異形なるパレード
過去英雄開始時点:始道歴809年
↓
外伝開始時点:始道歴409年
異形の怪物はただゆっくりと歩こうとしている。
ただ山一つ分の大きさが故に、歩くだけで建物は潰れる。
(おそらく、あれは世界樹によるもの、皆さんもそれには気づいている)
(アレの本体はおそらく頭から下半身にかけての本体…)
(違ったとしても、少なくとも脚は下半身から再生成された)
(なら下半身を叩けば脚の生成は止まる)
エドガーは屋根の上に乗り、異形の方を向く。
エドガー「ダーリンさん!キスティスさん!ゲヘナさん!」
エドガーは声を大きく張り上げ、3人に聞こえるように言う。
エドガー「まずは下半身を狙ってみてください!」
ダーリンはエドガーの反対方向におり、キスティスは地上、ゲヘナはダーリンと共に居た。
ダーリン「下半身か!了解!」
ゲヘナ「了解したよ!」
キスティス「すみませんが!私は少し別行動をします!」
そう言うと、キスティスは前屈みになり短剣をクロスし構える。
キスティス「……」
『いい?フェニシア、素早くダダダッてやる時は一回止まるんだよぉ』
『片脚に力を集中して、ただ前に進むことだけを考える』
『それで、気が付いたら到達してるんだよ』
キスティス「ッ疾風迅雷!」
瞬間……
ドォンッ!!
大砲のような衝撃音が街中に響き、周囲のガラスが一斉に吹き飛ぶ。
ダーリン「…なんでフェニシアが使えるんだ?」
キスティスは異形の怪物の少し後ろに居た。
キスティス「…この世界樹、見た目は違うけど…」
その時、キスティスの身体に異変が起きる。
キスティスの手が、ゆっくりと白骨していく、ただそれに痛みはない。
キスティス「っ…やはり!」
キスティスは自身の身体が完全に変わってしまう前に再度異形の怪物の前に行く。
ドォンッ!!
またもや街は衝撃音に包まれる。
本来近くに居て何度もその音を聞けば、少なくとも耳鳴りがする。
だがゲヘナ、ダーリン、エドガー、そして一番音を近くで聞いているキスティスでさえ、耳の異常らしきものは感じない。
ダーリン「…こんな音でも、慣れちまったって感じるのは、もう人間やめてるか」
ダーリンは異形の怪物の下半身の上に乗る為、丁度いい位置まで歩きながらそう考えた。
キスティス「皆さん!この怪物の後ろに行っちゃダメです!」
エドガー「それはどうしてですかッ!」
ギィィィィンッ!!
異形の怪物の脚を止める為、脚を下ろすその時に弾き返す。
だが異形の怪物はそれでも体勢を崩す気配はない、天使のような翼を使ってバランスを取る。
キスティス「こいつは!パレードの一つです!」
キスティス「この怪物はパレードリーダー!」
キスティス「パレードの行列を先導する存在です!」
キスティス「この怪物よりも後ろに居る生物は皆等しくこのパレードの行列へ組み込まれます!」
ダーリン「パレード?、なんだその世界樹?」
エドガー「……なるほど、随分と面倒な事になりましたね」
エドガー「普通の人であればこの怪物の速度には追いつけない、王都の国民ほぼ全て怪物にするつもりですか」
(パレード…過去に戦闘はしたことがありますが、ここまで異形な存在じゃなかった)
エドガー「パレードの魔女と言うならファシオンな…」
その時、パレードリーダーが大きく翼を広げ、顔が裂けるように口が現れる。
エドガー「…っまずい!皆さん!翼をなんとかして斬り落としてください!」
エドガー「下半身より翼が優先です!」
(あの行動を完遂させてしまえば…)
エドガー「パレードリーダーの翼が光り始めた瞬間!ここらの辺りは火の海になります!!」
その声を聞いたダーリン、キスティス、ゲヘナは一斉に翼へ攻撃を仕掛ける。
Sランク以上の存在にとって、翼はなくとも高くジャンプすると言うのは容易い事。
ダーリン「野蛮流一斧術…」
翼の位置まで飛び上がり、斧を横に構える。
『カルディナ、斧は基本一撃一撃を重くしろ』
『特に俺の斧は一撃が重くなるように設計されてる、連撃で考えるな』
『お前には斧の才能があるって思うがな』
「野蛮な一撃ッ」
ダーリンの一撃は空気を裂き、まるで斧が巨大化したような威圧感を持ち、翼ごと胴体まで断ち切る勢いだった。
バギィィン!!
