ジオの夢 四十七話 対峙
シュペルゲンには、皆様が満足されるまで滞在した。そして、北の都に移動する途中に、シュニッツァーにも寄る。シュニッツァーでは婆様がお元気で、オレの来訪を喜んで下さった。
婆様とカリーナ様が、戦はどうであったかと心配される。
『婆様、カリーナ様。お陰様で、この通りぴんぴんしております。』
『ぴんぴんは良いが・・・まだ続くのであろう?』と婆様が言われる。
『はい。 大きな戦いは二つと云うところではありますまいか?』
『まだ二つもあるか・・・』
『しかしながら、小さい戦いは幾つもありましょう。』
『・・・』
オレは北の都の東の屋敷に移動する。やはり、シュペルゲンの西の屋敷は、敷地の広さも、敷地の中の屋敷の配置も、そして、庭の配置も造りも此処と全く同じだ。関心する。よく同じに造ったものだ。うっかりすると、何方にいるか勘違いする・・・
今は、書斎にいる。書類を見ながら、うとうとしている。また、夢をみた・・・そのオレのいる世界では、戦は無いのか、剣を身につけてはいないが・・・
人の気配がする・・・目を細めて見る。ベルンハルト殿が居る。ゆっくりと伸びをする。
『何か有りましたか?』
『シュターフ殿が兵を起こされ、ツェンダーを葬ったようにございます。』
『そうですか・・・意外と早い展開でございましたね。』
『はい。他の方々の総督の任が刺激になられたのでしょう。それに、ユリア殿が旅団として参加しておられた様ですが・・・』
『そうですか?代金は貰えるのでしょうね。』とオレが笑う。
『それは大丈夫でしょう。』とベルン殿。
『クロノ殿は動きそうですか?』
『はい。準備は終わっているようですが・・・何かを待っておられるご様子。』
『アラゴンのオーランに騙され、皆が乗るのでしょうね。』
『やはり、アラゴンが動きますか?』
『ええ、ギル兄はそれを楽しみに待っているようです。』とオレが北叟笑む。
『レイ様もそれをお待ちのご様子のようにお見受け致しますが・・・』と。
『いえ、アラゴンなどはどうでもよいのです・・・緑の坊主共が出て来るか、それとも何処に隠れているか分かれば・・・居場所がわかれば捻り潰せますからね。』と笑う。
『レイ様は緑の男達が余程お嫌いなのですね。』
『私が狙われたと云う事はありますが、ご先代様達の申し送りですから、機会があれば潰さないと。』とオレは嗤う。
『その恐ろしいお嗤いはお止め頂いたほうが良いかと・・・』
ガイの笑い顔のほうが怖いぞ・・・
アラゴンのオーランは、兵を編成しオーロフ家に進軍して来た。勿論、オーロフ家も兵を十万用意しオーランに加わる。今回用意して来た兵は六十万に及ぶ。懲りない男だ。コンテッサ、レイズ、プラッターの各家も参加している。
各家は自分が家を失うとは考えていないのか・・・可哀想なことだ・・・
オーロフ家は、先代もカトーも参加していない。オーロフの当代が血気盛んなようだ。ロンバニアなど恐るるに足らんと、息巻いていると聞く。
オーロフの当代はロンバニアに恨みでも有るのか・・・
オレは兵六万を連れ、レアンドロ領を通らせて貰い、南辺街道からロンバニアに向かう。
更に、別兵を北の山々の麓を抜け、クロノ領の境界に二万を送る。それぞれ一万をシュニッツァー殿とユリア様に預け、兵符を出している。
別兵は、クロノ家がロンバニア領もしくはシュターフ領侵攻の合図がありしだい、境界を越え、街を包囲する。抵抗がある場合は排除する。さらにクロノ家がロンバニア領に入った場合には一万を残し、一万でクロノの背後を突く。クロノがシュターフ領に侵攻した場合には、ロンバニア家の兵が来るであろうから、到着次第二万の兵で、シュターフ領に入りクロノ家と対峙する。それが別兵の役割である。
