ジオの夢 五十四話 ガイ
ロンバニア公の屋敷の前にて、案内を待っている。
また、ロンバニア家を訪ねる事になった。
中から出て来られたのは、ワーレン殿だ。
流石に、ワーレン殿も苦笑されている。私も苦笑するしかない。
『ギル様は、只今、クロノ殿と戦譜の最中でありまして、傍らでお待ち頂くことになりますが、よろしいですか。』と、ワーレン殿が言われる。
『はい、勿論でございます。これはレイ様から、ワーレン殿とシュヴァルツバルト殿へと。最近、少々手に入ってたのでお裾分けと申されておりました。勿論、ギル様にもご用意しておりますので、ご安心をとの事でございます。』と、大きな包みを二つ渡す。
『これはこれは、レイ様にはよしなに。』と顔がにやけられている。
人を呼ばれる。その者に、くれぐれも割ることが無いように、と注意して渡される。
私の連れには興味がないようだ。
『こちらの方々は・・・』と、私がきり出すと、ワーレン殿は手で制され、何も言われない。
良いの・・・誰か聞かなくて・・・
そのまま歩き出され、建物の中へ入って行かれる。私も、二人に付いて来る様に手招きし、歩いて行く。
ワーレン殿はギル様の寝室兼執務室へ向かわれる。
ワーレン殿も、我々もギル様の部屋に入る。部屋の奥、寝台の傍らに、ギル様とクロノ殿が何かを挟んで座っておられるのは見える。
『ワーレン、何だしつこいぞ。後にしろと言ってるだろう。』と、ギル様の怒りを含んだ声がする。ギル様はこちらを見ない。
流石に慣れない、ルイーズ殿とオーギュスト殿はそわそわされている。
『ギル様。ユリア殿がお越しですが、後程に、とお伝え致しますが、宜しいので?』と、言われる。
『馬鹿を言うな。すぐ会える。』と、ワーレン殿を睨まれる。
私がいるのが分かると、微笑んで下さる。
『おお、ユリア殿。ユリア殿ならいつでも歓迎だ。今度は直接声を掛けてくれ。すれば、言い訳をせずに済む。』と笑われる。
『ユリア殿。レイはどうした?』
『はい。体調が優れず、領内よりの外出を禁止されております。』
『そうか・・・それは困る・・・』 と考えられている。
何が・・・こまるのだろう・・・
『ギル様。レイ様が、最近手に入ったので、半分をギル様にと申され、持って参りました。』と、私が大包をみせる。
『おっ、済まんな。そろそろ、コンスタンチンに手紙を書こうと思っていた。』と笑われる。
『で、わざわざユリア殿を寄越すのだ、面倒事か?』と、ギル様は楽しそうだ。
『はい。レイ様の命により、今日、ここにお連れ致しましたのはリューリヒトの現当主ルシール様と執事のオーギュスト殿にございます。で、領地の交換をご希望されております。』
『だろうな・・・』と、ギル様は、ルシール様を見られ、オーギュスト殿を見る。
オーギュスト殿は、会釈をされ、目を伏せている。ギル様は値踏みをされるように、オーギュスト殿を見られている。
ほう、ギル様はオーギュスト殿に興味を持たれたか・・・
『オーギュスト。お前、何が得意だ?』とギル様が聞かれる。
『地政学、財政学であれば、多少は。』と答えられる。
『ふーん。オーギュスト、お前なら先代を止められたろうに、何故止めなかった?』
『・・・オーランは泣いたのです。年甲斐も無く。子供がいるから勘弁してくれ。今後は二度と兵は向けない。だから今回だけは、子供に免じて助けてくれと。真に迫っておりました。そう言われて、先代は頷いておられました。そうなると、先代は、何を言っても聞かれておりませんでした。』
『縄を解き、約束を忘れるな、と先代が言われました。すると、オーランめは、今後は無い、当たり前だ。お前はここで死ぬんだからな、と言って先代の首を絞めたので御座います。』と、オーギュスト殿が言われた。
『そうか、オーランは泣き落としか・・・』と言われる。
『はい。レイ様のように、人の本質を観られる方は、そうはおられません。』とオーギュスト殿が言われる。
『レイは、首を落とすために隙を見せたと、ワーレンが言っていたな。落とすと決めたら、躊躇はないからな。』と笑われる。
『クロノ、お前なら交換してやるか?』と聞かれる。
『得になるので有りますれば。』とクロノ殿が返される。
『うん、交換するのはかまわないが、ガイがなんと言うか?ガイに遣ってしまったからな・・・』と、考えられている。
扉が開く。大きな男が入って来る。
『兄。れいが来たか?』と、ガイ殿の声だ。
『ユリア殿だけだ。』とギル様。
『おっ。ユリア殿、よう来られた。レイはどうした?』
『はい。少々具合いが悪うございまして・・・』
『進んだか?』
『二日に一度でございます。』
『そうか・・・難儀だな。』とガイ様がこまった顔で言われる
『ガイ様。レイ様よりの伝言でございます。』
『?』と云う顔をされる。
『ガイ、約束を覚えているか?ユリア様に頼んだ女性がいる。ルイーズ様と言われる。この方は人の心根が解られる。そしてこの方の心も美しい。ガイが心より願えば、生涯の連れとなって下さる方だ。心からお願いしろ。さすれば叶う、との事でございます。』と、私はガイ様を見る。
ガイ様は、顔が赤い。珍しく、はにかんでおられる。嬉しそうだ。
『ユリア殿。そうか、この方か?』と、ルイーズ殿を見られる。
ルイーズ様も、ガイ様を見られている。
『ガイ様、よろしくお願いたします。』と言われる。
これには、皆が驚く。
私も驚いた。ロンバニアに来られ、始めて話される。
道中、オーギュスト殿より、お嬢様は少々変わっておられるから、気にせずに願いたいと言われていたが・・・
『レイでは無く、俺で良いのか?』とガイ様。
『はい。レイ様は、確かに特別な運の方であられます。しかし、私とは縁のない方でございます。しかし、ガイ様とは、今のガイ様のお気持ちで、縁が出来ました。』と。
『兄、いいか?』
『ああ、好きにしろ。』
『ユリア殿、レイに、オレも頼むと言っておいてくれ。』とギル様が言われる。
どうであろうかと、思うが・・・これはレイ様への依頼だ。私には、係わりがない・・・