確かな手応え。
だが……
刃は途中で止まった。
翼は異様に硬かった。
食い込みはしたものの、一本一本の羽毛が翼を守る鎧のように硬かった。
ダーリン「これでダメってアダマンタイン何個分使ってんだよ!?」
その時、ゲヘナが真上に高く飛び上がる。
ゲヘナ「硬いのは槍の十八番でね!」
ゲヘナは二又の槍へ力を入れる。
ゲヘナ「技:冥王の翼ッ!!」
ビジューンッ!
ゲヘナが投げた二又の槍は黄色い炎を纏う。
ズギゥゥン
バイデントは翼と胴体の付け根を狙い、直撃した。
パレードリーダーの胴体には大きな風穴が空き、翼は今にももげてしまいそうになる。
エドガー「それだけやってくれたのなら…」
エドガー「私も少し良い所を魅せたいものですね」
エドガーは抜刀の構えを取る。
(一直線…翼の付け根が私から見て一直線になった瞬間…)
ドォンッ…
ドォンッ…
パレードリーダーが歩く度に地響きが鳴る。
………
エドガー「今ッ!」
エドガーは真っ直ぐ翼の付け根を狙う…がしかし
??「あらら〜w随分と楽しそうじゃない?」
??「仲間外れはよくないなぁ…俺も仲間に入れてくれないと〜…」
??「技:超嵐空砲」
―――
――――
―――――
エドガー「っ?!」
気づかなかった。
狙われているなら少しの殺気でも気づけた。
だが気づけず、それは10kmも離れた場所から放たれた。
(避けられはするが…避ければ…)
この手を止めれば翼は斬れない。
既にパレードリーダーの顔は天を仰ぎ、取れかけの翼は祈りを捧げるかのようになっている。
あの祈りが完遂すれば辺り一面は火の海になる。
エドガー「……クソ…」
ピュン……
パァァァァンッ!!
その瞬間、一軒の家に何かが吹き飛ばさ
れた。
ダーリン「シェン!!」
キスティス「シェンさん!!」
だが…
ビュオッ!
キィィィンッ
金切り音のような音が街中に広がる。
その金切り音から一瞬遅れて、片翼がゆっくりと地へ落ちながら粒子になっていく。
ドサッ…
エドガー「………」
エドガーの姿は煙の中から現れる。
抜刀の勢いによって、エドガーはダーリンの隣に立っていた。
ダーリン「シェンさぁん?!」
ゲヘナ「ん?それじゃあ、吹き飛ばされたのは…」
崩れた建物の煙がゆっくりと晴れていく。
その中から、一人の男が自身の大剣を気にしながら歩いてくる。
??「チッ…無駄に威力のたけぇ技使いやがって…」
それは先程子供達を守った白髪の男だった。
男の持っている大剣は少し刃毀れしており、先程のレールガンを代わりに受けたということがわかる。
??「だがこれでまたあいつらに守られちまったな…」
白髪の男は翼を再生成し始めているパレードリーダーには目を向けず、先程レールガンが飛んできた方向へ目を向ける。
??「随分と怖がりだな?」
??「そんなに遊びてぇなら、こっち来いよ」
大剣の刀身は、男の言葉に呼応するように欠片となる。
そして、現れたのは一本の槍だった。
??「技:崩壊する体」
男の矛先はレールガンの飛んできた方向に向けられる。
??「対象は、ニゴルヘスタだ」
男は槍を天高く投げる。
―――
――――
―――――
ニゴルヘスタ「あちゃ〜、止められちゃった?!w」
ニゴルヘスタ「中々やるじゃない?、俺の最大出力を止められるのは気に入らないけど…」
静まり返った建物の上で、ただ静かにその光景を見ている。
ピカンッ…
遥か天高く、一筋の光が見えた。
ニゴルヘスタ「ん?」
ニゴルヘスタ「…あ〜、カロリン?もしかしてこっちに何か飛んできてる〜?」
誰も居ない屋根の上で、虚空に向かい話しかける。
ニゴルヘスタ「…あ、やっぱり?これっt…」
シュン…
バァァァァァンッ!!
