ジオ 第二部五話 アレン
ジオ達はまだムエルタにいる。ジオは迷っている。南に行かねばという気持ちと、アレンを探さねばと言う気持ちが拮抗している。そのため、ジオは動くに動けずにいる。
『ジオ、いつまで世話になっているの。ご迷惑よ。取りあえず帰りましょう。』とレディティアがジオに言う。
『母者。どうしてよいか決められん。・・・母者の言う通り、帰ることにする。』とジオ。
夜半に、ジオはテントを飛ばす。新たにネフェルティが加わる。
ジオは、昼間にネフェルティとサイファーに一旦戻る事にする、世話になったと話をした。ネフェルティは是非アレンに会って聞きたいことがあるから、一緒に連れて行って貰えないかと言った。
ジオは、ネフェルティが加わる事に否とは思わないが、やはり、レディティアの確認を取る事にする。レディティアがジオのする事に異は唱えないが、それでもジオは、母であるレディティアの考えは気になる。
レディティアは
『ええ、勿論構いませんよ。ベロニカ様もお喜びになるでしょう。』と言って許可をした。
ジオは思う。
・・・また前に戻ったようだ。しかしオレだけ若いのは何故だ?そうだ、まだ森の者に聞いていなかったな・・・
テントはノルデノルンの上空に着く。ノルデの防御を何事もなく抜ける。白い壁の屋敷は夜でも白く見えている。その屋敷の裏庭に音も無く降りる。
いま、ノルデの屋敷に居るのは四人だ。ジオ一行は大広間に入る。四人が居る。
四人は、顔が青い。何かあったか・・・ジオ達に気付いてもいない・・・
『エレナ、ルミナどうした?戻ったぞ。抱いてくれないのか?』とジオ。
『ジオ。戻って来てくれたのね。』と、ルミナとエレナの声が重なる。
二人が泣きながらジオを抱いている。
ジオは二人に抱かれながら、ハーとホーに聞く。
『ハー、ホー。何が有った?』
『はい。ここ数日の事でございます。夜になると、上空で雷が光り、ここノルデの・・・坊の張られた結界を破らんと向かって来るのです。時間的にはー分程なのですが・・・その威力は凄まじく、まるで、何時でも破れるぞと威していようなのです。今日も、そろそろ始まる頃合いで、皆でここに集まって、無事終わるのを願っていたのです。』
『我ら二人では及ぶべきもない力なのです。』
『そうか。では何故、オレに連絡せん?』
『はい。それは勿論致しました。しかし、何処にも通じ無いのです。何度も試しました。しかし駄目なのです。ですから見張られているのではと思い、出る事も怖ろしかったのです。』と二人は顔を伏せている。
『それは、済まなかったな。怖ろしい思いをさせて。しかし、オレの結界はオレでも破れん。安心しろ。それに理由は分かっている。だから、それも今日で終りだ。』
『ゼルト、腹が減った。何か作ってくれ。』
『ああ、分かった。しかし大丈夫なのか?』
『ゼルト。オレは嫌味は言うが、嘘は言わん。だろ?』
『ああ、坊の嫌味は強烈だ。嘘のほうが良い・・・』と調理場へ出て行く。
ジオは思う。
・・・ちっ、ゼルトめ、後でお仕置きをしてやる・・・
『坊、いけませんよ。顔が悪くなってますよ。』とサラ。
ジオはおでこを両手で抑え、レディティアを見る。レディティアはジオを見ない。エレナとルミナを慰めている。
ゼルトの科理は旨い。肉を薄く切り、軽く焼いてタレを浸けたものだ。他にサラダとスープだ。食べ終わる。皆も満足だ。四人は少しは不安が取れたようだ。
いきなり、雷光が煌めきノルデノルンの上空が煌き始める。皆が庭に出て、それを眺める。
一本、二本、三本。また、一本、二本、三本。それが続く。 夜空が昼間の空と化す。雷光はノルデノルンの一定の高さに当たり、消える。また、光る。そして消える。
