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序章. よもすがら
深い闇に包まれた冬天のベールの奥は、
目を凝らしても見ることができない。
散りばめられた星々はその身を滅ぼすまで煌々と輝き、
潜んだ朔月は天に一層闇を落とし込んでいる。
星明かりだけの静かな銀世界。
あたり一面の積雪に寝転がった ** は穏やかに息を吐いた。
白い息は闇に吸い込まれるように昇っていき、降り注ぐ白銀の星芒にかき消された。
足先はひんやりと冷たくなり、感覚がない。鼻から吸い込む冷気が肺をめぐり、身体中の血液に染み込んでいく。
虫の声もしない世界の隅で誰かに呼ばれたのを、
その繊細な耳は聞き逃さなかった。
___……
_______…**……
視界の端には銀世界から排されたように佇む小屋。
身を起こし、身体中にまとわりついた雪のくずをぱたぱたと払った。
ふくらはぎに熱い血が巡りだす。
根雪を一歩づつ踏みならし、歩き出した。
傷ひとつない雪景色にできた窪み。
小さな足跡が長い道を綴る頃には煙突から煙が昇り、
銀世界には似つかわしくない暖かな匂いが漂っていた。