ニゴルヘスタの立っていた建物は崩壊し、石畳で作られた道には大きなクレーターだけが残った。
―――
――――
―――――
遠くで小さく爆発音が響く。
それと同時に、無数の欠片が男の手元へ飛んできた。
それは脚を両断した時と同じように、一振りの片刃の大剣に再構築した。
??「なぁ!そこの3人!」
男はダーリン、キスティス、エドガーの方を見る。
??「さっさとこのパレードリーダーを潰すぞ!、終わったら話がある!」
エドガー「…分かりました!!」
ダーリン「シェンさん、今のグングニル…」
エドガー「…えぇ、まだ今の時代ではグングニルは発見されていないはずです」
キスティス「彼が子供を助ける時に言っていた技名…あれって」
エドガー「………」
三人は互いに男の正体を少し考えた。
本来まだ発見されていないはずのグングニルやネフェルタリアスという技名。
エドガー「本当、今回は特異点が多いですね」
ダーリン「随分とゴツくなってないか?あいつ」
キスティス「そうですね、昔はもう少し細かったと思いますが」
エドガー「とりあえず、翼の再生成が終わる前にパレードリーダーを壊しましょう」
ダーリン「けど、あれキリなくないか?」
エドガー「…少し、街の被害を恐れない覚悟でやってみるしかなさそうですね」
キスティス「…私の知ってるパレードリーダーの再生成は、魔女本体がパレードを終わらせない限り止まりませんでした」
エドガー「…ではどこかに魔女が?」
キスティス「可能性はあるかと」
ダーリン「なるほど、人探しか…それなら任せてくれ」
エドガー「何か策が?」
ダーリン「…ちょっとな、バカの力を借りる」
ダーリンは目を閉じ、何かに集中する。
『…俺はお前たちを裏切った。その事実は変わらない』
『俺はこの選択を後悔してる、だからその絶望を俺に向けてくれ、カルディナ』
『…俺ができる贖罪は、残されたお前に力を貸すだけだから』
(目には見えない、そんな風に思ってたのはもう何億年も昔だろ)
(見るものじゃない、感じるもの、その感覚を思い出せ…)
カルディナの頭に、まるで見えているかのような情報が流れてくる。
街中、巨大なパレードリーダー、全てが真っ黒に見えるその世界の中で、色の違う場所…
ダーリン「っ!灯台下暗しだな!」
ダーリンは斧を構える。
エドガー「見つかりましたか?」
ダーリン「あぁ、シェンさん達のエーテルがデカすぎて視界が真っ黒だったが…」
ダーリン「魔女は、パレードリーダーの中にいる」
ダーリン「それも、一番デカい下半身の中だ」
エドガー「それでしたら、やっている最中に再生成されても面倒です」
エドガー「皆さん、少し手荒な真似をしましょうか」
キスティス、エドガー、ゲヘナも同様に武器を構える。
キスティス「まぁ…魔女を捕まえて、世界樹を解除させるのを考えるのなら…妥当でしょうか」
ダーリン「国王に弁償求められても俺は無視するからな」
ゲヘナ「フフ、まぁ、もしそうなったら私が話をつけておこう」
白髪の男は四人の意図を理解しているのか、パレードリーダーの足止めに徹している。
男の武器は大剣から2本の短剣に再構築されていた。
ゲヘナ「…あの武器、少しあとで見せてもらいたいものだ」
四人は各々、下半身への攻撃を集中させるべく移動する。
ゲヘナ「私が起点を作る!君達はその起点を叩いて下半身を壊すといい!」
大きく声を上げ、皆に伝わるようにゲヘナは言った。
ゲヘナは両足に力を一点集中する、そして瞳はパレードリーダーにある。
ゲヘナの瞳は、少し心の内に重い炎を乗せていた。
ゲヘナ「私はね…少し怒ってるんだよ」
