛り上げていた。
血管を圧迫して出血を抑えているのだろう。
そして反対の手にはナイフが、まだ武器を隠し持っていたのか。
「準備できたなら、行くよ」
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チッ、また防がれた。
最初に切りつけた時も反応できていたことから、予想はしていたが、
もう数分間は切り合っているが、泥沼化している。
単調な攻撃はすべて避けられ、フェイントには能力を使われ距離を取られる。
避けずらい攻撃はナイフで防がれ、回り込んで行こうとすると、攻撃して牽制してくる。
ナイフ片手とはいえよくやる。
これは、チェリー君は戦闘技術が高いというより、刀の攻撃に慣れているな。
普段から速い攻撃で目が慣れているのかな。それも私よりも速い太刀筋を見ている。
「守ってばかりでは、勝てないよ」
「そうでもない。時間が経てばたつほど、こっちが有利になるからな。
俺は、あんたを倒す必要はない。逃げ切ればいいんだ。
ここまでやりあえば流石に通報はされるだろう」
「なんだ、そんな期待か、大丈夫だよ。俺の経験測ではまだ、当分は来ないかな。
元からここは治安が悪くて、人があまり住んでいないところだ。
まだ、通報もしていないんじゃないかな。それこそ、死体が出来上がるまでね…」
そんな淡い期待をしていたとは、チェリー君には、ちょっと残念だ。
「気が緩んでいるよ青兵。傷口から血が垂れてるぞ。やはり、その能力は限界があるんだろ?
能力の強弱はかなり練習が必要だ。俺も手元に道具を引き寄せるのにかなり苦戦した。
弱すぎては手元まで来ないし、強すぎては自分の後方まで飛んでいってしまう。
かなり神経を使う作業だ。俺の能力はほぼ一瞬の作業だが、あんたのは永続的だろ。
ましてや血管だ。血流の流れや向きを意識しながらは、相当の負担だ。
傷口は発砲で3ヶ所…いや一発は貫通して、4か所だ。
ボーラで殴られたところも出血しているから計5か所。
戦闘しながらは流石に限界だろう、その証拠に途中から段々と血の垂れる量が増えている
そろそろ限界なじゃないか?」
チェリー君、正解だ。私の能力にも限界がある。そしてそれがもう近い。
「でもな…隠し技は君だけのもんじゃないよ。
血液が操れるということは、自分の心拍数を上げてこんなことができるんだよ」
この技は、私の技の中でも最速の攻撃。
下手すれば心臓に多大な負担をかけるが、チェリー君にはこれを使うだけの価値がある。
このスピードは避けられない。
「それも予想済みだ」
そういうと、チェリー君は紐で縛った腕を上げた。
そして、その手の中には、小さな袋があった。
「竜宮城(仮)からの玉手箱(仮)だ。」
そういうと袋が破れ、白い粉が充満する。
目くらましか…でも
「残念だったな。俺は普通の人より血の匂いに敏感なんだよな」
チェリー君はかなり後方に下がっている。
粉が自分にかからないように風向きを変えているのだろう。
でもおかげで匂いがわかる。
「これで終わりだよ」
俺は一直線にチェリー君のところに向かう。
バンッ
「っ」
背中から胸にかけて痛みがやってくる。
胸から大量の血液が流れる。
振り向くとそこには、浮いていた拳銃がコトンと落ちた。
「正面からは流石に避けらるからな。
さっきも言ったけど、能力の強弱って難しいし、維持するのは繊細な作業だ。
だから、慣れた地面から胸の高さまで落とした拳銃を浮遊させ、あんたを誘導していい位置で撃たせてもらったよ。
当たるかは博打だったけどね。まぁ、外れても牽制ぐらいにはなったでしょう」
これは…やられた。ここまでやられたのは久しぶりだ。
「もうその傷じゃあ、動けてもさっきの技は使えないでしょう。
では、俺はこれで、俺も警察には関わりたくないからね。あばよ青兵」
チェリー君はそういうと、背を向け立ち去っていく。
距離を取り、勝ちを確信したのだろう。隙だらけだ。
甘い、甘すぎる。殺し合いの世界で、これは致命的だ。
例え相手が死んでも警戒するぐらいでなくては、いけない。
だから…。
ザクッ
「ガハッ!?なんで…」
今回はしっかりと切れた。
チェリー君は切られた背中に驚いていた。
そうだろう、今も俺はさっきの場所から動いていないのだから。
「冥土の土産に教えてあげる。チェリー君は若いから知らなかったかもしれないけど、
能力は、成長すると別の似たよう能力が増えるんだよ。
その境地に達した人を覚醒者と呼んで、自慢ではないが、俺も覚醒者なんだよね。
ちなみに俺のは能力は血の操作で覚醒して血を硬くすることができるんだよ。
ちなみに今、チェリー君を切ったのは、俺の血だよ」
その言葉を聞いた後、チェリー君はふらりと川へと倒れ込んだ。
ドボンッ
重い体を引きずり、駆けつけると川には、チェリー君はいなかった。
「能力で水の勢いを上げ、流されて逃げたか。
下流に行っただろうが、匂いもわからないな」
深手を負わせることが目的の俺と最初から逃げることが目的だったチェリー君の戦闘は、
互いに痛み分けで終わった。
「この粉…ペロッ…麻薬じゃねぇか」
警察が来る前に俺も逃げるか。
でも、チェリー君とは、また近いうちにあえそうだな。
俺の勘はよく当たるからな。
正直、長くなった。
ぶっちゃけ、前回で終わらせる予定だった。