『これか・・・』とジオ。
皆もその雷光を見ている。
『大したことはないわね。』とベロニカ。
『ええ、スーフェンで見た坊の雷光に比べたら見劣りするわね。』と、ネフェルティ。
『つまらないわ。』とレディティアも言う。
『た、大した事はないのですか?』とハーが聞く。ホーは言葉が無い。何か言おうとしたのか、口を開けたままだ。
『ええ、坊の出す雷光は、あれの輝きも、大きさも十倍は有りました。坊のお仕置きに比べたら乳飲み児の戯れ言に過ぎせん。』と、サラ。
それを聞いて、エレナもルミナも安心して雷を見ている。
ハーとホーが言うように、一分程で雷光が止む。
『誰だ?何の用だ?』とジオが空中に聞く。
『ここの主か?凄いな。昔の儂でも破れんな。』
『ああ、オレが五人いても破れんようにしてある。で?』
『頼みがある。』
『そうか。開けてやる。降りて来い。顔を見せろ。』
『ああ。』
女性がゆっくりと下りて来る。
皆が顔を顰める。顔はあのメイレンだ。しかし、表情はない。
『アレンか?』
『儂を、知っているのか?』
『オレは知らん。しかしアレン派の奴がアレン様の気配だと言っていた。』
『アレン派か・・・かもしれぬ。しかし儂は死んだ。今は残滓だ。』
『その残滓が何か用か?』
『石が欲しい。砂漠の守護者が持つ石と同等の石だ。』
『その石で何をする。』
『儂が作った結界を消す。』
『消して何をする?』
『そこに入れれば、残滓を消せる。』
『お前は消えたいのか。』
『儂が消えねば、盟約が発動せぬ。発動せねば、生まれ地が浄化されぬ。』
『そうか、アレンの奇跡は生まれ地の命か。』
『お前は何故分かる?恩師の生まれ替わりか?』
『オレはファラーではない。ファラーの日記を読んだだけだ。しかしファラーは、アレンお前の事を心配していた。アレンは純粋だ。しかし、考えが足りんとな。』
『そうか、恩師はそう考えられていたか・・・しかし、我らは何かを得るには、何かを出さねばならぬ。ラングルトンは命を得るために心を出した。イランジャは砂漠の平穏を得るために、自分の平穏を差し出した。儂は奇跡を起こす為に生まれ地の命を差し出した。それは、儂が死ねば生まれ地に命が戻るはずだった。』
『その力を教えたのはファラーではないだろう。誰だ?』
『南の不可侵の者と呼ばれていた。今は居ない。我らに教えた後、どこかに行った。』
ちっ、騙されたか、それとも仕組まれたか・・・
『アレン、お前が消えたら、器はどうなる?』
『器はもともとラングルトンだ。それをオレが消した。だからオレが消えれば消える。』
『そうか、これをやる。』とジオは袋から石を出す。
その石は黒い漆黒の石だ。
『良いのか。これは・・・』とアレンが驚く。
『ああ。オレには使い道が無い。生まれ地を元に戻せ。』
『坊と呼ぶがいいか?』
『ああ。好きに呼べ。』
『坊ならどうした?もしイランジャであったら?ラングルトンであったら?そして儂であったらどうした?』
『簡単な事だ。オレは己を知っている。人には分というものがある。己に過ぎたことはしない。例え、上手く出来たとしても、人の無理に為したことはいつかは戻る。本来のあるがままにだ。だから、あるがままを変える事は、無益であり無駄にしかならない。これで答えになるか?』とジオ。
『恩師と同じ事を言うのだな・・・』
『儂は行く。感謝する。会えて良かった・・・』と皆に聞こえていた声が、段々と小さくなっていく。
『先代、聞かなくて良かったのか?』とジオがネフェルティに聞く。
『ええ、聞きたい事は分りました・・・でも、今更どうでも良い事ですね。』とネフェルティ。
『ああ、多分そう思う・・・』とジオ。、