ゲヘナ「わざわざ逃げる猶予を与えるふりをし、人間が集まったところを一点に叩く…」
ゲヘナ「それも、子供が集まっている場所に…」
ゲヘナ「実に…不愉快だ!」
ゲヘナの二又の槍は、ゲヘナの感情に反応し禍々しさが増す。
ゲヘナ「バイデント、これが私の武器の名前だよ」
ゲヘナ「この名を、我が奥義と共に刻むがいい!!」
ゲヘナはバイデントを天へ掲げる。
ゲヘナ「我は生す者である!」
ゲヘナ「我は死したが、見よ!、永遠に生きている!」
ゲヘナ「そしてこの手には冥府王の槍を持っている!」
刀身が燃え上がる。
赤い炎はバイデントの刀身を包み。
青い炎は燃やし尽くさんと殺意を込める。
そして…
黄色い炎は全てを焼き尽くさんと揺らめく。
ゲヘナ「奥義:冥府の権威!!」
バイデントの持ち方を変え、全身を使いパレードリーダーの下半身へ投げる。
バイデントは下半身へ刺さる、そして刺さった場所を軸に高速で回転し始めた。
周りの皮膚を巻き込むかのように下半身の奥へ奥へと進んで行き…
それはアエトーンとは比較にならない程の風穴を下半身に開けた。
この時点で、パレードリーダーの下半身には、脚の付け根が抉り取られるほどの巨大な風穴を開けていた。
エドガー「パレードリーダーが倒れます!」
完全に再生成しきっていない翼と、一気に崩壊した下半身。
その巨体を支える事が出来なくなったパレードリーダーは、ゆっくりと傾き始めた。
ダーリン「やっと地上で攻撃できるなッ」
ダーリンは助走距離を空け、それを待ってましたといわんばかりに武器を構えていた。
ダーリン「俺の一撃を止めてくれたお返しだ」
走る。
どんどんと速度を上げ続ける。
常人なら肉体が耐えられない速度に達してもなお、ダーリンは目の前にあるパレードリーダーの下半身へ向かう。
ダーリン「お前の下半身は翼より硬いか確かめて見るかッ!」
大きく飛び上がり、下半身へ大斧を叩きつけた。
大斧の刃が下半身へ触れた瞬間。
刀身全体が圧縮されていた衝撃を一気に解き放つかのように激しく震え始める。
ダーリン「野蛮流一斧術奥義…」
ダーリン「戦士の斧ッ!!」
ブルルルルルルゥゥンッ!!
大斧が、1秒にも満たない僅かな間に数え切れないほどに振動する。
圧縮され続けた衝撃は刃へ集約され、触れた瞬間、一気に解き放たれる。
ガガガガガガガガガッ!!
硬く鎧のような羽毛は、異様なその振動によって砕かれ始める。
やがて…下半身は魔女を守る機能を失っていた。
「その顔見せてみろォ!!」
助走で得た速度。
大斧の質量とダーリンの腕力。
刹那に万回と繰り返される振動。
その三つが重なり…
ズガァァァァァンッ!!
パレードリーダーの下半身は耐えきれず、爆発のようにして崩壊していった。
ファシオン「っ?!」
ファシオン「私が想像した最高強度なんだけどなっ?!」
完全に隠れる場所を失ったファシオンは、日の下に晒される。
ファシオン「……ハハ、私のパレードリーダーってそんな脆かったかな?」
ダーリン「いや、十分硬すぎるぞ」
ファシオンは会話の中、片手を使い何かをしようとした。
その時……
ドォンッ!!
キスティス「捕まえました」
ファシオン「っ?!」
振り返ろうとした。
だが既に自身の両手は掴まれ、反抗しようにも圧倒的な力により何もできない。
そして次の瞬間には首に冷たく滑らかに感じる刃が触れていた。
エドガー「世界樹を解除してください」
エドガー「でなければ命はありませんよ」
エドガー「死んでも解除しても、パレードリーダーは消える」
エドガー「聡明なご判断を」
そんな中でもゆっくりと下半身が再生成され始めている。
だが、ただの小石かのようにこの再生成は壊される。
ドコォンッ!!
