↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/87

ジオの夢 五十五話 眠

オレは北の都に戻っている。屋敷の書斎からの張り出し台に居る。祖父が気に入って使っていた揺り椅子に腰掛けている。揺り椅子を揺らし、空を見ている。祖父が、何故この椅子が気に入って座っていたのか、今なら解る気がする。最近は突然の眠が多くなっている。普段居る場所にも気を使うようになった。


寝ている間に夢を見ている。目が覚めたオレには分からない夢だ。見たことの無い巨大な家々が、隙間もなく建っている町並みだ。緑が感じられない。不思議というより、けったいなとしか言いようが無い。現実はどちらにあるのだろう・・・その中に、解らなくなるかもしれない。祖父様はどんな夢を見たのだろう・・・


『お目覚めですか?』と、ベルンハルト殿が笑っておられる。

ベルン殿が笑われるとは珍しい。

『はい。何とか戻れたようです。また、不思議な夢をみました。』と笑う。

『それは・・・シンシア様からのお伝言で御座います。我が母が言っておりました。鮮明な夢は思い出してはならん。夢に囚われ、戻れなくなると。お気をつけ下さい。との事です。』と、深刻な顔をされる。

『ご忠告、胸に刻んでおきましよう。』

『で、御用は如何な事でございましょう?』


『はい。アラゴン王の件で御座います。』とベルン殿が言われる。

オレは黙って聞いている。

『ヴァイスより出た気配がありません。未だヴァイスに居るものと思われます。』

『そうですか・・・引き続きの監視をお願い致します。』

『はい。』


ーーーーーーーーーーーー

レイ様が眠に就かれて、もう五日目に入る。大広間の一角に御簾が添えつけられ、寝台が置かれている。レイ様は、そちらで寝て居られる。もし今日もお目覚めにならねば、明日には遺言の準備をしなければならない。そして・・・


大広間には多くの支族を代表する方々が集まられている。山の民の方々、シュペルゲンの方々、四候家の方々。我が母シンシアも来ている。皆、会話をする事も無く、ただ只管、眠りから醒められるのを願っている。明日にはレイ様の命を受け兵を編成し、アラゴンとその傍らにいるミク教徒を殲滅する為に、ヴァイスの領都を包囲しに進軍する。


レイ様の遺言は教主である現アラゴンの当主・・・いつから成り代わったのか不明であるが・・・ミク教の教主で僧正と呼ばせている者であるのはわかった・・・と、その緑の衣装を着た教徒達の殲滅だ。九日経っても眠より戻らぬ場合は、それを実行する事になる。


宗家の当主の容体が悪いのではと言う噂が、西方地域に広まっている。噂の出処は分からないが、宗家では特に気にしていないようだ。明日になれば、別の噂が囁かれる事になるからだ。


・・・宗家の当主が危篤状態だ。当主の遺言は、もし自分が亡くなった場合には、直ちにアラゴンとミク教の殲滅、また匿う者達の懲罰をするように、と指示しているとの噂だ・・・これで、今後ミク教を匿うものは居なくなるだろう・・・


レイ様が眠に就かれて、七日目の朝だ。各包囲部隊の指揮官がレイ様の屋敷を出て行く。ヴァイス家の領都を包囲するための進軍だ。私も十二万のうちの一万五千の兵を指揮する。それぞれ、八方向から包囲し、ミク教徒及びアラゴン当主の脱出を防ぎ殲滅する。


私は、指揮する兵の前に立つ。

『レイ様は今眠られている。このまま眠に就かれたままであれば、後、三日で身罷られる事になる。レイ様の遺言である。もし、私が死ぬ様な事が有れば、私の葬儀の前に、ヴァイスに居るミク教徒とアラゴンを名乗るミク教の僧正を殲滅せよ。今までの戦乱は、全て奴らの仕業である。殲滅し戦乱の元を絶て。と。よいか、未だ、レイ様が御亡くなりになった訳では無いが、レイ様のご遺言を果たすには今から進軍せねばならない。兵力は十二万、八方より包囲し逃がすこと無く殲滅する。レイ様がお目覚めの場合は白い鷹が舞う。その場合は包囲を解き、帰還する。さよう心得よ。』


宗家各地より、夜にヴァイスを目指し、進軍して行く。私が率いる一万五千も進軍を始める。頭に黒の布を巻き、誰も話すこともなく、物思いに更けりながら進む。

・・・まるで死者の行進のようだ。


九日目の朝には包囲が終わった。脱出する者達を取り調べながら、明日の午後には街の中へ侵入する予定だ。ヴァイス家においても、兵を四つの門に散開させている。しかし、戦意は無い。

我等は包囲したまま、静かに待つ。騒ぐ者はいない。レイ様のご回復を祈っている。


シュニッツァー殿、レーベン殿、ミュンツァー殿、ジンツァー殿が街の中へ突入する。私、オーレンドルフ殿、マイザー殿、メルダース殿が脱出者を捕獲する。打ち合わせは十分にした。次は時間を待って進軍するだけだ。


正午を過ぎた。時間だ。指揮下の兵に命じる。

『残念だが、時間が来た。進軍・・・』

『ユリア様。白い鷹が・・・』と、声が聞こえる。

その声で北の空を見る。

鷹が舞っている。円を描いている。

『ああ。間違いない。レイ様が戻られた。我々も戻る。』

歓喜の声が上がる。皆、頭に巻いた黒の布を取り去る。

良かった。涙が頬を伝う・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。