プロローグ
皇国歴217年 皇国首都 タカマガハラ
約200年前に魔族の侵攻を退け繁栄を謳歌していた皇国は、一夜にして地獄と落とされた。
見渡す限り全てが焼け落ち、焼け落ちた残骸の下には息絶えた人影、生き残った子供も泣けば首を刎ね飛ばされる。
まさにこの世の地獄。
伝統と革新が融合した大陸でも屈指の美しい都は、今や見る影もない。
そんな皇都から馬車に乗り、遠ざかる一団があった。
「若!今は逃げることだけお考えください!」
「民を置いて逃げることなど許されん!」
馬車内で、成人もしていないであろう少年と白髪が混じる壮年の男がいい争っている。
「聞き分けてください。タカマガハラには大旦那さまが残ってらっしゃいます!」
男が荒げて息を静め、深く息を吸い続ける。
「万が一、大旦那さまに何かあればお家を継ぐのは若様です」
「それはわかっている!だが家を継いでも守るべき民が失われたのでは意味がない!」
「皇都以外にも守るべき民はいます。若様が考えるべきは、領地に帰りこの火種を消す手筈を整えることです」
「しかし皇王陛下や皇都に何かあれば、皇国は大きく傾く。そうなると建て直しがどれだけ難しいことか」
「そうならぬよう大旦那様を始め、大大名のお歴々が出陣されています。皇国最強のあのお方たちならば、あの悪鬼を容易く追い払うことでしょう」
「・・・。そうだな、お祖父様や大叔父様たちなら。領地に帰り吉報を待とう」
話し合いが終わり、二人の背中からは色濃い疲労が伺えた。
一行は領土に向けて馬車を走らせた。