蹴り飛ばされ、石ころのようになった羽毛は、砕け散り粒子となり消えていく。
??「終わったか」
??「にしても、随分とカッコいい奥義だな?青髪」
ダーリン「……青髪っていうのは結構他人行儀じゃないか?」
ダーリン「イズルト」
その言葉で白髪の男は歩みをとめる。
イズルト「そうか…」
その顔は、嬉しさや悲しさ、後悔が入り混じった複雑な顔だった。
イズルト「…久々だな」
「カルディナ」
「シェンさん」
「フェニシア」
三人はその言葉を聞き…
キスティス「…お久しぶりです。イズルトさん」
エドガー「まさか、貴方も居るとは思いませんでした」
カルディナ「ホントな、絶賛勢ぞろいみたいなもんだろ」
イズルト「……たった四人じゃ、勢ぞろいには程遠いだろ」
イズルト、四人目の転移者
ゲヘナ「感動の再会な所、申し訳ないんだけれどね」
ゲヘナ「その魔女、世界樹を解除する気はないように見えるけれど」
キスティスに拘束されたファシオンは、一向に世界樹を解除する様子はない。
エドガー「…なるほど、では仕方ありませんね」
エドガーは容赦なく刃へ力を込める。
だが…
ファシオン「少し、考えてごらんよ?」
ファシオンは殺されることを意にせず、エドガー達へ問いかけた。
ファシオン「…ちょっと声は聞こえてたけど…」
ファシオン「私のパレードリーダーは本来、後ろに居る生物をパレードに組み込む…」
ファシオン「なのに、なんで東門から来たと思う?」
ファシオン「真反対から出せば、東街ぐらい丸ごとパレードにできたのに」
―――
――――
―――――
現在地:王都ハルマーシュ/東街桜ノ旅館
現在時刻:18:30
ウィンターズ「ダーリンさん達…大丈夫っすかねぇ…」
桜ノ旅館、ここには大勢の人が逃げ込み身を寄せていた。
ウィンターズ「にしても…よく知ってたっすね、ホントあの人達」
何故ここに大勢の人が逃げ込んだか。
それは…
??「………はぁ、なんでこうなるかな」
甲冑を身に纏い、ハルバードを持った細身の男。
その男が、桜ノ旅館の入口を護衛していた。
??「とりあえず、下手な輩が来たところで相手にならない」
??「安心して、どこか身を隠せる場所にいてくれ」
一般人A「り、竜騎士様!お願いします!あの魔女共をさっさと殺してください!」
竜騎士「あぁ、言われなくともそうするしかない」
それを聞き、一般人は皆自身の不安を消すように話始めた。
一般人A「クソッ…あいつら…何が慈悲があるだよ…」
一般人B「ホントね…やっぱり魔女は恐ろしいわ…」
一般人C「何が愚者共だ!、気色悪い真似しやがって…あいつらなんか第三の力がなきゃただの女だろうが!」
一般人E「そうだ!あいつらはただ自分の能力に頼ってるだけのカスだ!」
一般人A「っ…本当に気色悪い…なんで俺達がこんな目に遭わなきゃいけねぇんだ」
一般人A「そもそもなんであの最厄の魔女モルガンが生きてんだよ!」
一般人B「そうよ!なんで火炙りにして生きてるのよ!」
一般人B「おかしいじゃない!神への冒涜よ!!」
一般人C「っ…やっぱりあいつら…天国に行けないよう灰になるまで焼いておくべきだったんだ…」
次第にその会話はエスカレートし、避難所は魔女に対する罵詈雑言の嵐に包まれた。
一般人「やはり本格的に魔女狩りを実施すべきだわ!」
一般人「何故国王は正式な魔女狩りを実施しない!」
一般人「あいつら!俺や他のやつの子供を全員殺そうとしたんだぞ!」
その罵詈雑言の嵐の中、ウィンターズはただそれに唖然としていた。
ウィンターズ「……最厄の魔女」
彼女たちに向けられる罵声や怒号は止まない。
その中、ウィンターズは何故魔女がこのようなことをするのかを考えた。
(アルテマ様は俺達を同じ生命として作ったのに…)
(どうしてこんな事に…)
その疑問は、一つの結論にたどり着いた。
(魔女が恐れられてるのは第三の力があるから…)
(……でも、よく考えれば…第三の力は先天性のものだよな…)
(もし…俺が第三の力を持って生まれて、それを知らずに生活して…)
(ある日突然第三の力が出て、それで家族諸共火炙りにされたら…)
(俺は…モルガンやファシオン、グロワルのように…ならないって言えるのか…?)
そう考え続ける度に、ウィンターズの心は次第に魔女達の感情を想像するようになった。
産まれ、平和に暮らしていてもある日突然「魔女」と呼ばれ。
愛した者を一番残酷な方法で殺される。
顎が砕けるほど歯を食いしばり。
皮膚が焼け爛れる痛みに耐え。
ただ永遠に神へ理由と許しを請う。
そして奇跡的に生き延びたとして…
自分の力を利用して復讐しないと、本当に誓えるのだろうか?