ロンバニアと我らは十四万の兵を率い、シュターフが取り返した領地のオーロフ家との境界内に布陣している。
ガイが六万の兵を率い、南部中央街道を通り、コンテッサ領、アラゴン領他を落としていき、コンスタンチン回廊へ進軍する予定で、我らはギル兄二万と我ら六万の兵にてオーロフ家からヴァイス家に進軍を予定している。
勿論、進軍する我等の前に六十万の兵が存在する。その六十万の兵をオーラン殿が統率するようだが、実際はコンテッサ家が二十万オーロフ家が十万レイズ家、プラッター家が各五万。オーロフ殿は二十万を指揮するに過ぎない。ガイが左翼コンテッサから中央オーランへ、ギル兄の二万とオレの率いる六万で中央オーランと、右翼オーロフそして、後背のクロノに当たる。オーロフ家の領地は平坦だ。特に戦略は無い。クロノ家の兵八万は、今はシュターフ家領に北から侵入しているが、どこか落ち着きがない。
後ろにユリア様、シュニッツァー殿の兵が到着したようだ。意外と早い。もうクロノを落としたのだろうか・・・
『レイ様。クロノ殿が陣より消えた模様にございます。』と、ベルン殿が表れると、言われる。
『そうですか。では、ベルハーレン殿が兵を纏められるでしょう。意外とあっさりした方ですね。クロノ殿は・・・』
『人心の掌握には、時間が足りなかったのでしょう』と。
オレはギル兄の馬車に馬を寄せる。
ギル兄は、最近はベッドから下りないようだか、戦に来るとは思わなかった。それも大きな豪華な馬車で来るとは・・・
馬車は四方が開いており、涼しそうだ。丁度、風も心地よい
『ギル兄。聞かれましたか?』とオレ。
『ああ。つまらん奴だ。この戦いも楽しく無くなったな。』とギル兄。
『戦いは楽な方が良いでしょう?それより、クロノ殿には興味が湧きませぬか?随分と先が見えるお方のようですが。』
『確かに、レイの言う通りだ。よし、捕まえて遊び相手にする。レイ、見つけても首を刎ねるなよ。』とギル兄。
楽しそうだ・・・長生きするには、楽しい事を見つける事だ・・・ギル兄にはまだまだ生きて頂かないと・・・
ワーレン殿が、オレを見て近づいて来られる。
『レイ殿。此度はお手数をお掛け致します。宜しくお願い申す。』と、笑って言われる。
『本来、我等など必要有りませんでしょうが、トレドのお返しはいたしませんと。』と笑う。
『そうだレイ。酒がそろそろ切れると騒いでいる奴がいたが、また、調達は出来るか?』と、ギル兄が笑う。
『もう、切れるのですか?流石に作る量が少ないので、今年は無理でしょう。』と、ワーレン殿を睨む。
ワーレン殿は知らん顔をされておられるが・・・
『そうか、レイでも今年は無理か・・・』と、何故かギル兄が残念そうだ。
そうか、兄でもワーレン殿やシュバルツバルト殿からは奪えなかったか・・・
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『これは、クロノ殿。お早い退去ですな。』と、タイレル殿が言われる。
今、一人戰場を抜け出し、タイレル家の屋敷まで来た。背負うものも無く、今まで一人でやって来た。全てを捨てても惜しくはない。
『ああ、命あっての物種だな。』と。俺は答えておく。
死ぬのは構わない。自分で納得し、行った事なら・・・しかし人の掌で踊らされ、挙げ句に死ぬのは我慢できない。
『タイレル殿も人に踊らされるのは性に合わないのではないか・・・兵を出していないところを見ると・・・』
『ああ。特にオーランには我慢できない。ヴァイスならともかく・・・』と、タイレル殿の顔が仏頂面に変わる。
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四十二話、四十三話
ザルツァー → バルツァー に訂正




