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10話:エピローグ

 新聞。それはメディアの一種であり社会に対する影響力は絶大である。そんな新聞の一面に大きく掲載された記事。書かれていた内容は連続殺人事件。しかしただの連続殺人事件が起きただけでは通常の場合、記事の一面に大きく掲載されることは無い。連続殺人事件を行っている悪者ヴィランが多数存在するためだ。


 今回取り上げられた事件は死因がどれもが銃弾が存在しない銃創を受けたことによるショック死と同一である。被害者の1人がとある大物政治家であるという点が大きく報道される原因となった。そして世間はこの殺人事件に注目した。殺人事件により共通しているのは死因だけではなく、世間一般的に悪人と言われる人物であった。


 例え悪者ヴィランなどではなく、悪人でなかったとされていてもネットを介して、被害者の悪事は拡散された。この連続殺人事件の被害者は総数19人。今回の犯人は悪者ヴィランではない犯罪者、しかもネットにより悪事を拡散された犯罪者に対して執拗に攻撃的だった。悪事をこれでもかと並べ、丁寧に全ての証拠を載せていった。状況証拠だけでなく、確定的な証拠まで。


 世間には称賛する声、否定する声、消極的な賛成、中立的な意見と賛否両論だった。世間は一気に注目し始めた。悪を殺す悪。どんな人間が犯人なのか。手口は一体何なのか。どうやって証拠を集めている?


 考察が妄想を呼び、妄想が虚言を呼ぶ。真実と嘘が入り乱れ、何が本当で何が嘘かが分からないほどだった。そんな今回の事件。元々、この事件を知っていた一部の人間が叫び始める。彼は悪者ヴィランを、犯罪者を恨んでいると。自分は昔からこの事件を知っていた。追っていた。そう主張し始めた。そして彼らは犯罪者に名前を付けた。“復讐者アヴェンジャー”と。


 世論は止まらない。悪は裁かれ続け、捕まらない。悪を殺す悪。裁いた人数は19人。裁かれる人間は悪人のみ。”復讐者アヴェンジャー”は止まらない。


だが、いかに悪人しか裁くことは無かろうと捕まえようとする者がいる。警察と異能統括機構だ。警察と治安維持部隊の合同捜査会議が今再び開かれる。


 捜査会議を行うために収集された人数は軽く50人を超える。警察官の他にも治安維持部隊から選出された捜査官が半数の割合で存在する。その人の中にはいつき一夏いちかもいた。樹は最初から捜査を行っていた為だ。一夏は友人の父が今もなお意識不明の重体である怒りと樹を捜査に入れるように上に促した責任感からだった。

 因みに樹が今回の事件に割り振られた理由としては一夏が働きかけたという理由も存在するが、根本的には樹の親が原因と言っても良かった。


 そんあ樹と一夏が出席している捜査会議は多数の人が収まるホールで行われた。多数の視線が集まる中、口を開いたのは桜井さくらい翔琉かけるだった。桜井は”狼男”に次の犯行予想場所を教えた結果、”狼男”が重症に陥る事態となっても落ち込み過ぎるという事はなった。持ち前の心の強さで捜査に精を出していた。そんな立花が今回の事件について最初から概要を捜査会議にて話していく。改めての認識のすり合わせだった。


 話を聞く捜査員達は既知の情報であっても話をもらさず聞き続ける。それが捜査に役立つと信じて。そして桜井は事件の概要については話し終えると、捜査方法について説明を行っていった。人数が増えたことによる人員の再編成が必要であったからだった。

事件発生場所、事件が起こると予想できる場所、近隣住民への聞き込み、ネット等、ありとあらゆる方法で捜査を行おうとしていた。


 そして桜井は犯人の正体について、現在推測できる情報を少し躊躇いがちに話す。


「今回の事件の犯人。世間では”復讐者アヴェンジャー”と呼ばれている犯罪者ですが……。共犯者、もしくは複数犯の可能性があると考えています」


 桜井の考えに驚きをあらわにする捜査員達。桜井の口調は大人数であり、気を使わなければいけない人物もいる為、自然と口調は丁寧になった。


「それはどうしてですか?」


 今まで沈黙を守っていた捜査員の1人から疑問の声が上がる。

 桜井は疑問に対して当然だと頷き、返答する。


「それは8件目。……”狼男”が重症を負ってしまった事件です。その前後では犯人の手口が変わっていると思われるからです」


 立花はモニターにスライドを表示させながら言葉を続ける。


「8件目までの犯人は、悪者ヴィラン警報を元に犯罪者を殺していたと思われます。悪者ヴィラン警報に載っていた情報を元に殺害を実行していたと思われます。しかし8件目以降の犯人は悪者ヴィラン警報に載っていない、情報すらつかめていない悪者ヴィランや犯罪者を殺害し始めました。ましてや政治家を殺害しています」


 そこまで説明を行うと捜査員の中にも桜井が言いたいことが理解できたように頷き始める人物がいた。


「そして犯罪を実行する場所に着いても異なります。8件目までは廃墟など人通りが少ない場所、警備がほとんど存在しない場所のみですが、9件目以降は警備が存在している場所もあります」


 相違点をスライドに並べ続け、桜井は話を続ける。


「この事から現状、複数犯、もしくは共犯……そしてなりすましがいると思われます。しかし私の考察はあくまで考察ですので……。あらゆる可能性を捨てずに捜査を行っていきましょう」


 そう桜井は話を締めくくった。捜査員達は桜井の話をかみ砕きながら捜査会議は終了した。これから社会に影響を及ぼし始めている犯罪者を捕まえる為に。それぞれが信じる正義の信念に基づいて。


 “復讐者アヴェンジャー”と呼ばれる犯罪者と捜査員達の戦いの火蓋が切られた。


一旦、更新停止です。書き溜めたら更新すると思います。


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