ウィンターズ「……無理だ…」
小さい一言、しかしそれは避難所内の罵詈雑言で掻き消された。
だがその罵詈雑言も、一人の男の声によって止まることになった。
??「皆さん!少しよろしいですか!」
帽子を被り、マフラーを厚い首に巻いた一人の男。
マフラーの上には写魔像器がかけられており、手にはメモ帳と鉛筆が握られている。
??「私はマズダ新聞社のマジ・ダメオと申します」
そう名乗りながら、人目につきやすい場所に移動する。
ダメオ「あ、すみませんなんかお話遮っちゃって」
ダメオ「続けてください!その光景カメラに撮るだけなんで!」
ダメオはカメラを構え、避難所で魔女に罵詈雑言を言っていた一般人達を撮る。
一般人「おい!勝手に写すなよ!」
一般人「そうよ!竜騎士!こいつ捕まえてよ!」
突然カメラを向けられた一般人は一斉に声を上げた。
そう言われても、竜騎士は何もしない。
竜騎士「悪いがそれはできないな?」
竜騎士「別に、彼は特段怪しい行動や迷惑行為を行ってるわけじゃない」
竜騎士「ただ写真を撮っているだけ、そうだろ?」
ダメオ「ま、それやってないと記者やってけないんで!」
ダメオは気にする様子もなく、一般人へカメラを向け続ける。
一般人A「おい!お前いい加減にしろ!」
一人の男がダメオの胸ぐらを掴む。
ダメオ「ちょちょっ、何するんだよ」
一般人A「テメェ…誰が撮っていいつった?」
ダメオ「今のこの出来事を記事にしなくてどうするんですか?」
一般人A「だったらテメェ一人外に出て魔女共を撮ってこいよ!」
ダメオ「死んだらどうするんですか」
一般人A「はぁぁ?!」
男は遂に堪忍袋の緒が切れたのか、ダメオに殴りかかろうとした。
しかし…
ガシッ
その拳を、竜騎士が掴んだ。
まるで壁に手を押し付けているかのような腕力で、振りかざした拳は留められた。
竜騎士「それ以上やるなら、処罰対象になる」
一般人A「はぁ?!なんで俺なんだよ!こいつを処罰しろ!」
一般人B「そうよ!そこの新聞記者を処罰しなさいよ!」
一般人C「あんた竜騎士だからって調子に乗ってるんじゃねぇぞ!」
人々の罵詈雑言は竜騎士へ向いた。
が、その罵詈雑言は竜騎士の一言によって全て消え去った。
竜騎士「貴様ら少しは口を閉じろ!!」
竜騎士の怒号は、桜ノ旅館全体に響く。
その怒号は一般人達の背筋を凍らせる圧を放った。
竜騎士「…先に言うが」
竜騎士「俺の名前はカイン・ケツァルコアトル」
カイン「ハルマーシュ王国第一竜騎士団長だ」
カインは掴んでいた拳を振り払うように離し、男を人混みへ投げるように押した。
カイン「これから言う事に文句がある奴は、今回の事件を生き残り直接国王へ物申せ!」
カイン「よく考えろ!!、お前達は何ができる!」
カイン「ただこの旅館に私がいるからと集まり、身を隠し!」
カイン「旅館の手伝いや、避難誘導、他に何かできることすらせず!」
カイン「挙句魔女への罵詈雑言や自身の命を守る竜騎士に罵詈雑言を浴びせんとする!!」
カイン「貴様らが今どれほど愚か者か!、一度でも考えたか?!」
カイン「何もせず文句だけ垂れ流す愚民を!」
カイン「私は国王の御前で、お守りしますと誓った覚えはないがな!!」
カイン「少なくとも!」
カイン「今、世界へこの現実を伝えようとする記者の方が、よっぽどの国民と見える!」
カイン「これ以上私の前で己の愚かさを見せるなら、この旅館から放り投げる!!」
カイン「俺は国王の御前で……"愛すべき国民"を守ると誓ったのだからな!!」
カインのその言葉で、周囲は完璧な静寂となった。
??「いやぁ〜まさにその通り!!ヨッ!さすが竜騎士!」
その沈黙の中で、長髪の女がそう大きく声を上げた。
??「本っ当人間って愚かで醜い…実にその通り!」
圧倒的な存在感を放つ陽気な拍手と共に、その女は立ち上がった。
??「だから俺はさぁ…」
??「人間は争いにこそ意味を見出すって言ってるんだよぉ…?」
その女の目は、まるでカインを挑発するかのような眼差し。
だがどこかその奥を見透かしているような違和感も持ち合わせていた。
カイン「…貴様、何者だ」
??「俺ぇ?w俺はねぇ!w」
愉快に、楽しげに話す。
??「み~んな大好き!」
??「嵐曹のニゴルヘスタさんだよぉ〜!」
ニゴルヘスタ「ハハハハッ!!」
その名前を聞いた人々は一斉に混乱に陥った。
ある者は出口へ逃げ始め。
ある者は泣き叫び。
ある者はその絶望に気絶した。
ニゴルヘスタ「あ〜、なんで逃げるのさぁ〜?、それじゃあ…」
ニゴルヘスタ「楽しくないじゃん?wファアハハハハハッ!」
ニゴルヘスタは足元に落ちていた小さな石を拾い上げ。
それを親指と人差し指で軽く固定し、逃げようとする人間へ向けた。
カイン「っ、させるか!」
ニゴルヘスタ「……させるんだよ」
先ほどまでの軽薄な顔は、跡形もなく消えていた。
そこにあったのは、まるでゴミムシを見るかのような冷めきった顔。
瞳に宿るのは、命を奪う者の躊躇ではない。
ただただ、不愉快な虫を見つめるような嫌悪感だけだった。
ニゴルヘスタ「技:超嵐空砲」
―――
――――
―――――
ファシオン「まぁ、別に殺してもいいよ」
ファシオン「私は人間共と違って殺す者の覚悟を持ってる」
ファシオン「ほら、さっさと殺したらいい」
その時、桜ノ旅館方面で爆発が起き、その音がイズルト達の耳に流れる。
イズルト「っ?!」
エドガー「何故桜ノ旅館の方向に?!」
ダーリン「おいちょっと待てウィンターズさん居るんだぞ?!」
エドガー、イズルト、ダーリン、キスティス、ゲヘナの5人は一斉に桜ノ旅館方面を向いた。
そして…
シュバァァァンッ!!
桜ノ旅館方面から、圧縮した空気を解き放つような衝撃音が聞こえた。
イズルト「ニゴルヘスタ……!」
キスティス「何故ニゴルヘスタが?!」
ダーリン「おいおい…あの威力のグングニルが直撃して、まだ動けんのか?!」
5人の驚愕の中、ファシオンはただただ淡々と話した。
ファシオン「まるであいつの事…よく知ってるみたいな言い方だね?」
ファシオン「…まぁ、残念だけど今回は私達の勝ち」
ファシオン「貴方達みたいな…化け物じみた強さの連中を、運よく足止めできたのは嬉しい誤算だった」
ファシオン「本当はそこのSランクだけのつもりだったしね…」
そう話している間も、次第にパレードリーダーは再生成されていく。
エドガー「…時間がありません」
少しだけ、エドガーの握る直刀は震えていた。
エドガー「残念ですが、次の人生では…どうかお幸せになってください」
その声は悲しく、祈るように響いた。
スッ
ただ、軽く引くだけだった。
ファシオン「っ…がぁっ…」
キスティスはファシオンから手を離した。
バタッ…
ファシオンは倒れ、首からの流血を止めようと必死に首を抑える。
ファシオン「ぁ…っあ…く…」
次第にその動きは鈍くなる。
(いたい…)
(くび…)
(かみ…さ…ま……)
辺りにはファシオンの血の池が広がり、エドガーとキスティスの靴を濡らした。
ダーリン「…とにかく、急ぐぞ」
ゲヘナ「そうだね、急ごう」
その言葉を合図にし、5人は全員走り出した。
??「……そうか」
この言葉に反応し、足を止めたのは二人だけだった。
イズルト「…っ」
エドガー「っ?!」
そして3人は少し遅れて反応し、足を止めた。
ダーリン「おいまだあんのかっ?!」
エドガー「いえ!、貴方達は先に行ってください!」
ゲヘナ「…そうだね、ここは彼らに任せよう」
キスティス「…分かりました。あとはお願いします!」
ダダァンッ!
地に響く踏み込みと同時に、3人の姿は既に遥か遠くに行っていた。
イズルト「いつも、いい判断なのは変わらないなシェンさん」
エドガー「お褒めの言葉ありがたいですが…」
エドガー「…最厄の魔女がご登場ですよ」
綺麗な淡い紫色の長髪をなびかせながら、モルガンは力なく横たわったファシオンを抱きかかえる。
モルガン「…ファシオン、よく頑張ったな」
モルガンはファシオンの首を細い指先でなぞる。
ゆっくりと、割れ物に触れるように。
イズルト「っ…面倒だな…」
エドガー「…久々に、その芸当ができる存在を見ましたよ…」
モルガンの指先がファシオンの首筋を静かになぞる。
その度に、深く裂けた傷が、ゆっくりと存在しなかったかのように閉じていく。
【キャラクター】
「イズルト・ウィンターズ」
元々は戦士として大斧を使っていたが、死んだ仲間…(カルディナやフェニシア)などの武器を全て欠片にし、それらを一つの大剣にした。
ちなみに大剣の名前は「グラム」で、大剣を作ってくれた鍛冶屋は「ジークフリート」。
基本的にリーダー的立ち位置が多い。
「カイン・ケツァルコアトル」
ハルマーシュ王国国王直属の側近であり最高位騎士である竜騎士。
実は魔族だが、竜騎士就任時までそれを国王に隠していた。だが竜騎士就任時にしなければならない、竜と契約を結ぶ儀式の際に魔族であることが国王にバレた。
ただ国王はそれでも、今まで献身的に騎士として働いてきたカインを差別なく受け入れ、それ以降カインは国王へ絶対的忠誠を誓い、歴代国王に尽くしてきた。
始道歴409年時点で100年以上生きているので、表ではカインの名を襲名した別の者として側近をしている。
「ゲヘナ・オルレッチ」
ハルマーシュ王国直属のSランク冒険者であり鍛冶屋、街の人々からの信頼は厚く、人望がとてもある。
人付き合いも良く、街の人気者、ただ見た目が20代から一切変わっておらず、魔族と勘違いされ一時期は面倒なことが起きたが、国王が自らゲヘナは「特殊な奇病」と宣言し、老けないことは誰も気にしなくなった。
「アフランタ・エドガー(別世界線のシェン・リョグン)」
仙人と呼ばれ、500年間不老の身体を使い武術、拳術を極め、自身のエーテルを身体に纏い鎧として活用する技術の「一心」や「二心」を開発し他にも様々な応用技を開発した。
「ダーリン・アスモデウス(別世界線のカルディナ)」
元々黒魔術師であったが、仲間が居ない状況が続き、一人で十分な強さになることを目指して鍛えに鍛え、遺品である戦士の斧と布都御魂を完璧に扱えるようにした。
あと本来存在しないはずの黒魔術などを使えば色々とヤバいので安易に使えなかった事もある。
「キスティス・プセドニム(別世界線のフェニシア)」
元々白魔術師であったが、仲間をリフレクが出せなかった事で死なせてしまいトラウマによって白魔術が苦手に、それから炎を無効化する能力で残ったゴネルバの2本の短剣を持ち、何度も何度も皆を助ける為に行動していた。
「マジ・ダメオ」
マズダ新聞者の記者で、かなりの「変人」、「狂人」、「変態」と言われている。
幼馴染である桜ノ旅館女将の熱心なストーカー兼盗撮魔で、何度フラれても告白し続ける鋼メンタル。
元々はマズダ新聞社の栄誉記者(一番すごい記者)だったが、魔女や魔族の取材の際、理不尽な差別への批判をした記事を書いたことでただの記者へと降格になった。
「ファシオン」
別名:パレードの魔女
世界樹:完全な世界樹-パレード
オデバル合衆国スペンサー州のシュメール村で産まれるが、10歳の頃偶然にも世界樹を発動してしまい村一つをパレードにしてしまった。
その中には家族も含まれており、一時期は自身と自身の能力を憎み、恨んだ時期があった。
ただ隣の村の人間に捕まり、顔が良かった為に陵辱、拷問、最終的に数々の暴行を加えられ山へ捨てられた。
だがそこへ偶然モルガンが通り、ファシオンを助けたことで、何とか生き延びられた。
それ以降人間を恨むようになり、モルガンに育てられ生きてきた。
【用語解説】
・野蛮流一斧術
ダーリンがオデバル合衆国北部にあるステルミナトーレ斧術と東洋大陸の剣術を合わせて作った独自の戦術。
本来は直刀の布都御魂がある為、野蛮流二刀斧術となり技も変わる。
【裏話】
イズルトの技:ネフェルタリアスは、仲間であるネフェルタリアという人物の大剣を使った技だからネフェルタリアスって名前なんすよね。
あとモルガンが現れて、三人が桜ノ旅館に急ぐ時、ダダァンッて「ダ」が二つあるじゃないですか?、これ実はダーリンとキスティスはほぼ同時でダが一つなんですけど、ゲヘナはSランク冒険者なので二人より遅いっていうめっちゃ細かい調整なんですよ。
【最後に一言】
完全な世界樹はつおい!




